この記事で扱う依頼シートは、法令上の様式ではありません。生産者、製造者、荷主、物流会社、通関の担当者などへ確認する事項を、案件単位で整理する実務上の整理例です。
依頼シートを案件ごとに作る理由
一般情報と貨物の回答を分ける
輸出先国の制度を調べる時は、国名と品目だけで判断しません。農林水産省の案内では、畜産物では輸出検疫証明書、畜産物や水産物では施設認定や衛生証明書が求められる場合があります。どの手続が今回の貨物に必要かは、仕向地、品目、加工の有無、取扱施設などをそろえて確認します。
依頼シートには、資料から確認した一般情報と、関係者から受けた案件固有の回答を別の欄に置きます。後者には、回答者、回答日、根拠になった資料名またはファイル名を残します。口頭で得た内容は、誰が説明したかと、確認の日時を記録します。
依頼文だけで確定扱いにしない
「対応可能です」という返信だけでは、商品、施設、証明書、書類のどこまで確認済みかを後から判断できません。依頼シートでは、各項目に回答欄だけでなく、確認先、回答期限、回答の出所、状態の欄を設けます。
状態は、未確認、資料受領、内容照合中、確認済みのように案件内で統一します。確定した内容と確認中の内容を同じ欄に書かないことで、次の依頼先が何を確認すべきかを判断しやすくなります。
回答してほしい形式も指定する
依頼先によって、持っている情報の形は異なります。商品仕様は仕様書や商品写真、施設の情報は施設名と工程の説明、物流の情報は搬入条件や梱包条件のように、質問ごとに受け取りたい資料の形式を記載します。
ファイルを受け取る場合は、版の日付、対象商品、対象ロットが分かる資料かを確認します。回答を依頼シートへ転記する時は、元資料を保存した場所またはファイル名も記録します。資料の内容が今回の貨物に当てはまるか不明な時は、確認済みにせず、追加で尋ねる項目にします。
| 欄 | 書く内容 | 使い方 |
|---|---|---|
| 案件の識別 | 仕向地、品目、温度帯、出荷予定日 | 別案件の回答と混ぜない |
| 確認事項 | 商品、施設、証明書、書類、物流の論点 | 質問を具体化する |
| 確認先と期限 | 担当者、回答期限、必要な資料の形式 | 依頼の順番を決める |
| 回答の記録 | 回答日、出所、添付資料、状態 | 照合と引継ぎに使う |

最初に貨物の前提をそろえる
商品情報は質問の起点にする
依頼シートの最初の欄には、商品名だけでなく、品目、形態、原材料または魚種、加工の有無、温度帯、数量、荷姿、希望する出荷時期を書きます。情報が未確定なら、空欄のままにせず「確認先」と「回答予定日」を付けます。
この欄は、海外の取引先へ条件を確認する時、製造者へ仕様を尋ねる時、物流会社へ輸送条件を伝える時の共通の前提になります。商品名の表記が資料ごとに異なる時は、独自に書き換えず、使用した資料と表記を記録して差異を確認します。
仕向地と用途の確認先を決める
仕向地は国・地域だけでなく、最終的にどこで販売・使用される予定か、海外の取引先が確認できる範囲で記録します。農林水産省は、国別情報は更新される可能性があるため、実際の輸出時には関係機関へ最新情報を確認するよう案内しています。
依頼する側は、情報の確認先を一つに決めつけません。制度・証明書は公式案内、商品仕様は製造者または加工者、梱包と搬入条件は物流会社、通関で必要な書類の準備状況は通関の担当者というように、回答の責任範囲を分けます。
- 商品名、形態、原材料または魚種、規格、温度帯
- 数量、荷姿、1梱包あたりの入数、総重量
- 仕向地、希望する出荷日、搬入可能日、希望する輸送方法
- ラベル、商品写真、仕様書など、確認に使う資料の有無
- 未確定項目の確認先、回答期限、次に連絡する担当者
施設と証明書を同じ表で追う
工程ごとに確認先を置く
水産物では、輸出先国・地域の規制により、最終加工施設や最終保管施設などの施設認定、衛生証明書の添付が必要となる場合があります。畜産物でも、相手国・地域の要求により、認定・登録された施設での処理と衛生証明書が求められる場合があります。
そのため、施設名を一つだけ集めるのではなく、原料の受入、加工、保管、包装、出荷の工程を並べ、今回の貨物に関係する施設を記録します。施設名、所在地、担当者、認定・登録に関する確認先、回答日を、貨物の条件と対応させます。
証明書は名称から先に確定しない
農林水産省の国別・品目別案内には、証明書や施設認定の申請情報が掲載されています。ただし、必要な証明書は仕向地と品目で異なります。依頼シートでは、証明書名を先に決めるのではなく、公式案内の確認日、対象の貨物、申請先、必要資料、原本の扱いを記録します。
例えば、自由販売証明書は、日本国内で製造または加工され、国内で流通可能な食品について、輸出先国の政府機関から提出を求められる場合に発行できると農林水産省は案内しています。案件に必要かどうかは、海外の取引先から得た要件と公式案内を照合して判断します。
| 確認区分 | 依頼する内容 | 残す記録 |
|---|---|---|
| 施設 | 貨物に関係する加工・保管・包装の施設名と工程 | 回答者、確認日、根拠資料 |
| 制度 | 仕向地・品目に関する最新の必要事項 | 公式ページ、確認日、確認先 |
| 証明書 | 必要性、申請先、必要資料、取得時期 | 対象貨物、回答日、原本の扱い |
| 未確定事項 | 確認できていない条件と次の質問 | 担当者、期限、状態 |
書類と物流の回答を照合する
書類に使う表記を一か所で確認する
ジェトロの資料では、インボイスは商品価格、内容、数量を示す明細書・請求書、パッキングリストはどの商品がどの箱にいくつ入るかを説明する梱包明細書として紹介されています。依頼シートには、書類を作る前に確認する表記を置きます。
税関の輸出手続に関する資料では、電子申告で添付する関係書類の区分として、仕入書を示すIV、パッキングリストを示すPL、船荷証券または航空運送状を示すBL、他法令に基づく許可・承認書などを示すOLが挙げられています。案件で作成・受領する資料は、通関の担当者と照合して管理します。
同じ項目を横断して見る
商品名、数量、重量、荷姿、荷送人、荷受人、仕向地、日付は、一つの書類だけで見ません。商品仕様、インボイス、パッキングリスト、証明書の申請資料、物流の手配情報で、どの表記を正本として使うかを決めます。
差異を見つけた場合は、誰が修正するかと、修正後にどの資料を再確認するかを依頼シートへ残します。回答メールだけを保管するのでなく、案件表の該当欄へ回答の出所を結び付けると、出荷予定の変更時にも確認範囲を追えます。
- 商品仕様と梱包情報を、製造者または荷主の回答で確認する
- 施設・証明書の対象を、公式案内と関係者の回答で照合する
- 書類に載せる商品名、数量、重量、日付を担当者間で確認する
- 搬入日、書類の受渡し、出荷日を物流会社とすり合わせる
- 未確定の項目は、確認先と期限を残して次の連絡につなげる
依頼シートを引継ぎに使える状態にする
回答の出所と確認日を残す
依頼シートは、回答を集めるためだけの表ではありません。後から見た担当者が、どの条件を、誰が、いつ、どの資料で確認したかをたどれるようにします。URL、ファイル名、メール件名、口頭確認の日時など、参照できる出所を残します。
農林水産省のカントリーレポートの案内も、関係法令や制度は調査時点以降に改正される可能性があるため、実際の輸出に際しては最新情報を確認するよう示しています。過去案件の回答は、そのまま転記せず、今回の貨物と確認日を明記して再確認します。
期限は出荷日から逆に置く
回答期限は「早めに」と書かず、書類の作成、証明書の申請、搬入、出荷の各予定と結び付けます。回答が得られない場合に次に誰へ確認するかも、依頼時点で決めておきます。
依頼シートの更新時は、変更した項目、変更理由、更新者、更新日を残します。最新版だけを共有し、古い版を参照用に残す場合は、現在の判断に使わないことを明記します。これにより、確定情報と確認中の情報を混同せずに、関係者間で案件を進められます。