宮城県気仙沼市で、カツオの水揚げが大きく回復しています。
2025年、気仙沼港では生鮮カツオの記録的な不漁に見舞われ、28年続いていた水揚げ量日本一の記録が途切れました。ところが2026年は状況が一変。シーズン序盤からまとまった水揚げが続き、6月の段階で前年シーズン全体の生鮮カツオ水揚げ量を上回りました。
そして秋を迎えた気仙沼では、脂がのった「戻りカツオ」の季節が到来しています。9月19日には「戻りかつお祭り」も開催され、港町ならではの秋の味覚に改めて注目が集まりました。
前年の記録的不漁から2026年の回復まで、気仙沼のカツオに何が起きているのかを見ていきます。
2025年は28年続いた「生鮮カツオ水揚げ日本一」が途切れる
気仙沼とカツオには深い関係があります。
気仙沼は2024年まで28年連続で生鮮カツオの水揚げ量日本一を記録してきました。毎年カツオの季節になると多くの漁船が入港し、水揚げされたカツオは市場だけでなく、加工、小売、飲食など地域のさまざまな産業にもつながっています。
ところが2025年は、例年とは大きく異なるシーズンになりました。
東日本放送によると、2025年の気仙沼港における生鮮カツオの水揚げ量は4,372トン。記録的な不漁となり、28年続いた日本一の記録が途切れました。
気仙沼市魚市場が公表している魚種別統計でも、カツオ全体の水揚げ量は2024年の33,872トンから2025年には4,686トンへ大幅に減少しています。
ここで注意したいのは「生鮮カツオ」と魚市場統計の魚種別「カツオ」では集計範囲が異なることです。そのため4,372トンと4,686トンという数字を単純に同じ統計として比較することはできません。
それでも、2025年にカツオの水揚げが極めて低い水準だったことは、複数の資料から確認できます。
2025年7月末時点では、気仙沼港のカツオ水揚げ量は1,416トンにとどまりました。例年はカツオの群れが三陸沖へ北上する夏場に気仙沼の水揚げが伸びていきますが、この年はなかなか上向きませんでした。
さらに秋になっても状況は厳しく、東日本放送は11月、三陸沖に群れが現れず水揚げする漁船が大幅に減ったと報じています。
2026年は5月28日にシーズンがスタート
前年の不漁を受けて迎えた2026年。気仙沼では、生鮮カツオ水揚げ日本一への返り咲きに期待が集まっていました。
今季の初水揚げは5月28日です。
高知県船籍の一本釣り船が入港し、千葉県銚子沖で漁獲したカツオ約31トンを水揚げしました。
前年の不漁があっただけに、この初水揚げは気仙沼にとってシーズンの行方を占う大きな一歩となりました。
その後、水揚げは急速に増えていきます。
6月16日には一本釣り船やまき網船など8隻が入港し、三陸沖で漁獲された生鮮カツオ386トンを1日で水揚げしました。
報道では、1日100トンを超えると豊漁とされる中での386トンだったと伝えられており、市場が活気づく様子が報じられました。
6月22日時点で前年シーズン全体を上回る
2026年の水揚げ回復を象徴する数字が出たのは6月22日です。
この日は一本釣り船10隻が気仙沼漁港へ入港し、約300トンのカツオを水揚げしました。
そして5月28日の初水揚げから6月22日までの生鮮カツオ水揚げ量は4,534トンに到達しました。
2025年シーズン全体の生鮮カツオ水揚げ量は4,372トンだったため、2026年は初水揚げから1カ月足らずで前年シーズン全体の数量を上回ったことになります。
前年の記録的不漁と比較すると、大きな変化です。
さらに6月26日、気仙沼観光推進機構は、同日朝に600トンを超える生鮮カツオが水揚げされ、速報値で気仙沼港が全国の生鮮カツオ水揚げ量トップになったと発表しました。
前年に途切れた「日本一」から、早くも返り咲きを果たした形です。
ただし、カツオ漁はその後も続きます。年間の最終的な水揚げ結果については、シーズン終了後の確定値を確認する必要があります。
初ガツオと戻りガツオは何が違う?
カツオは季節によって味わいが変わる魚として知られています。
春から夏にかけて、日本の太平洋側を北上する時期のカツオは一般に「初ガツオ」「上りガツオ」と呼ばれます。
気仙沼観光推進機構によると、この時期のカツオは身が引き締まり、比較的軽やかな味わいが特徴です。
その後、北上したカツオは三陸から北海道沖などで餌を食べ、秋になると南へ移動します。この時期のものが「戻りガツオ」です。
戻りガツオは脂を蓄えているため、初ガツオとは異なる濃厚でまろやかな味わいを楽しめるのが特徴とされています。
同じカツオでも、季節によって違ったおいしさを楽しめるというわけです。
9月はまさに、気仙沼で戻りガツオが注目される時期です。
9月19日には気仙沼で「戻りかつお祭り」
秋のカツオシーズンに合わせ、2026年9月19日には気仙沼「海の市」西側駐車場の特設会場で「戻りかつお祭り」が開催されました。
主催は南気仙沼水産加工事業協同組合です。
イベントでは、藁焼きにしたカツオのタタキ400食が無料で振る舞われる企画が用意されました。
さらに、磯草虎舞保存会による伝統芸能の披露なども行われました。磯草虎舞は、かつてカツオ漁の出船・入船の儀式に欠かせなかったと紹介されており、カツオが単なる水産物ではなく、地域文化とも深く結びついていることが分かります。
水揚げされた魚を食べるだけでなく、漁業とともに育まれてきた文化まで伝えるイベントになっています。
首都圏でも気仙沼の旬のカツオを味わう取り組み
2026年は、気仙沼だけでなく首都圏でも旬のカツオを楽しんでもらう取り組みが進められています。
9月12日から10月11日まで「気仙沼旬かつお祭り」が展開され、鮮魚専門店や飲食店など40店舗以上で気仙沼のカツオを扱う企画が実施されています。
さらに、一部の日程ではJR東日本の列車輸送サービス「はこビュン」を利用し、気仙沼港で水揚げされたカツオを首都圏へ輸送する取り組みも行われています。
水揚げ地である気仙沼から消費地までの時間を縮め、鮮度の高い状態で届けようという試みです。
カツオの水揚げ回復は、漁港だけの話題ではありません。加工、販売、飲食、物流など、魚が消費者の食卓へ届くまでの幅広い分野につながっています。
2025年と2026年の数字は「海は毎年同じではない」ことを示す
気仙沼の2025年と2026年を並べると、カツオ漁が年によって大きく変化することがよく分かります。
2025年は記録的な不漁となり、28年連続だった生鮮カツオ水揚げ日本一の記録がストップしました。
ところが翌2026年は、5月28日の初水揚げから1カ月足らずで前年シーズン全体の生鮮カツオ水揚げ量を超え、6月26日には速報値で全国トップに返り咲きました。
ただし、「なぜ2026年にここまで回復したのか」という原因については慎重に見る必要があります。
漁獲量は魚群の分布、海洋環境、漁船の操業や水揚げ港の選択など複数の要素と関係します。確認できた情報だけから、2026年の豊漁を特定の一つの原因によるものと断定することはできません。
また、6月の好調な水揚げが、そのまま年間を通した最終結果を保証するわけでもありません。
だからこそ、シーズンを通して水揚げがどのように推移するかを継続して見ることが重要です。
秋の戻りガツオと今後の水揚げに注目
2025年の記録的不漁から一転し、2026年の気仙沼ではカツオの水揚げが大きく回復しました。
6月の段階で前年シーズン全体の生鮮カツオ水揚げ量を超え、全国トップにも返り咲いたことは、気仙沼にとって大きなニュースです。
そして9月は、カツオの味わいという点でも注目したい季節です。
初夏のさっぱりとした初ガツオから、脂を蓄えた秋の戻りガツオへ。同じ魚でも季節によって味わいが変化することは、日本の魚食文化のおもしろさの一つでしょう。
「戻りかつお祭り」の開催や首都圏での「気仙沼旬かつお祭り」など、旬の魚を消費者へ伝える取り組みも広がっています。
2026年のカツオシーズンが最終的にどのような水揚げ結果になるのか。そして秋の戻りガツオがどのように推移するのか。引き続き公表される水揚げデータに注目です。