和牛を含む日本産牛肉の新規市場を検討する時は、「その国へ輸出できるか」だけでなく、「自社の貨物が条件に合うか」を案件ごとに確認します。
クウェート向け日本産牛肉は、2025年9月25日に農林水産省が輸出条件と輸出検疫証明書様式の合意を公表しました。同日付で、手続を定めた「クウェート向け輸出牛肉の取扱要綱」も作成されています。
この記事では、公表文と取扱要綱をもとに、輸出者が確認する条件と書類の流れを整理します。個別の商品や施設が輸出できるかどうかは、この記事では判断しません。
公表された解禁内容と主な条件
何が合意されたのか
農林水産省と厚生労働省は、クウェート当局と日本産牛肉の輸出条件および輸出検疫証明書様式について合意しました。
公表では、厚生労働省が要件を確認した施設から順次輸出が可能になると説明されています。枠組みが整ったことと、すべての施設・商品がすぐに対象になることは別の話です。
取扱要綱が定める牛・牛肉の要件
取扱要綱の「クウェート向け輸出牛肉の要件」から、案件で最初に照合したい項目を抜き出します。
| 区分 | 要綱に定められた内容 | 案件で確認すること |
|---|---|---|
| 牛の由来 | 日本で生まれ、飼育された牛。BSEに関する飼料規制の施行日(2001年10月15日)以降に生まれた牛 | 仕入先から、個体識別番号と出生情報を取り寄せられるか |
| と畜・処理 | GCC加盟国向け輸出牛肉取扱施設として認定されたと畜場等で、とさつ、解体、分割、細切が一貫して処理されたこと | 処理工程が1つの認定施設で完結するか |
| ハラール認証 | と畜場等が、GACとGCC加盟国1か国、またはGCC加盟国2か国以上の政府当局が認定した発行機関から認証を受けていること | 発行機関の認定状況と、証明書の対象施設 |
| 家畜衛生 | 輸出前3か月間に口蹄疫またはリフトバレー熱の発生がない都道府県で飼養された牛であること | 出荷元農場の所在地と、直近の発生状況 |
| 残留物質等 | GSO規則の残留物質等に関する基準に適合していること | 基準への適合を示す資料の有無 |
日本については、BSEでWOAHの無視できるリスク国、口蹄疫でワクチン非接種清浄国に認定されていることも条件として定められています。

取扱要綱が定める書類と手続の順番
クウェート向けでは、都道府県の窓口、食肉衛生検査所等、家畜保健衛生所、動物検疫所と、書類ごとに出す先が分かれています。順番を取り違えると、次の申請に必要な書類が揃いません。
1. 施設側の書類提出(別紙様式1)
クウェート向け牛肉を取り扱うと畜場等は、施設の要件に適合することを証明する書類(ハラール認証を受けたことを証する書類を含みます)を添え、別紙様式1で都道府県等を通じて厚生労働省へ提出します。
提出内容に変更があった時も、同様に提出します。厚生労働省は、施設番号、名称、所在地をクウェート当局へ通知します。
2. 確認書の依頼(別紙様式2)
輸出者は、出荷元農場を管轄する家畜保健衛生所長へ、確認書の発行を依頼します。確認書は、牛が反芻動物由来の肉骨粉等を給餌されていないこと、健康であること、BSEの典型例が牛群で確認されていないことを確認する書類です。
家畜保健衛生所長は、立入検査等で内容を確認し、要件を満たす場合に確認書を発行します。確認書の写しは、発行した家畜保健衛生所で最低1年間保管されます。
3. 食肉衛生証明書の申請と発行(別紙様式3-1・3-2)
と畜場等でとさつする前に、と畜場法施行令に基づく検査申請書を、管轄の食肉衛生検査所等へ提出します。検査に合格し、要件を満たす牛肉について、別紙様式3-1の発行申請書を出すと、食肉衛生証明書(別紙様式3-2)が発行されます。
申請書の基本情報と明細は、英語で記載します。製品名とHSコード、個体識別番号が欄に収まらない場合は「See Annex」と記載し、別紙様式3-3・3-4を添付できます。
搬出先で保管する間に、荷送人、荷受人、仕向地が未定の場合は、該当欄に「×××」と記載して仮発行を受けます。記載事項を報告した後に、同日付で改めて発行されます。
4. 動物検疫所への輸出検査申請と証明書の交付
動物検疫所へ輸出検査申請書を出す際は、確認書の原本と、食肉衛生証明書の写しを添えます。食肉衛生証明書の原本は、交付を受けたら動物検疫所へ提出します。
輸出証明書発給システムで食肉衛生証明書を申請している場合は、原本が食肉衛生検査所等から動物検疫所へ直接提出されるため、申請者による提出は不要です。
確認できた牛肉には、動物検疫所から輸出検疫証明書(別紙様式4)が交付されます。輸出する時は、この原本を牛肉に添付します。
5. ロットを組み替えた場合の返納
食肉衛生証明書や輸出検疫証明書の交付後に、対応する牛肉のロットを再構成した場合は、証明書を速やかに返納します。輸出検疫証明書は、動物検疫所へ返納します。
このため、積み付けや梱包の予定が変わる可能性がある案件では、ロットを確定する時期を予定表に入れておく必要があります。
書類と出荷予定を表で照合する
書類が1枚ずつ確認済みでも、書類同士の記載がずれていれば手戻りになります。食肉衛生証明書には、製品名、HSコード、ロット番号、包装数、総重量、個体識別番号、保管・輸送条件、消費期限、仕向地、荷送人・荷受人の情報が記載されます。これらを出荷予定と同じ表で照合します。
| 書類 | 誰が発行し、どこへ出すか | 照合する内容 |
|---|---|---|
| 確認書(別紙様式2) | 家畜保健衛生所長が発行。輸出検査の申請で原本を提出 | 由来牛の個体識別番号、飼養施設、申請者の名称・住所 |
| 食肉衛生証明書(別紙様式3-2) | 食肉衛生検査所等が発行。写しを輸出検査の申請に添付 | 製品名、HSコード、ロット番号、包装数、総重量、個体識別番号、消費期限 |
| ハラールと畜証明書 | 認定された発行機関が発行。貨物に添付 | 対象施設、対象工程、発行機関の認定状況 |
| 輸出検疫証明書(別紙様式4) | 動物検疫所が交付。原本を牛肉に添付 | 食肉衛生証明書の内容、荷送人・荷受人、仕向地 |
| インボイス・パッキングリスト | 輸出者が作成 | 上記の書類と、品名、数量、重量、ロットが一致するか |
食肉衛生証明書が証明する内容
別紙様式3-2の食肉衛生証明書では、次の7点が証明されます。取引先から求められた書類の内容と照らし合わせる時の基準になります。
- 食肉が安全で、人の食用に適すること
- 牛が認定と畜場等で、とさつ・解体から分割まで一貫して処理されたこと
- 牛が、公的獣医師による生体検査とと畜後検査を受けていること
- 施設が所管当局の監視を受け、GMP、SSOP、HACCPまたは同等の体制で管理されていること
- GCC規則で定められた残留基準(MRL)を超える有害物質を含まないこと
- 疾病管理のために殺処分された牛に由来しないこと
- 2001年10月15日以降に日本で生まれ、飼育された牛に由来すること
証明の内容は、確認書、ハラールと畜証明書、認定施設の情報と食い違わないようにします。どれか1つでも記載が異なれば、どの書類が正しいかを確認してから、次の申請へ進みます。
予定は食肉衛生証明書から逆算する
農林水産省のページでは、食肉衛生証明書の発行後に、動物検疫所の輸出検査が必要とされています。出荷日から逆算し、証明書の発行、原本の受け渡し、輸出検査の申請、搬入締切の順に予定を置きます。
変更が出た時は、商品仕様、施設、出荷予定日のうち何が変わったかを先に整理します。変わった項目に関係する書類だけを見直せば、確認漏れを減らせます。
開封で破れる検査済証にも注意する
取扱要綱には、梱包後の不正を防ぐため、検査済証(別紙様式5)を貼る定めがあります。容器包装と、カートン等の梱包の両方に、開梱時に破れる方法で貼付します。
梱包の仕様を変える場合は、検査済証を貼る工程が変わらないか、食肉衛生検査所等へ事前に確認します。
公的ページと取引先で確認すること
最新の様式と施設リストを確認する
農林水産省の「証明書や施設認定の申請」ページの中東欄には、取扱要綱、別紙様式、認定施設リストが掲載されています。2026年10月1日の確認時点で、認定施設リストの最新版は2026年7月14日の更新でした。
リストは更新されます。案件メモには、確認した版の更新日を残します。動物検疫所のページには、輸出検疫証明書様式、確認書、畜産物の輸出相談窓口も案内されています。
取引先への確認を具体的にする
取引先へ条件を確認する時は、商品仕様、施設情報、予定出荷日を先に示します。質問が具体的であれば、一般的な回答と、今回の貨物に当てはまる回答を分けて受け取れます。
条件に該当するか判断できない項目は、経験則で処理せず、取扱要綱と相談窓口で確認します。確認中の項目がある間は、出荷可能と判断しません。