海外から引合いを受けて、物流会社や通関業者へ見積りを頼む時、商品名と数量だけを伝えて、あとから追加の質問が続くことがあります。
貨物の条件を先にそろえておくほど、見積りを出す側が確認すべき点が明確になり、やり取りの回数を減らせます。
この記事では、水産物・和牛の輸出で、見積りを依頼する前に整理しておきたい貨物情報と、書類の前提を、ジェトロ・税関・農林水産省の資料をもとに整理します。
見積り依頼の前に貨物情報をそろえる理由
見積りの情報は、通関と輸送の段階で使われる
ジェトロは、農林水産物・食品の輸出の流れを6段階で整理しています。このうち、見積りに関わる5つの段階を、貨物情報が使われる場面とあわせて表にします。
| 段階 | ジェトロが案内する内容 | 貨物情報が使われる場面 |
|---|---|---|
| 1 調査 | 制度・手続き、関税、各国の規制、マーケティング情報 | 品目と仕向け地を絞る |
| 2 商談・契約 | 取引先探し、商談、契約交渉 | 取引先に商品と数量の希望を確認する |
| 3 準備 | 貿易保険、決済、原産地証明書、動植物検疫、輸出の手引き | 証明書や検疫の要否を決める |
| 4 搬入・通関 | 輸出規制、通関手続き、貨物の輸出・物流、関税 | 貨物情報を通関の書類に使う |
| 5 輸送 | 物流のQ&A、具体的な輸送方法 | 梱包と温度条件を輸送の手段に合わせる |
見積りの依頼で貨物情報があいまいだと、書類の記載や手配の内容が、後から変わる可能性があります。変更が出るたびに、見積りの取り直しや書類の修正が必要になります。
依頼前に整理する4つのまとまり
見積りの依頼前には、次の4つのまとまりで、貨物情報を整理します。
- 商品の仕様(何を、どの状態で送るか)
- 数量・重量・寸法(どれだけの貨物か)
- 梱包・温度条件・輸送経路(どう運ぶか)
- 納期と書類の前提(いつまでに、どの書類で送るか)
商品仕様は販売名より具体的に整理する
品目ごとの整理項目を表にまとめる
販売名だけでは、貨物の状態が分かりません。水産物と和牛では、整理する項目が異なります。
| 項目 | 水産物で整理する内容 | 和牛・牛肉で整理する内容 |
|---|---|---|
| 品名 | 魚種名、通称 | 部位名、等級 |
| 状態 | 活、生鮮、冷凍、加工品の別 | 冷蔵・冷凍の別、骨の有無 |
| 加工・包装 | 丸のまま、切り身、フィレなど | カットの形、真空包装の有無 |
| 産地・施設 | 産地、加工した施設 | 処理した施設 |
| 証明書 | 輸出先で求められる証明書の有無 | 食肉衛生証明書、動物検疫の要否 |

証明書や検査が必要かは、見積りの前に確認する
農林水産省は、加工食品を輸出する時に確認する手続きを、次の4つに分けて案内しています。証明書の取得には時間がかかるため、見積りの納期を決める前に、該当するかを確認します。
| 区分 | 農林水産省の案内 | 見積り前に確認すること |
|---|---|---|
| 原発関連の規制 | 輸出先・地域が規制を実施しているか、必要な証明書などを確認する | 仕向け国の規制の有無 |
| 衛生関係 | 輸出要綱がある品目は、要綱に基づいて証明書を取得する。ほかの品目は、相手国側の事業者を通じて、輸出先の当局に確認する | 要綱の有無、証明書の発行にかかる期間 |
| 動物衛生関係 | 畜産物を使った製品は、輸出検疫証明書を求められた場合、動物検疫所の輸出検査を受ける | 検疫証明書の要否 |
| 植物検疫関係 | 植物を使った加工食品は、輸出先の要求により、植物防疫所の輸出検査などが必要な場合がある | 検査の要否 |
輸出要綱は、仕向け国と品目の組み合わせごとに定められています。仕向け国が決まっている場合は、その国向けの要綱や条件を先に確認し、見積りの依頼に、必要な証明書の名前を書き添えます。
数量・重量・寸法を同じ単位で確認する
見積りに使う数字を整理する
数量、重量、寸法は、見積りの金額や、使う容器や便の選び方に関わります。次の項目を、同じ単位でそろえて伝えます。
| 項目 | 伝える内容 | そろえる時の注意 |
|---|---|---|
| 個数 | ケースまたは箱の数 | 販売単位と、梱包の単位を分ける |
| 重量 | 1ケースの正味重量と、梱包後の重量 | kgで統一し、氷や梱包材を含むかを書く |
| 寸法 | 1ケースの縦・横・高さ | cmで統一する |
| 合計 | 全体の重量と容積 | ケース数から計算し、見積り依頼の値と合わせる |
包装明細書に書かれる情報と合わせる
ジェトロによると、包装明細書(パッキングリスト)は、仕入書を補う書類で、個数と、包装後の重量・容積などが記載されます。価格や決済に関する情報は、通常は記載されません。
見積りの時点で、個数、重量、寸法を整理しておけば、後で包装明細書を作る時に、同じ数字を使えます。見積りと書類で数字が変わらないよう、最初の整理を記録しておきます。
梱包と温度条件を輸送経路と結び付ける
梱包の仕様を伝える
梱包は、輸送中に商品の状態を守るための条件です。使う箱や包材、積み方が決まっていれば、見積りの依頼に書きます。決まっていない場合は、決まっていないことを伝えて、提案を求めます。
温度条件と輸送の手段を決める
冷凍・冷蔵の別と、保管・輸送の温度帯を明確にします。温度帯によって、使える輸送の手段や、積み替えの扱いが変わります。次の項目を、見積りの依頼に含めます。
- 輸送の手段の希望(航空か、海上か)
- 出荷する場所と、届ける先
- 温度帯(冷凍、冷蔵)と、温度の維持が必要な時間
- 途中の積み替えや、保管の有無
- 到着後の受け取りの方法(荷受人側の手配か)
納期と書類の前提を最後に共有する
希望する日付を伝える
希望する出荷日と、届けたい日を、分けて伝えます。証明書の取得や、輸出検査が必要な品目では、その準備の期間も、スケジュールに入れます。
通関の依頼で使う書類を確認する
ジェトロは、通関業者に輸出通関を依頼する時の書類として、次のものを案内しています。見積りの段階で、どの書類を誰が用意するかを決めておきます。
| 書類 | 資料に書かれている内容 | 見積り前に決めること |
|---|---|---|
| 仕入書(インボイス) | 品名、種類、数量、価格、代金の支払方法、荷送人と荷受人の住所・氏名を記載 | 品名と数量、価格の表記 |
| 包装明細書 | 個数、包装後の重量・容積を記載。価格は通常書かない | 梱包の単位 |
| 船積依頼書 | 通関業者が船荷証券や航空運送状を作るための情報を指定する書類 | 記載する内容の指定 |
| 委任状 | 通関業者と初めて取引する時に必要 | 依頼する通関業者 |
輸出申告の添付書類は通関業者に確認する
税関のカスタムスアンサーでは、輸出申告書の添付書類として、仕入書または仕入書に代わる書類が必要だと案内されています。場合によっては、包装明細書、他の法令の許可・承認証、関税の軽減などに関する書類が必要です。
一方、ジェトロは、通関業者が電子申告システムで申告し、審査の区分が「区分1:許可」と処理された場合は、紙の書類の税関への提出を省略できると案内しています。実際にどの書類を用意するかは、依頼する通関業者に確認します。
見積書を受け取ったら前提を照合する
見積書の前提を依頼内容と照合する
見積書が届いたら、金額だけでなく、その見積りが前提にしている貨物情報を確認します。依頼した内容と前提がずれていると、実際の貨物で金額が変わる可能性があります。
| 見積書の項目 | 照合すること | ずれていた場合 |
|---|---|---|
| 貨物の前提 | 品名、数量、重量、寸法が、依頼した内容と同じか | どの数字を前提にしたかを確認する |
| 輸送の区間と手段 | 出荷する場所と届ける先、航空か海上かが合っているか | 区間と手段を依頼内容に合わせる |
| 温度帯と梱包 | 冷凍・冷蔵の別と、梱包の仕様が合っているか | 条件が違えば、金額と手配が変わるかを聞く |
| 含まれる範囲 | 通関の手続きや、書類の作成が含まれているか | 含まれない作業を、別に手配する |
| 有効期限 | いつまでの見積りか | 期限までに依頼するか、再見積りを頼む |
ずれが見つかった時の連絡
見積書の前提が依頼内容と違っていた場合は、どの項目が違うかを、見積りを出した会社へ具体的に伝えます。「金額が高い」とだけ伝えるより、「重量は梱包後で伝えたが、正味で計算されている」のように、数字と項目を示すほうが、修正が早くなります。
複数の会社から見積りを取る場合は、同じ貨物情報と条件を、すべての会社へ同じ形で伝えます。前提が違う見積りを並べると、金額を比べても、判断の根拠になりません。
見積り依頼に書く順番を決める
依頼メールを書く順番
見積りの依頼は、情報の抜けが分かるよう、順番を決めて書きます。次の順で整理します。
- 品名と状態(水産物なら魚種と冷凍・冷蔵、和牛なら部位と冷凍・冷蔵)
- 数量、重量、寸法
- 梱包の仕様と、温度条件
- 出荷する場所、届ける先、輸送の手段
- 希望する出荷日と到着日
- 必要な証明書と、書類の準備の分担
確認できていない項目は、空欄にせず「確認中」と書き、回答の予定日を添えます。回答が出た時に、見積りの条件を更新します。