各国の規制情報

水産加工品を米国へ輸出する前に整理する原料・漁獲情報

水産加工品を米国へ輸出する時は、完成品の情報だけでなく、原料の由来や漁獲の情報を確認する場面があります。

特に、複数の原料や工程が関わる加工品では、完成品から原料へさかのぼれる記録がないと、取引先や当局からの照会に答えにくくなります。

この記事では、米国の海産ほ乳類保護法(MMPA)と水産物輸入監視制度(SIMP)などを手がかりに、原料・漁獲情報の整理の仕方を、農林水産省・ジェトロ・米国海洋大気庁(NOAA)の資料から整理します。個別の貨物が規制の対象になるかどうかは、この記事では判断しません。

米国向けで確認する制度を分けて整理する

MMPAに基づく水産物の規制

米国は、同等の海産ほ乳類の混獲削減措置を導入していない外国の漁業による水産物について、2026年1月から、米国への輸入を禁止するとしています。NOAAのページ(2026年7月更新)と、農林水産省のページから、要点を整理します。

項目資料に書かれている内容加工品の輸出者が確認すること
施行2026年1月1日から、同等性が認められなかった漁業の水産物は、米国への輸入が禁止される(NOAA)原料の漁獲が、対象の漁業かどうか
日本の漁業日本が提出したすべての漁業に、同等性が認定された。認定の有効期限は2029年12月31日(農林水産省)日本産の原料が、申請済みの漁業のものか
認容証明書2021年11月時点で申請済みの漁業の水産物は、認容証明書を添付せずに輸出できる(農林水産省)添付が必要になる場合の確認先
第三国産の原料米国が同等性を認定していない漁業の水産物の流通を分析し、中継国へ通知する予定(農林水産省)原料の漁業と、漁獲した国の記録
未申請の漁業2026年1月以降に、追加の申請が認められる予定(農林水産省)自社の原料の漁業が該当するか

水産加工品を米国へ輸出する前に整理する原料・漁獲情報

水産物輸入監視制度(SIMP)で求められる情報

ジェトロによると、米国の水産物輸入監視制度では、次の13の魚種が、優先魚種に指定されています。

  • アワビ、ナマコ類
  • 大西洋タラ、太平洋タラ
  • ワタリガニ、タラバガニ
  • シイラ、ハタ類、レッドスナッパー
  • サメ類、エビ類、メカジキ、マグロ類

原料にこれらの魚種を使う場合は、次の情報が必要になります。原料の魚種名から、優先魚種に当たるかを確認し、当たる場合は、仕入先から、漁獲の段階の情報を受け取れるかを確認します。

区分求められる情報加工品で整理する元の記録
漁獲した者漁獲船舶の船名と旗国、漁業権の証拠(許認可番号)、漁具の種類原料の仕入先からの漁獲情報
漁獲の情報水揚げ日、最初の水揚げ地、水揚げ時の形態、漁獲した水域(天然か養殖か)原料の受け入れ記録
製品の情報製品の数量と重量完成品のロットと、原料の使用量

FDAの規則と、魚種ごとの注意

農林水産省のQ&Aでは、米国向けの水産食品について、次の手続きを案内しています。

  • 加工業者は、米国連邦規則集の21CFR Part117とPart123を守る
  • 厚生労働省や登録認定機関による、米国の規則に適合した施設の認定の手続きがある
  • 食品を製造・加工する施設は、FDAに施設登録をする
  • 食品は、到着の前に、FDAへ事前通知をする

魚種ごとの注意も示されています。クロマグロ、メバチ、メカジキ、ミナミマグロ、メロは、漁獲証明書の添付が必要です。エビ製品は、ウミガメの保護に問題がないことの証明書が必要です。

貝類の加工品は状態で扱いが分かれる

同じQ&Aでは、生の二枚貝(カキ、ハマグリ、イガイ)とホタテ貝は、米国の国家貝類衛生プログラムの関係で、日本が策定中のため輸出できないとされています。一方、調理済みの貝類と、低酸性缶詰は、輸出できると案内されています。

このQ&Aのページには更新日の記載がありません。貝類を原料にする場合は、完成品の状態(生、調理済み、缶詰)を明確にしたうえで、最新の状況を、農林水産省の輸出支援課に確認します。

まず完成品の仕様を固定する

完成品の情報を整理する

最初に、輸出する完成品を明確にします。品名と魚種、加工の形態、内容量と包装、ロット、保管温度、出荷の予定を整理します。販売名だけでなく、原料や工程が分かる商品仕様を用意します。

取引先の条件は文書で残す

海外の取引先から示された条件は、口頭のままにせず、メールや仕様書で確認できる形にします。条件の出どころと確認した日を残すと、変更があった時に見直しやすくなります。

完成品のロットと、出荷書類の表記を先にそろえておくと、原料の情報を集める時に、どの貨物について確認しているかを、関係者で共有できます。

原料ロットと加工工程をたどれるようにする

原料ごとに記録する項目

加工品では、完成品に使った原料の魚種、ロット、受け入れた日、加工した日、保管場所を整理します。原料を他社から調達している場合は、仕入先が持っている情報の範囲も確認します。

  • 原料の魚種名と、原料の形態(丸のまま、切り身など)
  • 原料のロット番号と、受け入れた日
  • 仕入先と、仕入先から受け取った漁獲の情報
  • 加工した日と、工程(解凍、切り身、加熱、包装など)
  • 使った量と、完成品のロット番号との対応

複数のロットが混ざる場合

複数の原料ロットを混ぜて完成品を作る場合は、どの完成品に、どの原料が使われたかを、記録で確認できるようにします。工程が複数ある場合は、受け入れ、加工、包装、保管、出荷の順に並べ、ロットが分かれたり混ざったりする場所を示します。

仕入先に確認を依頼する時の伝え方

仕入先へ漁獲の情報を依頼する時は、完成品の名前、ロット、仕向け地(米国)、出荷の予定を、先に示します。何のために、どの情報が必要かが分かれば、必要な回答を集めるまでの時間を短くできます。

依頼は、回答の期限と、回答してほしい形式(メール、書面など)を決めて送り、受け取った回答は、日付とあわせて保存します。

情報が足りない時の扱い

仕入先から必要な情報が得られない場合は、推測で補いません。確認中の事項と、追加で必要な資料を分けて管理し、回答の期限を決めます。

漁獲由来の確認は制度と貨物を分けて見る

制度の情報と貨物の情報を分ける

制度に関する公式の情報と、今回の貨物で確認できた情報は、同じ表に混ぜません。記録を分けておくと、後から照会を受けた時に、何が制度の説明で、何が貨物の事実かを示せます。

区分記録する内容例
制度の情報資料の名称、公表日または更新日、対象の範囲NOAAのページ(2026年7月更新)、農林水産省のMMPAのページ
貨物の情報確認した日、回答した人、対象のロット仕入先からの漁獲情報と、回答を受けた日付

第三国の原料を使う場合

第三国で漁獲された原料を使う加工品では、原料の漁業や漁獲した国の確認が、追加で必要になる可能性があります。農林水産省のページでは、米国が同等性を認定していない漁業の水産物の流通を分析し、中継国へ通知する予定とされています。完成品だけを見ず、原料の調達の経路を確認します。

過去の経験だけで判断しない

米国向けの条件は更新されます。過去の出荷の経験だけで今回の条件を判断せず、出荷の前に、公式の案内と、海外の取引先の最新の条件を照合します。

根拠書類と更新履歴を保存する

保存する書類

確認した情報は、原料のロット、漁獲の由来、商品仕様、取引先の条件、確認した日、根拠の資料を結び付けて保存します。後から照会を受けた時に、どの貨物の確認かをたどれるようにするためです。

  • 原料の受け入れ記録と、仕入先からの漁獲情報
  • 加工の工程の記録と、完成品のロットとの対応表
  • 参照した公式資料の名称と、公表日・更新日
  • 取引先とのやり取りと、確認した日

確認状況を3つに分ける

社内の確認表では、確認済み、確認中、対象外を分けます。確認中の項目は、出荷の可否の根拠にせず、回答の期限と確認先を明確にします。出荷書類の品名、数量、ロット、施設の情報に変更があれば、原料情報の記録との対応も見直します。

判断できない時の確認先

農林水産省のMMPAのページには、問い合わせ先として、水産庁漁政部加工流通課が案内されています。米国向けの水産食品の手続き全般は、農林水産省輸出・国際局の輸出支援課が、Q&Aの問い合わせ先です。

相談する時は、魚種、原料の漁業と国、加工した場所、完成品のロットを整理して伝えます。確認できていない事項は、問題がないと判断せず、確認中として記録します。

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