水産・和牛 仕入れ代行

ノルウェー産サバ漁獲枠が52%削減の2026年。日本産サバ事業者が今知るべき輸出市場の現実

「ノルウェー産の冷凍サバが手に入らなくなってきています。価格はここ1年で大きく上がり、仕入れを絞らざるを得ない状況です。このままだと製品ラインを維持できない」

千葉県でサバの加工・販売を手がける事業者から聞いたのは、今年に入ってからのことです。水産業に携わる方であれば、同じような状況を実感しているかもしれません。2026年、サバをめぐるサプライチェーン(原材料の調達から販売までの一連の流れ)に、大きな変化が起きています。この記事では、ノルウェー産サバの供給が激減している背景と、日本産サバの輸出市場として注目されるアフリカ・アジアの動向を解説します。

ノルウェー産サバ漁獲枠が2026年に52%削減、何が起きているのか

2025年12月16日、ノルウェー・英国・フェロー諸島・アイスランドの4カ国による国際会議が開かれ、2026年の「北東大西洋サバ」の漁獲割当量が合計99,010トンに設定されました。前年と比べて52%の大幅削減です。

  • ノルウェー政府の発表によると、2025年の日本向けサバ輸出量は前年の約半分・78,989トンにとどまる見通し
  • 冷凍サバ(400g〜600g)の業者間取引価格は1kg当たり950〜1,000円まで上昇(直近比較)
  • サバの小売価格:2025年3月の154円/100gから2026年3月には169円/100gへ、1年で約10%上昇
  • 日本国内でもサバ類の漁獲量は2024年に25万6,000トン(前年比5.0%減)と減少が続いている

ノルウェー産サバは日本のサバ加工業にとって長年の重要な原材料でした。それが半減するということは、仕入れ価格の上昇と供給不安が同時に起きることを意味します。

※最新情報はジェトロ・農林水産省の公式ページでご確認ください。

エドノフーズ「水産業界ニュース」・ジェトロ「輸出品目別レポート(サバ)」2025年9月をもとに作成

一方で、日本産サバの輸出市場では何が起きているか

日本産サバの2024年輸出実績は98億円(前年比19.5%減)と落ち込みましたが、市場の構造は変わりつつあります。アフリカ・アジア向けの直接消費用輸出が拡大しており、ベトナムやタイを経由した再輸出から、エジプト・ナイジェリア・ガーナへの直送へとシフトしています。

ここでBさんのケースを見てみましょう。Bさんは青森県の水産加工業者(従業員12名)で、国産サバを使った冷凍切り身や塩サバを主に国内の量販店向けに販売しています。ノルウェー産の不足と価格高騰で競合他社が苦しむなか、国産サバを持つBさんには海外輸出という選択肢が生まれています。何から動けばいいでしょうか。

輸出先と手順を一歩ずつ整理する

Step 1:日本産サバの輸出先市場を理解する(1〜2週目)

日本産サバの主な輸出先には大きく2つの方向性があります。

アフリカ市場(エジプト・ナイジェリア・ガーナ)は、食用直接消費向けの冷凍小型サバの輸出先として近年急成長しています。特にナイジェリアは、日本からリーファーコンテナ(冷凍コンテナ)で輸送された冷凍サバが西アフリカ各国に再輸出されるハブとしても機能しています。価格感度が高く、量を大量に安定供給できる体制が求められます。

アジア市場(ベトナム・タイ)は、日本産サバを委託加工して第三国に再輸出するルートが従来から存在しています。現地の加工コストが低く、日本の加工業者が原料を供給する形態が多い市場です。

Bさんのように国産サバを持ち、ある程度の供給量を確保できる事業者にとっては、アフリカ市場の価格高騰局面は販路拡大の好機といえます。

Step 2:輸出先の規制と必要条件を確認する(2〜3週目)

エジプト・ナイジェリア向けの冷凍サバ輸出には、以下の書類・条件が一般的に必要とされます。

  • 衛生証明書(Health Certificate):農林水産省または水産庁が発行。輸出先国の規定様式が求められる場合あり
  • 原産地証明書(Certificate of Origin):商工会議所が発行。日本産であることを証明する重要書類
  • インボイス(Commercial Invoice):品名・数量・単価・輸出者・輸入者情報を記載
  • パッキングリスト(Packing List):梱包内訳・重量・個数を明示
  • 船荷証券(B/L:Bill of Lading):冷凍コンテナ輸送の場合に必要な輸送書類

アフリカ向け輸出は関税・輸入規制が国ごとに異なります。エジプトはイスラム圏のため、ハラール(イスラム法に則った食品であることを示す認証)対応が求められる場合があります。現地の輸入業者との事前確認が欠かせません。

Step 3:HACCP対応と品質基準を整える(3〜4週目)

HACCP(ハサップ)とは、食品の製造・加工工程において危害要因を分析・管理する国際的な衛生管理手法です。2021年6月から日本でも義務化されていますが、輸出の観点では「相手国の基準を満たしていること」を書類で証明できる状態にしておくことが重要です。

アフリカ向け冷凍サバでは、ヒスタミン(アレルギーを引き起こす可能性がある物質で、サバなどの青魚に多く発生する)の管理が特に求められます。鮮度管理・冷凍温度の一貫した記録が輸出品質の証明につながります。

Step 4:輸送方法と梱包仕様を決める(1カ月目)

アフリカ向けの冷凍サバ輸出には、リーファーコンテナ(冷凍コンテナ、通常マイナス18℃以下で管理)を使った海上輸送が主流です。航空輸送と比べてコストが大幅に低く、大量輸送に向いています。日本の主要港(横浜・大阪・博多など)からアフリカの港(エジプトのアレクサンドリア港、ナイジェリアのアパパ港など)への直航便または中継便を利用します。

梱包は現地バイヤーの仕様(個包装の重量・ラベル表示言語・サイズ)に合わせることが重要です。事前にサンプルを送り、バイヤーの確認を取ってから本格的な輸出に進むことをお勧めします。

Step 5:現地バイヤーとの取引条件を固める(1〜2カ月目)

輸出取引では、代金の受け取り方法(決済条件)を明確にすることが必要です。初取引の相手には、信用状(L/C:Letter of Credit)と呼ばれる銀行が代金支払いを保証する仕組みを使うか、前払い(T/T前払い)を条件にするのが安全です。現金決済やオープンアカウント(後払い)は、信頼関係が構築されてから検討する段階のものです。

また、アフリカ市場では現地の代理店や仲介業者を経由した取引が一般的です。信頼できる仲介業者を見つけることが、安定した輸出継続の鍵になります。

サバ輸出の落とし穴:価格だけで判断すると危険

ノルウェー産サバが不足しているからといって、日本産サバがそのまま代替品として受け入れられるわけではありません。アフリカ市場ではノルウェー産の大西洋サバ(タイセイヨウサバ)と日本産のゴマサバ・マサバは別の商品として認識されている場合があり、味・脂のりの差を現地バイヤーと事前にすり合わせておくことが重要です。

また、現地の輸入業者が倒産・代金未払いになるリスクもゼロではありません。初取引は少量からスタートし、信用状や前払いで代金を確保する条件で進めることが、長期的な安全につながります。書類不備による差し止めも輸出では頻繁に起こるトラブルです。初めての輸出先には書類チェックを専門家に依頼することをお勧めします。

明日から動ける4つのアクション

  • ジェトロの「輸出品目別レポート(サバ)」2025年9月版をダウンロードし、アフリカ・アジア向け輸出の基本情報を把握する
  • 自社が出荷できる冷凍サバの規格(重量・脂質・鮮度基準)を整理し、輸出サンプル用のスペックシートを作成する
  • 農林水産省または地方農政局の輸出相談窓口に衛生証明書の発行手順を問い合わせる
  • 輸出代行業者に書類作成の見積もりを依頼し、初回輸出のコスト感を把握する

まとめ:ノルウェー産激減は、日本産サバの輸出機会でもある

ノルウェー産サバの漁獲枠52%削減は、日本国内の仕入れ市場に価格高騰と供給不安をもたらしています。しかし同時に、国産サバを安定供給できる事業者にとっては、アフリカ・アジア市場への輸出を試みるタイミングでもあります。

ポイントを3つに絞ると、まず輸出先市場(アフリカか・アジアか)と取引形態を明確にすること。次に衛生証明書・原産地証明書・インボイスなど基本書類を揃えること。そして初取引は前払いまたは信用状で代金を確保する条件で進めることです。

輸出書類の作成・代行依頼についてご相談がある方は、あさひ通商の輸出業務代行サービスをご確認ください。

出典・参考資料

関連記事

TOP
目次