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北海道産マダラの輸出額が5.5倍に、不漁が続く世界市場と国内価格への影響

鍋料理や煮付け、フライなど、さまざまな料理に使われる身近な白身魚「マダラ」。その北海道産マダラをめぐって、これまでとは少し違った動きが起きています。

北海道新聞は2026年9月20日、「道産マダラが高級品に 世界的タラ不足で輸出額5.5倍、国内向け価格も急騰」と報じました。

普段スーパーの鮮魚売り場で目にする魚の価格と、海外の水産物市場。一見すると離れた話に見えますが、水産物は世界規模で取引されているため、海外の供給状況や需要の変化が日本国内の流通にも関係します。

今回は、北海道産マダラをめぐって何が起きているのかを、国内生産や輸出の基礎データとともに整理します。

北海道産マダラにいま何が起きているのか

今回注目したいのは、北海道産マダラの海外向け取引が大きく伸びていると報じられたことです。

北海道新聞の2026年9月20日付報道では、世界的なタラ不足を背景として道産マダラの輸出額が5.5倍となり、国内向け価格も急騰していると伝えられています。

「北海道で獲れる魚なのに、なぜ海外のタラ不足が国内価格に関係するのか」と疑問に思う人もいるかもしれません。

水産物は産地だけで消費されるわけではありません。国内の産地から全国へ流通する一方、魚種や加工用途によっては海外へ輸出されます。海外で供給が不足し、日本産の魚に対する需要が強まれば、国内向けと輸出向けの双方が同じ原料を必要とする場面も生じます。

今回の報道は、そうした国際的な需給の変化が北海道産マダラにも波及している事例として注目できます。

ただし、「5.5倍」という数字については注意も必要です。

今回確認した北海道新聞の報道では輸出額5.5倍とされていますが、公開されている公的統計から同じ集計条件の「北海道産マダラ」だけを切り出し、今回の5.5倍という数字を独立して再現できる資料までは確認できませんでした。

そのため、ここでは北海道新聞が報じた数値として扱います。

マダラとはどんな魚なのか

マダラは日本の食卓になじみ深いタラ類の一つです。

淡泊な白身は加熱料理との相性がよく、鍋物、煮付け、焼き物、フライなど幅広く利用されています。

一方、「タラ」と一口に言っても、日本の漁業や流通ではマダラとスケトウダラなどがあり、利用方法も異なります。

JETROの「輸出品目別レポート(タラ)」によると、農林水産省の2024年漁業・養殖業生産統計では、日本の海面漁業によるマダラの漁獲量は5万4,500トン、スケトウダラは12万3,600トンで、タラ類を合わせると17万8,100トンでした。

さらに北海道のタラ類漁獲量は16万3,600トンで、全国の91.6%を占めています。

ここで重要なのは、この16万3,600トンが「マダラだけ」の数字ではなく、マダラとスケトウダラを含むタラ類の数字だということです。

それでも、日本のタラ類供給を考える上で北海道が非常に大きな産地であることは分かります。

日本のタラ類は海外にも輸出されている

タラ類というと国内消費のイメージが強いかもしれませんが、日本から海外への輸出も行われています。

JETROの同レポートによると、2023年の日本のタラ類輸出は金額ベースで前年比103.5%増、数量ベースで99.2%増となりました。

同年は中国が最大の輸出先となり、ベトナムも大きく伸びています。

一方、2024年のタラ類輸出額は11億4,800万円で、前年比36.2%減となりました。

つまり、タラ類の輸出は一方向に増え続けているわけではありません。

輸出先の需要、国際的な供給状況、加工需要、価格などさまざまな条件によって年ごとに変動しています。

今回報じられた北海道産マダラの輸出額増加も、こうした変動する国際市場の中で起きている動きとして見る必要があります。

「世界的なタラ不足」が日本にも関係する理由

魚の価格は、日本国内の水揚げ量だけで決まるとは限りません。

タラ類は世界各地で漁獲され、フィレや切り身、フライなど多様な形に加工されて国境を越えて流通しています。

JETROの資料でも、タラ類やタラに近い白身魚が加工原料として利用され、フィッシュバーガーやフィッシュ・アンド・チップスなど幅広い用途で消費されていることが紹介されています。

つまり、タラは国際的に需要のある白身魚です。

海外の主要産地で供給が減少したり、国際市場で調達競争が強まったりすれば、別の供給源に買い手が向かう可能性があります。

北海道新聞は今回、世界的なタラ不足と道産マダラの輸出拡大、国内向け価格の急騰を関連する動きとして報じています。

ただし、どの国・地域の供給減少が北海道産マダラの価格にどの程度影響したのかについて、今回確認できた公表情報だけから個別の寄与度を判断することはできません。

原因を単純化せず、「世界の供給環境が変化する中で北海道産マダラへの需要が注目されている」と捉えるのが適切でしょう。

国内向け価格が上がると食卓にはどう影響するのか

国内価格の上昇が続けば、最終的には鮮魚売り場や飲食店、加工食品などにも影響する可能性があります。

ただし、産地価格が上昇したからといって、その上昇幅がそのまま小売価格に反映されるわけではありません。

魚が水揚げされてから消費者の手元に届くまでには、選別、加工、保管、輸送、卸売、小売など複数の段階があります。

そのため、店頭価格については産地価格だけでなく、物流費や加工費、販売時点の需給なども関係します。

今回確認できた情報だけでは、今後の全国のマダラ小売価格がどの程度になるかを予測することはできません。

一方で、北海道産マダラの輸出額増加と国内向け価格上昇が同時に報じられたことは、国際市場の変化が日本の水産物価格と無関係ではないことを示す材料になります。

かつては中国での加工需要も大きかったタラ類

日本のタラ類輸出を考える上では、加工拠点との関係も見逃せません。

東京水産振興会が貿易統計を使ってまとめた分析では、マダラやスケトウダラなどは中国で加工され、白身魚のフィレ原料や切り身商材として欧米などへ流通してきた経緯が紹介されています。

つまり、日本から海外へ出るタラは、輸出先でそのまま消費されるケースだけではありません。

海外で加工された後、別の市場へ流通する国際的なサプライチェーンの一部になっている場合があります。

こうした構造を知ると、「北海道で獲れたマダラ」と「世界の白身魚市場」が想像以上に近い関係にあることが見えてきます。

北海道の魚が世界市場で評価される時代に

農林水産省は財務省の貿易統計を基に、農林水産物・食品の輸出実績を継続的に公表しています。

水産物についても海外市場との結び付きは強く、国内の水揚げや価格を見る際には、日本だけでなく世界の需給を合わせて見る必要性が高まっています。

北海道産マダラをめぐる今回の動きも、その一例といえます。

輸出が増えることは産地にとって新たな販売先が広がる側面があります。一方、国内の買い手から見れば、海外需要の強まりによって調達価格が変化する可能性があります。

ただし、「輸出が増えたから国内価格が上がった」と一つの要因だけで断定するのは適切ではありません。

水産物の価格は、漁獲量、国内外の需要、為替、加工・物流条件など複数の要素が関係するためです。

今後は「水揚げ」と「輸出」の両方に注目

これから北海道産マダラを見るときには、産地の水揚げだけでなく輸出動向にも注目したいところです。

日本のタラ類生産で北海道が大きな位置を占めている以上、北海道の漁獲や価格の変化は国内の流通にとって重要です。

同時に、世界的な白身魚の供給環境が変化すれば、日本産マダラが海外からどのように評価されるかも変わってきます。

身近な鍋料理の魚として親しまれてきたマダラが、国際市場の需給変化によって「海外から求められる水産物」として存在感を増す。

今回のニュースは、日本の水産物が国内市場だけで完結していないことを改めて示しています。

今後について独自に価格や輸出量を予測することはできませんが、北海道産マダラの水揚げ、輸出量・輸出額、そして国内価格がどのように推移するのかは、引き続き注目したいポイントです。

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