北海道の秋サケ漁が、水揚げ量68.7%減という記録的な不漁に見舞われている。日本最大のサケ産地で何が起きているのか。そして輸出事業者の仕入れ計画に何をもたらすのかを整理する。
何が起きたか
2025年の北海道秋サケ漁は、漁獲匹数で前年比64.1%減の約561万5,000匹を記録した。これは平成元年(1989年)以降で最低の水準だ。
定置網漁獲量でも前年比67%減の約1万4,500トンと過去最低水準を更新している。3年連続の不漁となり、業界への打撃は深刻だ。(出典:日本経済新聞 2026年1月・北海道水産林務部)
地域別では被害の差が大きい。根室管内では80.6%減、オホーツク管内では66%減と、主要産地が軒並み大幅減産となった。
唯一えりも以西だけが82.5%増と回復傾向を見せたが、道内全体の不漁を補うには程遠い数字だ。
不漁の根本原因として最も有力視されているのが、2021年秋に道東沖で発生した観測史上最大級の赤潮だ。有害プランクトン「カレニア・セリフォルミス」が大量発生し、酸欠状態で多数のサケが死滅した。(出典:水産庁・北海道水産林務部)
当時のサケ関連被害は10億円を超えたとされる。サケは海で3〜5年過ごしてから生まれた川に戻る。赤潮で打撃を受けた「赤潮世代」が2025年に一斉に帰還するシーズンと重なり、今季の極端な不漁につながったとみられている。
※数値は2025年漁期のデータおよびオーナー提供の報道情報をもとにしています。最新情報は北海道庁・水産庁の公式発表をご確認ください。
世界自然遺産・知床の生態系が揺らいでいる
今回の不漁が特に深刻な意味を持つのは、UNESCO世界自然遺産に登録されている「知床」への影響だ。
知床のエコシステムでは、産卵のために川を遡上するサケがヒグマや野鳥の主要な食糧となる。さらに遡上したサケの死骸が土壌に分解されて森林の栄養源となる「命の循環」が成立している。(出典:知床財団)
サケが激減すれば、ヒグマが餌不足に陥り行動範囲が変わる可能性がある。森林への栄養流入も減少し、植生にまで影響が及ぶ。知床の生態系はサケを基点としており、今回の不漁はその循環を根本から揺るがしかねない。
観光業においても打撃は大きい。秋のサケ遡上シーズンは知床観光の柱のひとつで、クマがサケを捕らえる場面は国内外の観光客を引きつける「知床体験」の象徴だ。サケの激減は、その観光機会そのものを失わせる。(出典:知床財団・北海道観光関連資料)

輸出ビジネスへの影響
北海道産秋サケは水産輸出においても主要な品目のひとつだ。この記録的な不漁は、輸出事業者にとって3つの現実的な課題をもたらしている。
原料確保の困難化
水揚げ量が68.7%減という局面では、加工・輸出向けの北海道産秋サケの原料調達そのものが難しくなる。産地の漁協・仲卸から確保できる数量が激減するため、例年と同じ規模での輸出計画を維持することはできない。
特に秋サケを主力商材としてきた輸出事業者は、今シーズンに限らず次シーズンの調達計画も含め早急な見直しが必要だ。
浜値急騰による採算圧迫
供給不足は産地価格(浜値)の急騰に直結する。今シーズンはすでに浜値の急騰が報告されており、製品価格への転嫁が避けられない状況だ。(出典:日刊水産経済新聞)
輸出価格に転嫁できなければ採算が合わなくなる商材となるリスクがある。バイヤーとの価格交渉の準備は早めに進めることが重要だ。
「知床ブランド」サーモンの供給ダウン
世界自然遺産を冠する「知床サーモン」は、海外バイヤーへの高付加価値訴求において強力なカードだ。このブランドの供給が激減することは、プレミアム価格での輸出機会を直接的に狭める。
輸出事業者が今すぐ確認すべきこと
- 代替産地・代替魚種の確保先を今から洗い出す
北海道産秋サケが確保しにくい局面では、岩手・宮城などの太平洋側の秋サケ、カラフトマスや養殖サーモンなど代替品の可能性を早めに確認しておくことが重要だ。 - 2026年の回復予測を公式データで確認する
2022年放流魚が帰還する2026年は回復が期待されるという見方がある。水産庁・北海道庁が公表する来遊予測を確認し、次シーズンの仕入れ計画を今から立て始める。
→ 北海道庁 秋さけ漁獲速報(北海道水産林務部)
→ 水産庁 公式サイト - バイヤーへの早期連絡と価格交渉の準備をする
不漁を理由とした価格変更・数量変更は、事前にバイヤーへ丁寧に説明することで信頼関係を守ることができる。ジェトロの輸出支援ポータルなどを活用しながら、早めに合意形成を進めることを推奨する。
→ ジェトロ 農林水産物・食品の輸出支援ポータル
まとめ
2025年の北海道秋サケは水揚げ量68.7%減という記録的不漁を記録した。2021年赤潮に起因する「赤潮世代」の帰還が重なったことが主因で、知床の生態系や観光業にまで影響が及んでいる。
輸出事業者にとっては原料確保・価格高騰・ブランド訴求の3点で現実的な打撃となっており、代替品の検討と来シーズンに向けた早期計画が急務だ。
北海道産水産物の輸出書類・手続きでお困りの際は、あさひ通商にお気軽にご相談ください。