中国向けに水産物を輸出したいとき、最初に確認したいのは「商品があるか」だけではありません。中国向け水産食品や活水産物では、輸出再開に向けて、施設の再登録、放射性物質検査、検査報告書、初回輸出日の考え方を順番に確認する必要があります。
水産庁は、令和8年度の中国輸出向け水産物の放射性物質検査について、検体募集を案内しています。この記事では、輸出者目線で、初心者でも迷いにくいように、確認手順をstep by stepで整理します。個別商品の輸出可否や施設の登録可否を断定するものではないため、実際の案件では輸入者、施設、関係機関、通関業者と最新条件を照合してください。
Step 1 商品が中国向けの水産食品か活水産物かを分ける
最初の確認は、商品区分です。中国向けでは、水産食品と活水産物で確認する手続や関係書類が変わります。冷凍魚、冷蔵魚、水産加工品、包装済みの水産食品なのか、生きた水産物なのかを先に分けます。
商品名だけで判断せず、魚種、加工状態、冷凍・冷蔵・活の区分、製造・加工施設、保管施設、最終包装を行う施設を整理します。輸入者から「中国へ出せますか」と聞かれた段階で、この情報がそろっていないと、施設再登録や検査の対象確認に進みにくくなります。
Step 2 施設が再登録の対象か確認する
農林水産省は、令和5年8月のALPS処理水の海洋放出に伴い停止されていた日本産水産物の中国向け輸出について、日中当局間で輸出再開に必要な技術要件に合意したと案内しています。そのうえで、中国向け輸出再開には、中国において登録されている認定施設の中国側への再登録が求められるとしています。
輸出者は、まず自社または仕入れ先の施設が、過去に中国向け輸出水産食品取扱施設または活水産物施設として登録されていたかを確認します。あわせて、現在の施設名、所在地、営業許可、製造・加工内容、保管や最終包装の役割が過去の登録情報とずれていないかを見ます。

Step 3 検査で見る核種を理解する
水産庁の案内では、中国向け輸出再開にあたり、ALPS処理水の海洋放出前にも要件となっていた放射性セシウム134、放射性セシウム137、放射性ヨウ素131の検査に加え、新たに放射性ストロンチウム90とトリチウムについて、中国において登録された製造・加工等施設ごとに、初回輸出前までに1回検査を行うことが必要とされています。
ここで混同しやすいのは、検査のタイミングです。放射性セシウム134、137、放射性ヨウ素131は、従来どおり輸出ロットごとに事業者が最寄りの分析機関で検査します。一方、ストロンチウム90とトリチウムは、提供した検体について検査機関が分析し、検査報告書を発行する流れです。
Step 4 検体募集に応募できる施設か確認する
水産庁の令和8年度検体募集では、応募資格が施設単位で示されています。対象は、令和5年8月24日以前に中国向け輸出水産食品取扱施設または活水産物施設として登録されていた施設で、中国向けに水産食品または活水産物の輸出を予定している施設です。
さらに、水産食品取扱施設の場合は、管轄の地方厚生局に施設の再登録申請を行い、中国側に申請が行われた施設であることが条件とされています。ただし、保管施設はこの条件の対象から除かれています。活水産物取扱施設の場合は、農林水産省輸出・国際局規制対策グループに再登録申請を行い、中国側に申請が行われた、最終包装を行う施設が対象です。
Step 5 応募期間と提出方法を確認する
検体募集は、毎月の募集検体数が40検体とされています。応募期間は毎月1日0時から20日17時までです。応募様式に必要事項を入力し、電子メールで提出する流れですが、提出時はPDFなどに変換せず、Excel形式のまま送るよう案内されています。
過去に応募したことがある施設でも、検査を希望する場合は当月分として再度応募が必要です。輸出者は、輸入者との商談スケジュールだけでなく、毎月の応募期間、選定結果の連絡時期、検査報告書の取得時期を見て、初回輸出日を逆算します。
Step 6 選定後の検体送付と費用を確認する
水産庁は、選定方法について、中国側で施設登録された施設を優先して選定し、応募者多数の場合は抽選により決定すると案内しています。選定された施設には、毎月25日、休日の場合は翌営業日までに電子メールで連絡されます。
検体送付先などの詳細は、選定結果通知の際に案内されます。検体費用は検査機関から振り込まれ、送料は着払い、検査費用は無料とされています。ただし、これは検体募集に関する案内であり、通常の輸出ロットごとの検査や書類準備、物流費用まで無料になるという意味ではありません。
Step 7 初回輸出日の前に検査報告書と製造日を確認する
ストロンチウム90とトリチウムの検査報告書は、初回輸出日からさかのぼって2年以内に検査機関から発行されたものが、中国側への提出資料として使用できます。ただし、令和5年8月24日以降に発行されたものという条件も示されています。
また、水産庁は、放射性物質検査は中国側の再登録を待たずに実施できる一方、実際に輸出する水産食品は再登録日以降に加工・製造するよう案内しています。つまり、検査を先に進められる場合でも、輸出する商品の製造日や加工日が再登録日より前になっていないかを確認する必要があります。
初心者向け確認リスト
- 商品が水産食品か活水産物かを分けたか
- 魚種、加工状態、温度帯、製造・加工施設、最終包装施設を整理したか
- 令和5年8月24日以前の中国向け施設登録状況を確認したか
- 中国側への再登録申請が進んでいるか確認したか
- 10都県に所在する施設の扱いなど、輸入停止措置の対象を確認したか
- ロットごとの検査と初回輸出前の2核種検査を分けて理解したか
- 検体募集の応募期間である毎月1日0時から20日17時を確認したか
- 過去に応募していても当月分として再応募が必要な点を確認したか
- 選定結果の連絡時期と検体送付の流れを確認したか
- 初回輸出日、検査報告書の発行日、再登録日以降の加工・製造日を照合したか
あさひ通商へ相談する時に用意したい情報
中国向け水産物輸出では、商品名だけでは判断できません。相談前に、商品名、魚種、加工状態、温度帯、製造・加工施設、保管施設、最終包装施設、過去の中国向け登録状況、輸入者情報、希望する初回輸出時期を整理しておくと、確認が進めやすくなります。
あさひ通商では、水産物輸出に関する商品確認、書類確認、輸出手順の整理、通関・物流に向けた初動確認を支援しています。中国向けの個別可否は案件ごとの確認が必要ですが、まずは「どの施設で、どの商品を、いつ輸出したいのか」を分けて確認することが出発点です。