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データで見る中国・香港の食品規制実態!2026年6月の新制度で輸出はどう変わる?

「中国のバイヤーから声がかかったけど、食品を輸出するには特別な登録が必要って本当?」。こんな疑問を抱えながら情報収集を始めたばかりの方も多いのではないでしょうか。じつは2026年6月1日から、中国向け食品輸出に関わる新しい制度が施行されます。この制度への対応が遅れると、せっかく契約をまとめても税関で止められるリスクがあります。

今回は、農林水産省・ジェトロが公表している最新の輸出統計データと規制変更の実態を数字で整理しながら、「中国・香港に食品を輸出したい初心者が今すぐ知っておくべきこと」を解説します。

香港・中国は依然として日本食品の主要市場。最新の数字から見えること

2025年輸出統計:水産物・農産物の伸びが顕著

農林水産省の発表(2026年2月)によると、2025年1〜12月の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円前年比+12.8%)でした。このうち水産物は4,231億円(+17.2%)、農産物は1兆1,008億円(+12.1%)と、どちらも力強い伸びを示しています。

品目別で特に注目を集めているのが緑茶です。2025年の輸出額は720億円(前年比+98.2%)とほぼ倍増しています。また、ホタテ貝が906億円(+30.4%)、ブリが528億円(+27.4%)と、水産品の勢いも続いています。世界的な日本食ブームに加え、国際的な食の安全基準への適合が評価された結果といえます。

なぜこれらの品目が伸びているのでしょうか。背景にあるのは、コロナ禍後の外食需要の回復と、健康志向の高まりによる日本産食品への信頼の高まりです。緑茶の場合、米国市場での抹茶ブームが輸出額を押し上げた一因とされています。品目の特性に合わせた市場ターゲティングが、成果に直結しています。(弊社では水産物・和牛以外はサポート対象外です)

国・地域別:香港は2位を維持、中国は規制影響で苦戦

輸出先の国・地域別では、1位が米国(2,762億円)、2位が香港(2,228億円・前年比+0.8%)、3位が台湾(1,812億円)となっています。かつてアジア最大の輸出先だった中国は、2023年8月のALPS処理水海洋放出以降の水産物輸入停止措置の影響などから順位を落とし、2024年実績では4位(1,681億円、前年比▲29.1%)となっています。

なぜ香港がこれほど重要なのでしょうか。大きな理由は2点あります。第一に、香港は関税が基本的に無税あり、輸入規制も他国に比べて少ないこと。第二に、中国本土へのゲートウェイとしての役割を担っており、香港経由で中国全土の消費者にリーチできること。「まず香港から攻める」という輸出戦略は、日本食品の輸出では定番のルートになっています。

2026年6月1日施行:中国「輸入食品海外製造企業登録管理規定」とは何か

制度の概要:輸出食品の製造・加工・保管企業が登録対象

2025年10月14日、中国税関総署(GACC)は「輸入食品海外製造企業登録管理規定」の新規定を公布しました。これが2026年6月1日から施行されます。現行の旧規定はこれに伴い廃止されます。

一言で説明すると、「中国に食品を輸出する海外の製造・加工・保管企業は、中国税関当局(GACC)への登録が必要」という制度です。登録していない企業の食品は、中国税関で受け取ってもらえない可能性があります。これは「規制が厳しくなった」というだけでなく、「登録という手続きを経なければ商売ができない」という仕組みです。銀行口座の開設に本人確認が必要なように、中国市場への「入場手続き」だと理解すると分かりやすいでしょう。

登録の有効期間は5年間で、満了後は自動的に5年間延長されます。また、食品の包装にも影響が出ます。登録完了後は、食品の包装にGACC登録番号(または仕向国の主管当局が発行した登録番号)を記載することが義務づけられます。既存のパッケージデザインを変更する必要が生じるケースもあるため、製造現場にも早めの情報共有が必要です。

誰が対象になるのか?OEM工場も要確認

対象となるのは、中国へ輸出する食品を「製造・加工・保管」する海外の企業・事業者です。日本の場合、農林水産省(農水省)が窓口となっており、農水省を通じて申請・登録を行います。自社工場から直接輸出する食品メーカーはもちろん、OEM(受託製造)で製品を作っている工場も、登録対象となる場合があります。

注意が必要なのは、中国当局が登録を求める品目リストを随時追加・更新・変更している点です。以前は対象外だった品目が新たに登録対象になるケースもあるため定期的に農林水産省のウェブサイトや中国の国際貿易シングルウインドウ(CIFER)を確認することが欠かせません。

「以前も登録していた」では安心できない理由

すでに登録済みの企業も要注意です。新規定の施行に伴い、既存の登録情報が新システムへどのように引き継がれるか、品目が引き続き対象として認められるかを確認する必要があります。旧規定に基づく登録が自動的に新制度でも有効とは限りません。農林水産省の公式ページで最新の案内を確認するとともに、必要に応じて再申請の準備を進めることが望ましいです。

※最新の対応要件については、農林水産省の公式ページおよびジェトロの情報を必ずご確認ください。

登録できていないと何が起きる?輸出現場のリスクを数字と事例で理解する

税関での差し止めリスク:中国の事例から学ぶ

「登録できていなければ輸出できない」は理屈の話だけではありません。2025年1月には、日本政府の国会答弁を機に中国が日本産水産物の輸入を事実上再停止したことが報じられました(日本経済新聞・2025年1月報道)。2023年8月に始まった水産物輸入停止措置により、2024年の対中国輸出額は前年比29.1%減という大きな落ち込みを記録しています。

水産物以外の食品も無関係ではありません。中国税関は日本からの食品に対して書類審査・衛生検査を厳格に行っており、以下の条件をすべて満たしていない場合、通関が通らないリスクがあります。

  • GACCへの企業登録が完了している
  • 衛生証明書(輸出先国の要件に合致したもの)が添付されている
  • 成分・添加物の規制適合確認が行われている
  • 食品包装に登録番号が正しく記載されている

このうち一つでも欠けていれば、日本国内の審査をクリアしていても、現地で通関が通らないリスクがあります。「書類が揃っているかどうか」は、出発前ではなく出発した後に判明することも多いため、事前の準備が何より重要です。

コスト面への影響:登録準備は早めに着手すること

GACC登録は農林水産省への申請を経て行われますが、書類の準備(製造フロー図・衛生管理計画・施設の図面など)から登録完了まで、品目や企業の状況によっては数か月単位の時間がかかることがあります。バイヤーから急ぎでオーダーが入ったとしても、登録が完了していなければ対応できません。

また、専門的な書類作成を自社のみで対応しようとすると、担当者の工数が大きくなるだけでなく、記載内容の誤りによる差し戻しリスクも生じます。2026年6月の施行を待たずに、今すぐ準備を開始することを強くおすすめします。

香港市場の変化。2025年9月施行の金属汚染物質規制を理解する

新たに設けられた「27分類の許容最大基準値」

「香港は規制が少ないから安心」と思っている方にも、2025年以降は注意が必要です。2025年9月18日、香港では食品混入不純物(金属汚染物質含有量)に関する改正規則が施行されました。この改正により、新たに27分類の食品カテゴリーに対して金属汚染物質(鉛・カドミウム・砒素・水銀など)の許容最大基準値が設けられました。

これまで香港に問題なく輸出できていた食品でも、金属汚染物質の含有量が新基準値を超えている場合は流通できなくなります。特に海藻類・水産物・コメ・菓子類は影響を受けやすい品目として注目されています。「国内で普通に販売している商品だから問題ない」という思い込みが、輸出後のトラブルにつながる可能性があります。

なぜ香港で金属汚染物質規制が強化されたのか

今回の規制強化は突発的なものではなく、国際的な食品安全基準(コーデックス委員会の基準)の整備に沿った段階的な動きです。先進国・地域の食品安全規制は、科学的知見の蓄積に基づいて随時アップデートされます。香港もこの流れに沿って、より厳格な基準体系を整備しています。

日本国内では食品添加物や残留農薬の基準は厳格に管理されていますが、金属汚染物質の基準については品目によって香港の設定値と異なる場合があります。輸出前に輸入者(バイヤー)側に香港食物環境衛生署(FEHD)への確認を依頼するか、第三者検査機関による成分分析を行うことが現実的な対策です。

輸出初心者が今すぐ取るべき3つのアクション

アクション①:自社製品が「GACC登録対象品目」かを確認する

まず確認すべきは、自社の製品が中国のGACC登録が必要な品目かどうかです。農林水産省のウェブサイト「中国向け輸出食品の製造等企業登録」ページでは、登録が必要な品目リストと手続きの詳細が公開されています。食品の種類(水産品・乳製品・菓子・冷凍食品など)によって対応が異なるため、自社の主力商品がリストに含まれているかを確認することが第一歩です。確認は以下の公式URLから行えます。

農林水産省「中国向け輸出食品の製造等企業登録に係る規制への対応について」

アクション②:香港向けなら金属汚染物質の成分検査を検討する

香港向けに食品輸出を検討している場合、2025年9月施行の改正規則の影響を受けていないかを確認しましょう。具体的には、品目が「27分類」のいずれかに該当するかを確認し、必要であれば公認検査機関での成分分析(鉛・カドミウム・砒素・水銀などの測定)を実施することを検討してください。検査費用は品目・検査機関によって異なりますが、後で輸出ストップになるリスクと比較すると、事前投資として十分見合う内容です。

アクション③:情報源を「公式機関」に絞り込む習慣をつける

食品輸出の規制情報は変化が速く、ネット上には古い情報も多く残っています。信頼できる情報源として以下の公式機関を定期的にチェックする習慣をつけることが重要です。

※規制・法律情報は変更される場合があります。最新情報は必ず公式機関にてご確認ください。

まとめ:2026年の規制変化を「先手」で乗り越えるために

今回見てきたデータと規制情報を整理すると、以下の3点が見えてきます。

  • 中国・香港は依然として日本食品の主要輸出先(2025年:香港2位・2,228億円、水産物全体で4,231億円と前年比+17.2%)ながら、規制のハードルが年々高まっている
  • 2026年6月1日に施行される中国の「輸入食品海外製造企業登録管理規定(GACC新規定)」は、登録対象企業にとって避けられない対応課題であり、準備には数か月を要する
  • 香港の金属汚染物質規制(2025年9月施行)も見落としがちな落とし穴であり、主要品目(水産物・海藻・コメ・菓子)は事前の成分確認が必要

「輸出してみたいけど、何から手を付けたらいいかわからない」という方は、規制対応・書類申請・現地バイヤーとの交渉を一括してサポートする輸出業務代行サービスの活用も選択肢の一つです。複数の手続きを同時に進める必要がある場合は、専門家の力を借りることで時間とリスクを大幅に削減できます。

まずは農林水産省・ジェトロの情報で自社製品の規制状況を確認するところから始めてみましょう。

出典

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