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2026年5月、初ガツオ豊漁の今こそ動け。かつお節でEU市場へ参入するために必要な3つの準備

「鹿児島から発信している水産会社なんですが、今年の初ガツオは水揚げも多くて品質も良い。でも正直、国内の引き合いだけじゃ追いつかなくて。ヨーロッパに出してみたいんですが、どこから手をつければいいか全然わからなくて困っています。」

そんな相談が届いたのは、2026年5月初旬のことでした。毎年この時季になると、初ガツオの話題はにぎやかになります。カツオは日本人にとって身近な魚ですが、欧州市場への輸出という文脈で語られることはまだ多くありません。

ところが、欧州での日本食への関心は着実に高まっています。和食のユネスコ無形文化遺産登録以降、フランスやドイツでは日本の食材そのものへの興味が拡大しており、かつお節(カツオを加工・乾燥させたもの)はその筆頭格のひとつです。「だし」の概念がフランス料理の「フォン」に似ているとして、一部のシェフの間では実際に使われはじめています。

この記事では、2026年5月の初ガツオ市況を整理したうえで、かつお節というかたちでEUへ輸出するために何が必要かを、シナリオ形式で解説します。「まず何をすればいいかわからない」という水産事業者の方に、明日から使える情報をお届けします。

2026年5月の初ガツオ市況:水揚げ増加、価格は高値安定

2026年5月現在、初ガツオ(その年最初に太平洋沿岸を北上してくる群れのカツオ)の主な水揚げ産地は以下の通りです。

  • 鹿児島県:2.0〜1.5kgサイズが中心。黒潮に乗った回遊魚の走りが入荷
  • 宮崎県:1.5kgサイズが中心。安定した水揚げが続いている
  • 高知県:2.5〜1.5kgの幅広いサイズが揃う。漁場が近く日戻り操業(日帰りで戻る漁業)のため鮮度が高い

注目点は、高知県の水揚げ量が昨年を上回るペースで推移していることです。2025年は高知の水揚げが少なかった年でしたが、2026年は群れの入りが良く、5月上〜中旬の段階で昨年比増となっています。(出典:株式会社うおいち 商品情報2026年5月号)

価格面では、燃料費・人件費の上昇を背景に高値が続いています。とはいえ、品質面では高知・和歌山産が特に評価が高く、日戻り漁によって鮮度の維持がしやすい状況です。豊漁かつ高品質という条件が重なっているのが、今年の初ガツオの特徴といえます。

輸出市場という観点では、2024年の日本の農林水産物・食品輸出額が初めて1兆5,000億円を突破しました。政府の輸出拡大目標が着実に進む中、EUは日本食の需要が高まっている有望市場のひとつとして注目されています。(出典:ジェトロ 2025年2月公表データ)

※最新の市況・規制情報は農林水産省・ジェトロの公式ページを必ずご確認ください。

出典:株式会社うおいち 商品情報2026年5月号、ジェトロ輸出統計データより作成

今回のシナリオはこうです。Aさんは鹿児島市内で水産物の卸売を手がける商社の営業担当(35歳・男性)です。国内の小売店や飲食店向けに生鮮カツオを供給してきましたが、今年の豊漁で供給量が増え、新たな販路を模索しています。取引先のバイヤーから「ヨーロッパの日本食レストランへ食材を売り込みたい」という話を聞き、かつお節としての輸出に興味を持ちはじめました。「でも何から準備すればいいか」と途方に暮れているAさんの状況を、一緒に考えてみましょう。

かつお節でEUへ輸出するための5つのステップ

Step 1:「生鮮」か「加工品」か、まず方向性を決める(1〜2週目)

生鮮カツオをそのままEUへ輸出することは技術的には可能ですが、航空輸送が前提になるためコストが高く、小規模での参入は現実的ではありません。一方、かつお節・なまり節(一度煮てから乾燥させたもの)・かつお削り節といった加工品は常温または冷蔵輸送が可能で、賞味期限も長く設定できます。

Aさんが検討しているのは、地元の製造業者と連携して「かつお節」として加工し、EU向けに輸出するモデルです。この場合、生鮮魚介類ではなく乾燥・燻製加工品として輸出する形になります。

なぜこのステップが重要か。後のStep 2以降でEU規制の確認が必要になりますが、まず「何を輸出するか(生鮮・加工品・どの製品形態か)」を決めないと、確認すべき規制の範囲が定まりません。生鮮と加工品では適用されるルールが大きく異なります。

Step 2:EU向けかつお節輸出の規制を確認する(2〜3週目)

EUへのかつお節輸出で特に注意が必要なのが、PAH(多環芳香族炭化水素類・たかんほうこうぞくたんかすいそるい)規制です。

PAHとは、食品の燻製・乾燥・焙煎工程で生成される化合物の総称です。かつお節はその製造工程でいぶし(燻製)をかけるため、PAHが含まれやすい食品として分類されます。EUはPAH含有量について厳しい上限値を設けており、この基準を超えた製品はEU市場に入ることができません。

農林水産省は「かつお節製品の輸出の現状及び規制に関する情報」ページで最新の規制情報を公開しています。まずはそこを確認するのが最短ルートです。また、ジェトロの「EUへの農林水産物・食品の輸出について」(EU輸出支援プラットフォーム)も、国別の最新規制をまとめた実務的な情報源です。

なぜこのステップが重要か。PAH規制をクリアしていない製品を輸出しようとすると、通関で止められるだけでなく、取引先バイヤーからの信頼を失います。規制確認は商談に入る前に必ず済ませる必要があります。

Step 3:EU向けの要件を満たした製造施設を確保する(1〜2カ月目)

かつお節をEUへ輸出するには、EU向けの衛生基準を満たした施設で製造・加工されている必要があります。Aさんの場合、自社で製造設備を持っているわけではないため、連携する製造業者がEU向け輸出に対応しているかどうかの確認が最初の関門になります。

対応している製造業者を見つけるには、以下の方法が有効です。

  • 鹿児島県や農林水産省の輸出サポート窓口に問い合わせる
  • ジェトロの輸出相談サービスを利用する(無料)
  • 同じ産地で実績のあるかつお節製造業者の情報を調べる

もし対応している施設が見つかった場合は、その施設と連携して試験輸出の準備を進めます。対応施設が見つからない場合は、製造業者と共に施設整備・認定取得のプロセスを検討することになります。これには数カ月〜1年単位の時間がかかる場合もあるため、早めに動き始めることが大切です。

なぜこのステップが重要か。EU向け輸出においては、「良い製品があれば輸出できる」わけではありません。製造プロセスと施設の衛生管理が規制に適合していることが、前提条件です。

Step 4:バイヤーの開拓とサンプル商談(2〜3カ月目)

規制確認と製造体制の目途が立ったら、いよいよ販路開拓です。EU向けのバイヤー開拓には以下のルートが一般的です。

  • ジェトロの輸出相談・マッチング支援:EU各国の日本食バイヤー情報を持っており、相談窓口を無料で利用できます。EU輸出支援プラットフォームでは国別のカントリーレポートも提供しています
  • FOODEX JAPAN(食品展示会)への出展:毎年3月に千葉で開催される国際食品・飲料展示会。EU方面のバイヤーも多数来場します
  • 在日欧州各国大使館の商務担当窓口:特定の国への輸出を検討している場合、相手国の大使館の商務部が橋渡しをしてくれることがあります

サンプルを送る際は、英語(または相手国の言語)での製品説明シートと、原材料・アレルゲン表示の翻訳も一緒に用意してください。EUでは食品ラベルの言語・記載事項について厳格なルールがあります。

なぜこのステップが重要か。かつお節はEUではまだ一般的ではありません。「このだしを使うと料理がどう変わるか」という体験を提供できるバイヤー、具体的にはレストランやフードサービス向け卸業者にリーチすることが、最初の一手として効果的です。

Step 5:試験輸出と書類の整備(3〜4カ月目)

バイヤーが見つかったら、試験輸出(サンプルまたは少量の商業輸出)を実行します。この際に必要な主な書類は以下です。

  • インボイス(商業送り状):品目・数量・金額・原産国などを記載した書類
  • パッキングリスト:荷姿・梱包内容を詳細に記載した書類
  • 原産地証明書(Certificate of Origin):日本産であることを証明する書類。EPA(経済連携協定)を活用する場合はEPA特定原産地証明書が必要
  • 衛生証明書:食品の安全性を証明する書類(品目によっては農林水産省が発行)
  • PAH検査結果の証明書:EU向けかつお節の場合は特に重要

書類が一つでも不備があると通関で止まります。初めての対EU輸出の場合は、輸出業務代行会社や通関業者と組んで進めることを強くおすすめします。

なぜこのステップが重要か。試験輸出は「失敗のコストが低い実験」です。少量で実際の輸送・通関の流れを体験することで、本格輸出に向けた課題を事前に洗い出すことができます。

やってはいけない:よくある落とし穴3つ

落とし穴①:PAH検査なしでサンプルを送る

「少量だから大丈夫だろう」と検査なしでサンプルを送ると、EU側の税関で止まったり、バイヤーに受け取り拒否される場合があります。最初の一通がマイナスの印象になると、以降の商談が進まなくなります。サンプルであっても、PAH検査結果の書類は必ず用意してください。

落とし穴②:EU全体を「一つの市場」として扱う

EUは共通の規制の下にありますが、各国で食文化・流通構造・バイヤーの好みが大きく異なります。フランスでは高級レストランのシェフ向け販路が有効なケースが多い一方、ドイツではオーガニック・健康食品ルートから入ることが多いとされています。最初からEU全体を狙うのではなく、1カ国に絞って参入するほうが成功率が上がります。

落とし穴③:「いい製品があれば売れる」という思い込み

かつお節はEUではまだ認知度が低い食材です。「どう使うか」「何が違うのか」を丁寧に伝えるサポートがなければ、品質が良くても売れません。製品スペックに加えて、レシピや活用提案のコンテンツを準備することが、EU市場では特に重要です。

明日から動けるアクション

  • 農林水産省「かつお節製品の輸出の現状及び規制に関する情報」ページを確認する
  • ジェトロの輸出相談窓口(無料)に問い合わせ、EU向けかつお節の最新規制を確認する
  • 地元の製造業者(かつお節加工業者)に対EU輸出の実績があるかどうかを確認する
  • EUのどの国の市場から入るかを1カ国に絞り込む
  • 試験輸出の費用感と書類の全量を輸出業務代行会社に相談する

まとめ:豊漁の今を入口に、じっくり育てる欧州商流

今回お伝えしたポイントを3点に絞ります。

一点目は、2026年5月の初ガツオは高知をはじめ主要産地で昨年を上回る水揚げが続いており、供給量・品質ともに好条件です。豊漁は商材の確保という面で追い風になります。

二点目は、かつお節のEU輸出にはPAH規制や製造施設の確認など、クリアすべきステップがあります。ただし、これは「参入障壁」ではなく「他の競合がまだ乗り越えていない壁」でもあります。今のうちに動き始めることが、欧州市場での先行優位につながります。

三点目は、EU輸出は1社で完結するものではありません。製造業者・ジェトロ・輸出代行会社・通関業者を組み合わせてチームをつくることが、現実的かつ確実なアプローチです。

「かつお節の輸出、どこから動けばいいかわからない」という状況であれば、まずはあさひ通商の輸出業務代行サービスへご相談ください。

出典・参考資料

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