水産・和牛 仕入れ代行

日本で養殖されている水産物31品目を輸出者目線で評価。規制・需要・仕入れのポイントを一覧で整理

「産地から養殖魚を仕入れて輸出したいが、品目がたくさんありすぎてどれを選べばいいのかわからない。ブリは聞くけど、他の品目はどうなんだろう」

食品輸出を手がける事業者から、こんな相談をよく受ける。輸出者の立場からいえば、自分で養殖するのではなく産地や仲卸から仕入れ、海外バイヤーへ販売するのが基本だ。問題は、日本には養殖水産物の品目が非常に多く、どれに商機があるのかを体系的に把握できる情報が少ないことだ。

この記事では、農林水産省の漁業・養殖業生産統計をもとに、日本で養殖されている水産物を31品目にわたって一覧化し、輸出者目線で「どの品目に商機があるか」を整理する。輸出実績がまだ少ない品目でも、今後の市場開拓の対象になる可能性がある。仕入れ先の選定から輸出判断まで、一覧として活用してほしい。

農林水産省・令和6年(2024年)漁業・養殖業生産統計によると、日本の海面養殖業の収獲量は80万1,200トン、内水面養殖は2万8,580トンで、合計約83万トンの養殖水産物が国内で生産されている。2025年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,000億円超で過去最高を記録し、養殖ブリ1品目だけで528億円(前年比27.4%増)に達している。しかしこれはごく一部の品目に過ぎない。他の品目には、まだ誰も開拓していない輸出ルートが残っている可能性がある。

※農林水産省「令和6年漁業・養殖業生産統計」、ジェトロ「2025年農林水産物・食品輸出実績(詳細版)」より。最新情報は各機関の公式サイトでご確認ください。

食品輸出を専業とするAさん(40代・東京)は、国内の産地や仲卸から水産物を仕入れ、香港・シンガポールのバイヤーへ販売する輸出事業者だ。現在はブリとノリを主力品目としているが、「他の品目も試してみたい。でも仕入れできる産地も、海外での需要も、規制も、品目ごとにバラバラで全体像が見えない」というのが本音だ。Aさんのように、品目を広げたい輸出事業者に向けて、31品目を整理した。

出典:農林水産省「令和6年漁業・養殖業生産統計」をもとに作成

日本の養殖水産物31品目:仕入れ輸出者向け一覧

輸出チャンス評価の見方

以下の表では、各品目の輸出チャンスを4段階で評価している。評価基準は「国際需要の大きさ」「既存の輸出実績」「規制の複雑さ」「仕入れやすさ」の総合判断だ。

  • :輸出実績が豊富で国際需要が確立している。今すぐ仕入れルートの開拓が始められる
  • :輸出実績があり、成長余地がある。規制確認の上で参入可能
  • :輸出実績は少ないが潜在チャンスがある。市場調査と先行者優位を狙う品目
  • :現状では輸出事例が極めて少ない。将来的な検討対象

全品目一覧

品目カテゴリー主な仕入れ産地主な輸出先国輸出チャンス仕入れ輸出者の注意点
ブリ(ハマチ)海面・魚類鹿児島・愛媛・大分・宮崎米国・欧州・中国・カナダFDA(米国食品医薬品局)登録・HACCP(食品安全管理の国際基準)認定施設からの仕入れが必須。仕入れ先の認定確認が最初のステップ
カンパチ海面・魚類鹿児島・愛媛米国・欧州・中東ブリと同ルートで展開しやすい。生産量がブリより少なく、仕入れ量に上限が出やすい点を考慮する
マダイ海面・魚類愛媛・三重・長崎・高知香港・台湾・中国・東南アジア中国向けはGACC(中国市場監督管理総局)登録施設からの仕入れが必要。香港は規制が比較的少なく参入しやすい
ヒラメ海面・魚類大分・青森・長崎韓国・香港韓国での刺身用需要が根強い。韓国の輸入規制は品目・時期によって変動するため最新情報を確認すること
シマアジ海面・魚類愛媛・大分・鹿児島米国・香港・欧州高級魚として評価が高いが輸出実績は少ない。Sushi市場への訴求余地がある先行者優位の品目
トラフグ海面・魚類長崎・大分・愛媛中国・韓国輸出先国がフグの輸入を禁止しているケースがある。国ごとに個別確認が必須。規制が最も複雑な品目のひとつ
クロマグロ(本まぐろ)海面・魚類長崎・青森・三重香港・米国・中国単価が最も高い養殖魚だが生産者が限られる。WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の漁獲枠管理対象のため仕入れ量に制限が出やすい
ギンザケ海面・魚類宮城・岩手米国・台湾「三陸サーモン」として需要拡大中。冷凍での輸出実績が増加しており、サーモン需要を取り込みやすい品目
スズキ海面・魚類三重・愛知・香川香港・台湾養殖量は少ないが白身魚として潜在需要がある。輸出向けの仕入れロット確保がやや難しい
カキ(マガキ)海面・貝類広島・宮城・岩手中国・フランス・香港・台湾GACC登録・EU向けはHACCP認定施設が必要。生食用と加熱用で要求される基準が異なるため仕入れ先の用途確認が必要
ホタテガイ海面・貝類北海道・青森米国・欧州・東南アジア(※中国は禁輸中)中国が2023年8月以降禁輸継続中。米国・欧州・東南アジアへの代替市場開拓が急務。新しい仕入れ先・輸出先の組み合わせを再構築する必要がある
アワビ類海面・貝類岩手・千葉・静岡・長崎中国・香港水産流通適正化法により「適法漁獲等証明書」の添付が義務化(2022年12月〜)。仕入れ先が証明書を発行できるか事前に確認すること
サザエ海面・貝類長崎・島根・静岡香港・台湾大規模養殖は少なく仕入れロットの確保が難しい。需要は存在するが供給安定性がネック
アサリ海面・貝類愛知・千葉・北海道台湾・韓国産地偽装問題で国産の信頼性が問われた背景がある。仕入れ先の産地証明・トレーサビリティの確認が特に重要
クルマエビ海面・甲殻類鹿児島・沖縄・愛知香港・中国・東南アジア冷凍加工品として輸出実績あり。国内流通量が多いため輸出向けのロット確保は事前調整が必要
ノリ(海苔)海面・海藻類佐賀・兵庫・福岡韓国・米国・中国・東南アジア乾燥・味付けのりなど加工品として輸出が主流。農薬残留基準を輸出先国ごとに確認。規制がシンプルで仕入れ輸出の入り口として適している
ワカメ海面・海藻類宮城・岩手・徳島韓国・中国・欧州乾燥・塩蔵で輸出。韓国は国産との価格競合が激しいため、仕入れコストと販売価格の差益計算が重要
コンブ類海面・海藻類北海道(日高・利尻・道東)中国・韓国・欧州出汁素材・昆布茶・乾物として評価が高い。乾燥コンブ・塩蔵コンブで輸出。欧州では健康食品素材として注目されている
モズク海面・海藻類沖縄・三重東南アジア・台湾健康食品素材(フコイダン)として東南アジアで需要拡大中。先行者優位が取りやすいが市場開拓が必要
ヒジキ海面・海藻類三重・長崎・千葉欧州・米国・東南アジア健康食品需要で欧州・米国への潜在チャンスあり。ヒ素含有量に関する規制が国によって異なるため輸出先国の基準を事前確認すること
テングサ(寒天原料)海面・海藻類静岡・三重・長崎東南アジア・欧州寒天・ゼリー原料として輸出実績あり。植物性ゲル化剤として欧米のビーガン市場でも需要がある
ナマコ海面・その他北海道・青森・岩手中国・香港水産流通適正化法により「適法漁獲等証明書」の添付が義務化(2022年12月〜)。中国での需要は根強いが、仕入れ先の証明書発行体制を確認すること
ウニ海面・その他北海道・青森・岩手・長崎米国・韓国・香港高級食材として国際需要が高い。冷凍・塩水ウニで輸出。鮮度管理と冷凍技術が仕入れ先選定の重要条件になる
ホヤ海面・その他宮城・岩手韓国韓国向けに一定の需要あり。独特の風味から市場が限られる。韓国以外での市場開拓はまだ開発余地がある
ウナギ内水面鹿児島・愛知・静岡中国・台湾・香港2025年12月から「適法漁獲等証明書」が必要(稚魚ウナギが対象)。仕入れ先が証明書を発行できるか確認を。蒲焼で輸出実績あり
ニジマス(レインボートラウト)内水面宮城・岩手・長野米国・台湾サーモン代替品として評価されている。冷凍での輸出実績が増加中。「三陸サーモン」ブランドとの連携で訴求できる
ヤマメ・サクラマス内水面宮崎・岩手・岐阜ほぼ国内消費輸出実績はほぼなし。高級日本料理食材として訴求できれば可能性はある。海外での認知度向上が課題
アユ内水面大分・滋賀・熊本ほぼ国内消費輸出実績はほぼなし。海外の日本食レストラン向け食材としての供給用に可能性あり。冷凍加工での輸出が現実的
コイ(食用)内水面茨城・新潟・愛知ほぼ国内消費(錦鯉は欧州・米国に輸出あり)食用コイの輸出実績は少ない。観賞魚の錦鯉は欧州・米国へ輸出実績があるが食品輸出とは手続きが異なる
チョウザメ(キャビア)内水面宮崎・兵庫・石川欧州・米国・中東キャビアとして高付加価値での輸出可能性あり。CITES(ワシントン条約)の管理対象のため輸出許可申請が必要
ナマズ内水面埼玉・茨城ほぼ国内消費東南アジアでナマズ需要はあるが、日本産養殖ナマズの輸出実績は極めて少ない。将来的な可能性として調査対象になりうる

※評価は2026年5月時点の公開情報をもとにした輸出者目線での判断です。規制・需要は変動するため、最新情報はジェトロ・農林水産省の公式サイトでご確認ください。

品目を選ぶ3つの視点と仕入れ輸出の基本フロー

視点① 輸出先の需要を先に確認する

「この品目を売りたい」より「どの国のどんな買い手が何を求めているか」を先に確認する方が商談につながりやすい。ブリのSushi需要は米国・欧州で急拡大しており、マダイは香港・台湾で根強い。一方、モズクやヒジキは欧州・東南アジアの健康食品市場でまだ認知が低く、先行者優位が取れる可能性がある。JETROや現地バイヤーへの問い合わせで需要を先に確認するのが起点になる。

視点② 仕入れ先の「認定」と「証明書発行能力」を確認する

輸出者として最も重要な確認事項は、仕入れ先の施設がHACCP認定を取得しているか、そして品目によって必要な証明書(適法漁獲等証明書・衛生証明書など)を発行できるかだ。仕入れた後で「この施設は認定を持っていなかった」と気づいては手遅れになる。仕入れ先の選定段階でこの確認を必ず行う。

視点③ 輸出手続きの共通フロー(仕入れ輸出者向け)

仕入れ先・品目・輸出先が決まったら、以下のフローで進める。

  • Step 1:仕入れ先の施設認定を確認する:HACCP認定施設・GACC登録施設など、相手国が求める認定を仕入れ先が取得しているか確認する。米国・EU・中国向けは特に必須の手続きだ
  • Step 2:品目別の特別書類を確認する:アワビ・ナマコ・ウナギは水産流通適正化法に基づく「適法漁獲等証明書」が必要。チョウザメはCITES(ワシントン条約)の輸出許可証が必要。これらは仕入れ先が対応しているかを確認する
  • Step 3:衛生証明書を取得する:農林水産省・水産庁が発行する衛生証明書(Health Certificate)を取得する。2026年3月から「JEXS(輸出証明書発給システム)」でオンライン申請が可能。地方農政局が申請窓口だ
  • Step 4:米国向けはFDAトレーサビリティ新規則に対応する:2026年1月20日から、米国FDAの食品安全近代化法(FSMA)に基づくトレーサビリティ新規則が施行されている。魚類・甲殻類・二枚貝が対象で、供給チェーン全体での記録管理が求められる

輸出者が知っておくべきリスクと落とし穴

ホタテの中国禁輸は現在も継続中

2023年8月以降、中国による日本産水産物の輸入禁止措置が続いている。ホタテを主力としていた輸出事業者は代替市場の開拓を迫られており、米国・EU・東南アジアへのルートシフトが進んでいる。新たな輸出先では施設認定・書類の取り直しが必要なケースもある。単一国への依存は輸出者にとって最大のリスクになる。

「輸出できない国に輸出してしまう」というミス

フグは輸出先国によっては輸入自体を禁止している。ヒジキは一部の国でヒ素含有量の基準値を超えるとして輸入禁止・制限を設けている国がある。「日本国内で売れているから海外でも大丈夫」という思い込みが最もコストがかかるミスだ。品目ごとに輸出先国の規制を事前確認してから仕入れを始める順番を守ること。

証明書の有効期限と輸送スケジュールのズレ

衛生証明書・適法漁獲等証明書には有効期限がある。輸送中に期限が切れると通関で止まり損失が発生する。証明書の発行タイミングと船積み・空輸のスケジュールを合わせて管理する仕組みが必要だ。特に生鮮・冷蔵品目では輸送日数と有効期限の計算をあらかじめ行っておく。

明日から動ける3つのアクション

  • 上の一覧から気になる品目を3つ選び、JETROの「国・地域別輸出規制情報」で輸出先国の最新規制を確認する
  • 候補にした品目の仕入れ先(産地・仲卸)に連絡し、HACCP認定の有無と証明書の発行体制を確認する
  • アワビ・ウナギ・ナマコを扱う場合は、水産庁のサイトで適法漁獲等証明書の申請フローを確認する

まとめ

日本の養殖水産物は31品目あり、品目ごとに主産地・輸出先・規制・必要書類がすべて異なる。輸出者(仕入れ輸出)の立場では、まず「どの国のどんな需要に応えるか」を決めてから品目と仕入れ先を選ぶ順番が効率的だ。

一覧の中には輸出実績がほとんどない品目もあるが、それは「誰もまだ開拓していない」ということでもある。モズク・ヒジキ・チョウザメのように、国際的な健康食品需要や高級食材需要に合致する品目は、先行者として市場を築ける可能性がある。規制が複雑な品目(フグ・アワビ・ウナギ)は、専門家や輸出代行業者と連携しながら進めることを勧める。

品目の選定から仕入れ先の確認、輸出書類の整理まで、有限会社あさひ通商ではお気軽にご相談を受け付けています。お問い合わせはこちらからどうぞ。

出典・参考資料

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