輸出の基礎知識

食品・和牛を海外に売る最初の5ステップ|初心者が迷わない輸出の始め方ガイド

「食品を海外に売ってみたい」——そう思い立ったとき、最初にぶつかる壁が「いったい何から手をつければいいの?」という疑問ではないでしょうか。

たとえば、海外の知人から「あなたの地元の和牛、海外でも売れそう!」と声をかけられた。あるいは、SNSで日本食ブームのニュースを見て「これはビジネスになるかも」と感じた。でもいざ調べてみると、専門用語だらけで途方に暮れてしまう……そんな経験をお持ちの方は多いはずです。

この記事では、食品・和牛の輸出をこれから始めたい初心者の方に向けて、「最初にやるべき5つのステップ」を順番に解説します。難しい制度も身近な言葉で説明しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

STEP 1:まず「仕向国(輸出先の国)の輸入規制」を調べる

輸出を始めるうえで、最初にやるべきことは「どの国に売るか」を決め、その国の輸入規制を調べることです。「需要があれば売れるはず」と思いがちですが、実際には「その国が輸入を認めていない」ケースが食品輸出には非常に多くあります。

たとえるなら、パスポートを持たずに海外旅行に行こうとするようなもの。必要な条件を揃えていなければ、どれだけ良い商品でも国境を越えることができません。

なぜ規制調査が最優先なのか

食品の輸入規制は国によって大きく異なります。中国は加工食品・水産物・乳製品の輸入に独自の施設登録制度を設けており、輸出元施設が中国当局に登録・認定されている必要があります。香港は比較的規制が緩やかで、日本食品が流通しやすい市場のひとつです。米国ではFDA(食品医薬品局)への事前施設登録が必要で、特定のラベル要件を満たすことも求められます。

農林水産省や独立行政法人JETRO(日本貿易振興機構)は、国別の規制情報を無料で公開しています。まずはJETROの農林水産物・食品輸出支援ポータルで仕向国の規制情報を確認することを強くお勧めします。

和牛を輸出する場合の特別なルール

和牛(牛肉)を輸出する場合は、さらに厳格なルールがあります。輸出できる施設(と畜場・加工施設)は農林水産省に「認定施設」として登録されている必要があり、すべての施設から輸出できるわけではありません。また、国によっては月齢証明(牛の年齢を証明する書類)が求められることもあります。

輸出を検討する段階で、まず次の3点を確認しましょう。

  • 仕向国でその商品の輸入が認められているか(禁輸・制限品目でないか)
  • 輸出元施設・製造施設に認定要件があるか
  • 添加物・農薬残留基準が日本と異なるか

※最新の規制情報は必ず農林水産省・JETROの公式サイトでご確認ください。

STEP 2:商品に「HSコード(関税分類番号)」を割り振る

輸出する商品と仕向国が決まったら、次に確認するのが「HSコード(Harmonized System Code)」です。HSコードとは、世界200以上の国・地域が共通で使用している「商品の分類番号」のことで、税関での申告、関税の計算、統計処理に使われます。

日常のたとえで言えば、HSコードは「商品のマイナンバー」のようなもの。この番号がなければ、税関で申告を受け付けてもらえません。

HSコードの仕組みを理解する

HSコードは6桁の数字で構成されており、大分類→中分類→小分類の順に細分化されています。日本では税関が定める「実行関税率表」で確認でき、国内分類では9桁まで詳細化されています。

食品の例をいくつか挙げると、醤油は「HS2103.10」、緑茶は「HS0902.10」、生鮮牛肉は「HS0201」に分類されます。同じ「食品」でも、加工の度合いや原材料によって番号が異なるため、正確な分類が必要です。

間違えると何が起きるか

誤ったHSコードで申告すると、関税の誤課税・通関遅延・最悪の場合は貨物の差し止めというリスクがあります。確信が持てない場合は、税関の「事前教示制度」輸出前に分類の確認を依頼できる制度)を活用するか、通関士(国家資格者)・フォワーダーに相談することをお勧めします。

確認の手順は以下の通りです。

  • 日本税関のウェブサイトで「実行関税率表」を検索する
  • JETROの「国別・品目別関税情報」で仕向国の関税率も同時確認する
  • 判断が難しい場合は最寄りの税関相談窓口または通関士に依頼する

STEP 3:貿易書類(インボイス・パッキングリスト)を準備する

商品・仕向国・HSコードが決まったら、輸出に必要な「貿易書類」を準備します。代表的な書類はインボイス(Commercial Invoice:商業送り状)パッキングリスト(Packing List:梱包明細書)の2種類です。

インボイスとは何か

インボイスとは、商品の売買内容を証明する「取引の証明書」です。国内でいえば「請求書兼納品書」に近いイメージですが、輸出では関税計算の根拠書類にもなります。基本的に英語で作成し、以下の項目を記載します。

  • 輸出者(売り手)・輸入者(買い手)の会社名・住所
  • 商品名・数量・単価・合計金額・通貨(USDなど)
  • 取引条件(インコタームズ):CIF、FOB、EXWなど
  • HSコード・原産国(Made in Japan)

インコタームズとは、「送料・保険・リスクをどちらが負担するか」を定めた国際的なルールで、貿易取引では必ず明記します。初心者の方にはまず「FOB(本船渡し条件:日本の港で輸出者のリスクが終わる)」や「CIF(運賃・保険込み条件:仕向港までの費用込み)」を覚えておくと実用的です。

パッキングリストとは何か

パッキングリストは「貨物の中身と梱包状態を示す書類」です。ケース数、グロス重量(包装込みの重量)、ネット重量(商品のみの重量)、梱包形態(箱・袋など)を記載します。税関検査時に貨物の中身と一致しているかを確認するために使われます。

重要なのは、インボイスとパッキングリストの内容(品名・数量)が必ず一致していることです。不一致があると通関遅延や差し戻しの原因になります。

また、食品の場合は成分表示や賞味期限の記載方法が仕向国の規制に合っているかも確認が必要です。中国向けでは中国語ラベルの貼付が求められる場合があります。

STEP 4:衛生証明書・原産地証明書を取得する

食品の輸出には、インボイスやパッキングリストに加えて、相手国が要求する「証明書類」が必要な場合がほとんどです。代表的なものが衛生証明書原産地証明書です。

衛生証明書とは

衛生証明書(Health Certificate / Sanitary Certificate)とは、「この食品は輸出元国の衛生基準を満たしている」ことを公的機関が証明する書類です。農林水産省または動物検疫所(肉類の場合)が発行します。水産物は水産庁が関与し、和牛(牛肉)は農林水産省の動物検疫所が発行します。

申請には農林水産省のオンライン申請システムを利用するケースが多く、「GビズIDプライムアカウント」法人向けのオンライン行政手続きID)の事前取得が必要です。まだ取得していない方は早めに手続きを進めておきましょう。

衛生証明書は発行まで2〜4週間かかる場合があるため、輸出スケジュールが決まったら早めに申請を開始することが重要です。

原産地証明書とは

原産地証明書(Certificate of Origin)とは、「この商品は日本で製造・生産されたもの」であることを証明する書類で、商工会議所が発行します。オンライン申請も可能で、通常3〜5営業日で発行されます。

原産地証明書が重要な理由の一つは、EPA(経済連携協定)の特恵関税の適用です。日本はアジア・欧州・北米など多くの国とEPAを締結しており、この証明書を提出することで仕向国での関税が大幅に下がる場合があります。たとえばアジア向けではRCEP(地域的な包括的経済連携協定)に基づく特恵関税が適用されます。

証明書の種類発行機関目安日数
衛生証明書農林水産省・動物検疫所(肉類)・水産庁(水産物)2〜4週間
原産地証明書商工会議所3〜5営業日
漁獲証明書(水産物)水産庁・関係機関品目による

※最新の申請方法・必要書類は農林水産省・商工会議所の公式サイトでご確認ください。

STEP 5:通関手続きと物流(フォワーダーへの依頼)を手配する

書類がすべて揃ったら、いよいよ商品を海外に送り出します。ここで登場するのが「通関」と「フォワーダー」です。

通関とは「国境での荷物チェック」

通関とは、税関が「輸出・輸入してもよい商品か」を確認する手続きです。日本から商品を出す「輸出通関」と、相手国で商品を受け取る「輸入通関」の2段階があります。輸出通関ではインボイス・パッキングリスト・HSコードなどの書類が税関に提出され、問題がなければ「輸出許可」が下りて船や飛行機に積み込まれます。

フォワーダーとは何か

フォワーダー(貨物利用運送事業者)とは、輸出業者に代わって「通関手続き・船会社や航空会社の手配・港での搬入手続き」をまとめて担当してくれる専門業者です。通関士(国家資格者)と連携して手続きを進めるため、書類の不備チェックも含めてサポートしてもらえます。

初めての輸出で「通関や物流の手続きをどうすればいい?」という疑問は、信頼できるフォワーダーに相談することで一気に解決することが多いです。

輸送手段の選び方

輸送方法所要日数の目安コスト向いている商品
航空便1〜5日高め鮮魚・和牛・高単価品
船便(コンテナ)1〜4週間安め加工食品・缶詰・乾物
クーリエ(DHL等)2〜5日高め少量・サンプル品

生鮮食品や和牛は温度管理が必要なため、冷蔵・冷凍コンテナ(リーファーコンテナ)や保冷航空輸送を使います。フォワーダーへ依頼する際は温度管理の要件(何℃以下で輸送が必要か)を事前に明確に伝えることが品質維持のポイントです。

代金回収の方法も忘れずに

輸出時に見落としがちなのが「代金をどうやって受け取るか」です。国際取引ではT/T送金(電信送金)L/C(信用状)前払いなど複数の決済方法があります。新規取引先との取引では代金回収リスクも考慮し、最初は前払いや信用状を活用することも検討してみてください。

まとめ:5ステップを振り返る

今回ご紹介した5つのステップをまとめます。

  • STEP 1:仕向国の輸入規制を調べる(JETRO・農林水産省を活用)
  • STEP 2:HSコード(関税分類番号)を確認する
  • STEP 3:インボイス・パッキングリストを英語で準備する
  • STEP 4:衛生証明書・原産地証明書を余裕を持って申請する
  • STEP 5:フォワーダーに通関・物流を依頼する

食品・和牛の輸出の最大のハードルは「書類の多さ」と「各国規制への対応」です。しかし正しい順番で進めれば、初心者でも一つひとつクリアしていくことができます。なお、2025年の農林水産物・食品の輸出額は前年比12.8%増の1兆7,005億円(農林水産省発表)となり、日本食品へのグローバル需要は着実に拡大しています。今がその流れに乗る好機です。

「どのステップから始めればいいかわからない」「書類の準備や仕向国の調査をサポートしてほしい」とお感じの方は、輸出業務代行を専門とする有限会社あさひ通商一度ご相談ください。仕向国調査から書類申請、通関サポートまで、初回の輸出を一緒に進めるお手伝いをしております。

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