貿易書類・申請代行

輸出の現場で必ず出てくる用語30選。FOB・B/L・HSコード・フォワーダーをわかりやすく一気に解説【2026年版】

「インボイスを送ってほしいって言われたんですが、何を書けばいいですか?」

宮城県内の水産加工会社でカキの輸出担当を任されたAさん(43歳・女性)は、香港のバイヤーからのメールを読みながら困惑していた。インボイス、パッキングリスト、B/L、フォワーダーへの連絡……。取引が始まってから次々と聞き慣れない言葉が飛び込んでくる。「英語の略語が多くて、何が何なのかまったくわからない」というのが正直なところだった。

輸出の実務では日常業務とは異なる専門用語が数多く登場する。最初の一歩でつまずかないために、この記事では輸出の現場で頻繁に使われる用語30語を6つの場面に分けて解説する。全部を一度に暗記する必要はない。まず「どの場面でどの言葉が出るか」の全体像を把握するだけで、フォワーダーとの打ち合わせやバイヤーとのやりとりが格段にスムーズになる。

輸出で出てくる30語を場面別に整理する

30語は以下の6つの場面に分類できる。用語を覚える前に「どこで使う言葉か」を把握しておくと記憶に定着しやすい。

  • 登場人物:シッパー・コンサイニー・フォワーダー・通関業者(4語)
  • 取引条件(インコタームズ):インコタームズ・EXW・FOB・CIF・DAP(5語)
  • 主要書類:インボイス・パッキングリスト・B/L・サレンダーB/L・AWB・原産地証明書・衛生証明書(7語)
  • 通関・HSコード:HSコード・輸出申告・NACCS・輸出者番号(4語)
  • 物流・輸送:FCL・LCL・リーファーコンテナ・CFS・ETD/ETA・フレート(6語)
  • 決済とリスク管理:T/T・L/C・D/P・フォースマジュール(4語)

※本記事の情報は2026年6月時点のものです。制度・規制の最新状況は各公式機関でご確認ください。

出典:農林水産省・財務省税関・ジェトロの情報をもとに作成

登場人物の4語を理解する

01 シッパー(Shipper) 輸出者・荷送人のこと。B/Lやインボイスなどすべての書類に「Shipper」として記載される。Aさんが勤める水産加工会社がシッパーにあたる。

02 コンサイニー(Consignee) 輸入者・荷受人のこと。B/Lにコンサイニー名と住所が記載され、現地での通関はこの情報を基に進む。Aさんのケースでは香港のバイヤーがコンサイニーにあたる。情報の誤りは現地での貨物引き取り不能に直結するため、事前確認が必須。

03 フォワーダー(Forwarder) 国際輸送を手配する物流専門業者。「乙仲(おつなか)」とも呼ばれる。自社では船や飛行機を持たず、船会社・航空会社を手配し、輸出通関・書類作成まで一括で代行することが多い。輸出が初めての事業者にとって最大の頼り手となる存在で、まず1社を選ぶことが輸出の第一歩になる。

04 通関業者(カスタムズブローカー) 輸出入の通関手続きを代行する専門業者。フォワーダーが通関業務を兼ねるケースも多い。食品輸出では植物検疫・動物検疫の手続きも連動するため、食品輸出の実績がある業者を選ぶことが重要。

取引条件「インコタームズ」の5語を理解する

インコタームズとは国際商業会議所(ICC)が定めた「貿易取引条件の国際標準ルール」。輸出者と輸入者の間で「費用と危険をどこまで輸出者が負担するか」を3文字のアルファベットで表す。現行の最新版は「インコタームズ2020」で全11条件。どの条件を選ぶかで輸出者の実務負担とリスクが大きく変わる。バイヤーとの最初の交渉で必ずテーマになる。

05 インコタームズ(Incoterms) 上記の通り、費用と危険負担の境界線を定める国際ルール全体を指す名称。

06 EXW(工場渡し) 「Ex Works」の略。輸出者の工場・倉庫で商品を引き渡した時点で責任が終わる条件。輸送・通関・保険はすべて買主が負担する。輸出者の負担が最も軽い条件。

07 FOB(本船渡し) 「Free on Board」の略。輸出者が輸出通関を完了し、出発港の本船に積み込むまでの費用と危険を負担する条件。船積み完了の瞬間にリスクが買主へ移転する。日本の食品輸出でよく使われる条件の一つ。

08 CIF(運賃・保険料込み) 「Cost, Insurance and Freight」の略。輸出者が目的港までの海上運賃と貨物保険を負担する条件。ただし危険の移転はFOBと同様「本船積み込み時点」。費用負担と危険の移転タイミングがズレる点が初心者の誤解を招きやすい。

09 DAP(仕向地持込渡し) 「Delivered at Place」の略。輸出者が買主の指定する場所まで輸送費・保険を含め一切を負担する条件。輸出者の負担が最も重い条件の一つ。大口取引やバイヤーの要求が強い場合に使われる。

輸出に必要な7種類の書類を知る

書類の不備は通関停止や現地での貨物引き取り不能に直結する。7種類の書類の役割を正確に把握しておこう。

基本の3書類(インボイス・パッキングリスト・B/L)

10 インボイス(Commercial Invoice:商業送り状) 取引の基本書類。品名・数量・単価・金額・シッパーとコンサイニーの情報が記載される。税関への申告・代金請求・輸入通関など、あらゆる場面で参照される最重要書類。パッキングリストやB/Lと数字が一致していないと通関が止まる。

11 パッキングリスト(Packing List:梱包明細書) 箱・ケースごとの内容物・重量・容積が記載された書類。インボイスが「取引の概要」なら、パッキングリストは「梱包の詳細」にあたる。重量の単位(グロス重量・ネット重量)がインボイスと一致していないと通関で指摘される。

12 B/L(Bill of Lading:船荷証券) 海上輸送で発行される「貨物の引換券」。船会社またはフォワーダーが発行し、(1)貨物の受領証、(2)輸送契約の証明、(3)貨物の所有権を示す有価証券という3つの機能を持つ。輸入者はB/Lがなければ現地で貨物を受け取れない。

輸送形態・証明系の書類(サレンダーB/L・AWB・原産地証明書・衛生証明書)

13 サレンダーB/L(Surrendered B/L) 輸出地でシッパーがB/Lの権利を放棄し、輸入者がオリジナルB/Lなしで貨物を引き取れるようにした形式。近距離・短期輸送でよく使われる。信頼関係のない初取引では代金回収前に貨物を持ち去られるリスクがあるため注意が必要。

14 AWB(Air Waybill:航空貨物運送状) 航空輸送で使われる輸送書類。B/Lと異なり有価証券としての機能はない。冷蔵の水産物や和牛サンプルを急ぎで空輸する際に発行される。到着地ですぐ貨物を引き取れる点がB/Lとの大きな違い。

15 原産地証明書(Certificate of Origin:C/O) 商品がどの国で生産・製造されたかを証明する書類。EPA(経済連携協定)を活用して輸入関税を下げる際に必要となる。日本では商工会議所または税関(特定原産地証明書)が発行する。和牛・水産物でもEPAが締結されている仕向国向けなら取得を必ず検討したい。

16 衛生証明書(Health Certificate) 食品の衛生状態を証明する書類。多くの国が食品輸入に際して輸出国政府機関発行の証明書を要求する。水産物は水産庁、食肉・和牛は農林水産省や都道府県が発行窓口となる。発行に時間がかかる場合があるため、船積みスケジュールから逆算して早めに動き始めることが重要。

通関・HSコードの基礎知識(4語)

日本から貨物を出すには税関への申告が必要になる。その中心になるのがHSコードと輸出申告の仕組みだ。

HSコードと輸出申告

17 HSコード(HS番号・関税分類番号) 「Harmonized System」の略で、世界206カ国・地域が共通で使う関税分類番号。6桁の数字で商品を分類し、日本では9桁で管理される。輸出申告時に必ず申告が必要で、番号を間違えると関税率が変わったり通関が止まったりする。税関が公開する「輸出統計品目表(2026年1月版)」で調べることができる。

18 輸出申告 貨物を日本から輸出する際に税関へ行う申告手続き。HSコード・品名・数量・金額などを記載した輸出申告書を税関に提出し、輸出許可書を受けてから船積みができる。通常はフォワーダーや通関業者が代行する。食品輸出では植物検疫・動物検疫の証明書も合わせて必要になる。

NACCSと輸出者番号

19 NACCS(ナックス) 「Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System(輸出入・港湾関連情報処理センター)」の略称。日本の輸出入手続きを電子化したシステムで、税関・港湾・船会社・フォワーダーが接続している。輸出申告もNACCSを通じてオンラインで完結する。

20 輸出者番号 輸出申告時に輸出者を識別するための番号。日本では法人番号(マイナンバー法人版)が使われる。フォワーダーに初めて依頼する際「輸出者番号を教えてください」と聞かれることがあるため、事前に確認しておくとスムーズ。

物流・輸送で使う6語

貨物をどう運ぶかで費用・納期・品質管理が大きく変わる。物流の基本用語を押さえておこう。

コンテナの種類と物流施設(FCL・LCL・リーファーコンテナ・CFS)

21 FCL(Full Container Load:フルコンテナ) 1社がコンテナ1本をまるごと使う輸送形態。他の荷主の貨物と混ざらないため、衛生管理・温度管理が重要な食品輸出に適している。コンテナを満載できる量がない場合はコスト高になる。

22 LCL(Less than Container Load:混載) 複数の荷主の貨物を1つのコンテナにまとめて輸送する形態。少量の貨物でも輸送できるメリットがある反面、CFSでの仕分け作業が入るためFCLより納期がかかる。輸出初期で量が少ないうちはLCLから始め、軌道に乗ったらFCLへ切り替えるケースが多い。

23 リーファーコンテナ(冷凍・冷蔵コンテナ) 温度管理機能を備えた専用コンテナ。「リーファー(Reefer)」とも呼ぶ。冷凍水産物や冷蔵和牛の輸出には必須で、冷凍品は-18℃以下、チルド品は0〜5℃程度に設定する。通常のドライコンテナよりコストが高くなるが、食品の品質維持のためには欠かせない。

24 CFS(Container Freight Station:コンテナフレートステーション) LCL貨物の仕分け・積み付けを行う港湾近くの施設。複数の荷主から集まった貨物をここで1つのコンテナに詰め合わせる(バンニング)。LCL輸送ではまずCFSに持ち込まれてから船に積まれるため、FCLより手続きに時間がかかる。

輸送スケジュールと運賃(ETD/ETA・フレート)

25 ETD・ETA ETD(Estimated Time of Departure)は「出発予定日」、ETA(Estimated Time of Arrival)は「到着予定日」のこと。フォワーダーや船会社からの連絡でよく登場する。「出発6月10日、到着6月17日」などバイヤーへの納期連絡に必ず使う。

26 フレート(Freight) 海上または航空の輸送運賃のこと。コンテナ1本あたり、または重量・容積あたりで計算される。季節・需給・航路の状況によって変動が大きく、中東情勢などでルートが変わると急騰することもある。フォワーダーに見積もりを依頼する際は「海上運賃」「航空運賃」と区別して問い合わせる。

決済方法・リスク管理と、知ってるつもりの落とし穴

輸出の最後のハードルは代金の回収だ。決済方法を誤ると貨物を渡したのに代金が入らないリスクが生じる。

4つの決済用語とリスク管理

27 T/T(Telegraphic Transfer:電信送金) 銀行間の電信送金による決済方法。最もシンプルで一般的な国際決済手段。前払い(T/T in advance)で全額を先に受け取るか、後払い(T/T after shipment)で船積み後に受け取るかで輸出者のリスクが大きく変わる。初取引では前払いまたは一部前払いを求めることが多い。

28 L/C(Letter of Credit:信用状) バイヤーの銀行が「書類の条件を満たせば代金を払う」と保証する仕組み。輸出者にとってほぼ確実に代金を回収できる安全な決済方法だが、必要書類が多く手続きが複雑で手数料もかかる。大口取引・初取引の相手への輸出で使われることが多い。

29 D/P(Documents against Payment:支払渡し) 輸出者の銀行を通じてバイヤー側の銀行に書類を送り、バイヤーが代金を支払ったときだけB/L等の書類を渡す決済方法。T/T後払いよりも安全性が高い。類似の「D/A(引受渡し)」は支払い約束だけで書類を渡す形式なので、D/Pより輸出者にリスクがある。

30 フォースマジュール(Force Majeure:不可抗力条項) 戦争・地震・感染症拡大など当事者のコントロールが及ばない事象が発生した際に、契約上の義務(納期・支払い)を免除できるとする条項。輸出契約書に必ず盛り込んでおきたい。2026年現在、中東情勢の変化による輸送停止がこの条項に該当するかどうかが実務で問われるケースが増えている。

知ってるつもりが招く3つの落とし穴

落とし穴①:CIFで「危険の移転」を勘違いする CIFは「目的港まで運賃と保険を輸出者が負担する」条件だが、危険の移転はFOBと同じく「本船積み込み時点」。「CIFで送ったのに輸送中に損傷した場合、どちらが保険を請求するか」でトラブルになるケースがある。事前にバイヤーと書面で確認しておくこと。

落とし穴②:HSコードを自己判断で誤申告する HSコードが1桁違うだけで関税率が大きく変わることがある。「調製品」と「生鮮品」の分類は判断が難しいケースが多く、誤申告は税関での是正・追徴課税の原因になる。判断に迷う場合は税関の「事前教示制度」を活用して事前確認しよう。

落とし穴③:サレンダーB/Lを初取引の相手に使う サレンダーB/Lは輸出地でシッパーが権利を放棄するため、輸入者がオリジナルB/Lなしに貨物を引き取れる。信頼関係がない初取引でこれを使うと、代金回収前に貨物を持ち去られるリスクがある。初取引ではオリジナルB/Lによる決済を基本とすること。

まとめ:30語を押さえれば輸出の会話が変わる

明日から動ける3つのアクション

  • 輸出したい品目のHSコードを税関の「輸出統計品目表(2026年1月版)」で調べ、フォワーダーに確認する
  • バイヤーとのやりとりで「どのインコタームズ条件での取引を希望するか」を書面で確認する
  • フォワーダーを1社以上選定し、品目・仕向国・輸送形態(FCL/LCL/航空便)を伝えてフレートの見積もりを依頼する

押さえておきたい3つのポイント

輸出の現場で飛び交う専門用語は多いが、今回の30語を押さえておけば、フォワーダーとの打ち合わせ・インボイスの作成・バイヤーとの条件交渉で必要な会話の大半はカバーできる。

特に重要なのは次の3点。(1)インコタームズは「費用と危険をどこまで自分が負担するか」を決める最初の関門。(2)B/LとHSコードは通関のカギで、ミスがあると船積みが止まる。(3)決済方法は取引金額・信頼度に応じてT/T前払い・L/C・D/Pを使い分ける。

書類の準備やフォワーダーの選定でつまずきそうな場合は、専門家への早期相談が近道です。あさひ通商では輸出業務の代行・書類サポートのご相談を承っています。

出典・参考資料

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