シドニーのバイヤーから引き合いが来た。でも、オーストラリアへの水産輸出で何が必要なのかわからない。
- 前年比19%増のオーストラリア水産市場の今がわかる
- 施設認定・衛生証明書・JAEPA申請の代行フローがわかる
- 初回輸出でよくある3つのミスを事前に防げる
前年比19%増。今のオーストラリア水産市場で何が起きているか
農林水産省の2025年輸出実績(2026年2月公表)によると、日本からオーストラリアへの農林水産物・食品輸出額は382億円(前年比16.6%増)。そのうち水産物は前年比19.0%増を記録した。市場が動いている背景には、3つの変化がある。
寿司・刺身の日常食化と日本産食材サポーター店の急増
オーストラリアでは寿司がすでに「気軽に食べられるシーフード」として定着している。日本食は特別な外食から日常の選択肢へと広がりつつある。ジェトロが認定する「日本産食材サポーター店」は、オーストラリアで2025年12月時点で1,688店に達した。大洋州全体では約2,800店で、前年比約1割増となっている(出典:ジェトロ ビジネス短信 2025年12月)。
新シドニーフィッシュマーケット開場がもたらす変化
2026年1月19日、シドニー中心部近くのブラックワットル湾に新シドニーフィッシュマーケットが開場した。温度管理された競り場・活魚水槽・輸出認定施設が整備され、水産物の流通インフラが大幅に強化されている(出典:ジェトロ ビジネス短信 2026年2月)。
JAEPAによる農水産品の関税即時撤廃
日豪EPA(JAEPA)は2015年1月の発効と同時に、オーストラリア側の農水産品の関税を即時撤廃している。輸出者が自ら作成する「自己申告制度」も導入されており、商工会議所への証明書申請を省くことができる(出典:財務省関税局)。
※輸出実績・規制情報は変更される場合があります。農林水産省・ジェトロ公式ページで最新情報をご確認ください。
代行に任せる3つの理由
鹿児島県大隅半島を拠点とする食品商社の代表Aさん(従業員5名)は、地元養殖場から鹿児島産カンパチを仕入れ、国内の飲食店・鮮魚店へ卸している。鹿児島はカンパチ養殖の生産量で全国1位、国内シェアは約53%を占める(出典:各都道府県別水産物生産統計)。2026年春、シドニーの刺身専門業者から「ブランドカンパチを試しに輸出してほしい」と連絡が来た。Aさんには何から動けばいいでしょうか。
オーストラリア向け水産物輸出には、他国向けにはない「オーストラリア固有の手続き」が2つある。施設認定と衛生証明書だ。この2つが輸出業務代行を使う最大の理由になる。
理由①:施設認定という「一度だけの壁」を早く越える
オーストラリアに水産食品を輸出する場合、最終加工または保管を行う施設が「オーストラリア向け輸出適合施設」として認定されている必要がある。認定機関は「一般財団法人 日本食品検査(JFFIC)」だ。
認定申請に必要な書類は以下のとおり。
- 施設認定申請書(所定様式)
- 施設の平面図・製造フロー図
- HACCP(食品安全管理の国際基準)計画書または衛生管理計画
- 官能検査等実施記録
- 原材料・製品の仕様書 など

申請書類に不備があれば差し戻しになり、追加で1〜2ヶ月の遅延が生じることもある。初めて申請する事業者にとって、書類の記載基準や審査の流れは国内の食品営業許可とはまったく別物だ。
輸出業務代行に依頼すると、申請書類の作成・確認・JFFIC窓口との調整を代行会社が担う。施設認定は「一度取れれば継続して使える」ため、最初の申請を確実に通すことが重要だ。Aさんの場合、まず仕入れ先の加工施設がJFFIC認定を取得済みかどうかを確認するところから始まる。認定済みなら施設認定の手間は不要。未取得なら、代行会社が仕入れ先と協力しながら申請を進める形になる。
理由②:輸出のたびに必要な「衛生証明書」を定型化できる
施設認定はいわば「入場許可証」。これとは別に、輸出1件ごとに「衛生証明書(Health Certificate)」の取得が必要になる。
衛生証明書とは、JFFICが発行する書類で、「この製品はオーストラリアの輸入基準を満たしている」ことを日本の公的機関が証明するもの。オーストラリアの農業・水資源・環境省(DAFF)が輸入時に確認する。手順は次のとおりだ。
- 対象ロットの内容・製造記録を確認する
- JFFICに衛生証明書の発行を申請する
- 検査・確認を受ける
- 発行された衛生証明書を輸出書類に添付する
ポイントは「輸出1件ごとに申請が必要」という点だ。月に3回出荷すれば3回、年間24件なら24回の手配が発生する。輸出量が増えるほど、この書類管理が担当者の負担になっていく。輸出業務代行に任せると、この定期的な申請業務が定型化される。書類の取りまとめとスケジュール管理を代行が担うため、Aさん自身は仕入れ・バイヤー対応・品質管理に集中できる。
理由③:JAEPA自己申告書と輸出通関を一括処理できる
JAEPAの恩恵を受けるには、「この商品は日本で生産・加工された」ことを証明する原産地証明が必要だ。オーストラリア向けには2つの方法がある。
- 第一種特定原産地証明書:日本商工会議所が発行。第三者機関による証明なので信頼性が高い。
- 自己申告書:輸出者・生産者が自ら作成。商工会議所への申請が不要なため、時間とコストを削減できる(財務省関税局「自己申告制度利用の手引き」参照)。
鹿児島産カンパチのような養殖魚は「完全生産品(日本の海域・養殖施設で育てた魚)」に該当するため、原産地基準の確認はシンプルだ。ただし、自己申告書の記載ミス(HSコード(関税分類番号)の誤りや申告日の抜け)があれば、オーストラリア側で通常関税が適用されることがある。輸出業務代行では、原産地証明の方法選択・自己申告書の作成・インボイス(Invoice)・パッキングリスト(Packing List)・B/L(船荷証券)との整合性確認までを一括で処理する。書類間の不整合が通関遅延の最大原因になりやすく、ここを代行に任せることで初回輸出のリスクが大幅に下がる。
やってはいけない3つのミス
実際にオーストラリア向け初回輸出で止まるケースのほとんどは、この3パターンだ。
NG①施設認定の見落とし
国内向けの食品製造施設がオーストラリア輸出施設として当然に認定されていると思い込み、出荷直前に未認定と発覚する。申請から認定まで通常1〜3ヶ月かかるため、3日前に気づいても間に合わない。輸出代行に依頼する前に、まず仕入れ先施設の認定状況を確認することが必須だ。
NG②衛生証明書のロット不一致
証明書は対象ロット単位で発行されるため、急きょ追加ロットを入れた場合は再申請が必要だ。「前回の証明書を使い回せる」という思い込みが通関止めにつながる。出荷内容が変わったら、証明書も必ず取り直す。
NG③JAEPA自己申告書の省略または記載ミス
「手間がかかるから後でいい」と省略すると通常税率が適用される。カンパチは原産地基準がシンプルな品目だが、自己申告書の添付自体を忘れると関税ゼロの恩恵が受けられない。記載内容はインボイスのHSコードと必ず一致させること。
今日から動ける3つのアクション
- 仕入れ先の加工施設がJFFIC認定を取得しているか確認する(JFFIC公式サイト「対オーストラリア輸出水産食品」で確認可能)
- オーストラリアへの輸出実績を持つ輸出業務代行に問い合わせる(初回費用感・スケジュール感を聞くだけでOK)
- JAEPAの自己申告制度の概要を財務省関税局「自己申告制度利用の手引き」で確認する
まとめ
- 日本からオーストラリアへの水産物輸出は前年比19%増。新シドニーフィッシュマーケット開場・サポーター店1,688店・JAEPA関税ゼロで追い風が揃っている。
- 代行を使う3つの理由は、施設認定申請の代行・衛生証明書の定型化・JAEPA自己申告書と通関の一括処理だ。
- まず仕入れ先施設のJFFIC認定状況を確認することがオーストラリア向け輸出の最初の一歩になる。
オーストラリア向け水産輸出のご相談は、有限会社あさひ通商のお問い合わせページからお気軽にどうぞ。