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インドへの水産物輸出、FSSAI登録なしでは始まらない現実と手順

2024年9月から、FSSAI(インド食品安全基準局)への施設登録のない日本の加工施設からは、水産物のインド向け輸出が一切できなくなりました。

  • インドへの水産物輸出で最初に必要な手続きと書類の全体像
  • FSSAI施設登録の申請フロー(農林水産省経由・個人直接申請は不可)
  • 関税30%・ラボ検査7〜12日など現場で詰まる落とし穴4つ

インドが「次の水産物輸出先」として注目されはじめた背景

14億人市場・経済成長・中間層拡大という3つの追い風

インドの人口は2024年時点で約14億3,800万人(農林水産省「インドの農林水産業概況」2025年10月更新)。年率6〜7%台のGDP成長が続き、都市部では中間層・富裕層が急速に拡大しています。

食の志向も変化しています。30〜40代のビジネスパーソン層を中心に、海外渡航経験や動画コンテンツの影響で「本格的な日本食を体験したい」というニーズが高まっています。

日本からインドへの農林水産物輸出額は2024年で約3,100万米ドル(農林水産省統計)。全体規模はまだ小さいものの、ジェトロは2024年3月に「インドへの水産物・水産加工品輸出実態調査」(90ページ)を公開し、新規有望市場として積極的に位置づけています。

日本食レストランはインド全土で5年間に1.7倍超に増加

インド国内の日本食レストラン数は、2021年の約300店から2023年には約410店に増加し、2024年には500店を超えると見られています(SoJapan社調べ)。

主要3都市はムンバイ・デリー・バンガロールで、そこからプネ・ハイデラバード・チェンナイへの拡大が続いています。寿司はその中でも最も認知度の高いカテゴリーです。

ただし「日本産の水産物」がインドに安定的に流通しているかというと、現状はそうではありません。ジェトロの実態調査でも「日本からの水産物輸入量は限定的」と明記されており、今から動き始めた事業者が先行者優位を取れる状況です。

出典:ジェトロ「インドへの水産物・水産加工品輸出実態調査」(2024年3月)をもとに作成

インドへの水産物輸出を考えたAさんのケース

宮城で冷凍カキ(牡蠣)の加工・輸出を手がける商社Aさん(従業員12名)は、インドの日本食レストランバイヤーからの引き合いをきっかけに、インド向け輸出を検討し始めました。

「品質には自信がある。書類を揃えれば出荷できると思っていた」。しかしインド側バイヤーから最初に聞かれたのは「御社の施設はFSSAI登録済みですか?」という質問でした。

FSSAIとは何か、どこに申請するのか、どれくらいかかるのか。Aさんはまず農林水産省への施設認定から動く必要があります。

インド向け水産物輸出の全手順(Step 1〜Step 6)

Step 1:農林水産省への施設認定とFSSAI施設登録(最重要・最初の壁)

インドは2024年9月1日から、魚・魚介類を輸出する海外施設に対してFSSAI(インド食品安全基準局)への施設登録を義務化しました。この登録がないと、インドの税関で通関が全面ブロックされます。

日本側の申請フローは以下の通りです。

  • まず農林水産省に「インド向け輸出水産食品取扱要綱」に基づく施設認定を申請する
  • 認定を受けた農林水産省が、FSSAIの登録ポータル(ReFoM)に施設情報を提出する
  • FSSAI審査後、施設ごとに「URN(固有登録番号)」が発行される
  • このURNが輸出書類に記載されていない場合、インド側の税関で貨物が止まる

個人や企業がReFoMポータルに直接申請することはできません。必ず農林水産省を経由する仕組みになっており、まず農林水産省 輸出・国際局 規制対策グループへの問い合わせが起点になります。

なお、衛生証明書の新様式(インド政府が求める追加記載事項入り)については、農林水産省とインド政府の間で協議が継続中です(2023年2月時点では「当面の間、発効延期」)。最新の状況は農林水産省の公式ウェブサイトで随時確認してください。

Step 2:衛生証明書の種類と取得方法

施設認定と並行して、農林水産省から衛生証明書を取得します。証明書の種類は品目の由来(天然・養殖)と処理方法(生鮮・冷蔵・冷凍・加熱加工など)によって異なります。

  • 食品衛生のみで対応できるケース:加熱加工品や一部の加工水産物
  • 食品衛生+動物衛生の両証明が必要なケース:生鮮・冷凍の魚介類の多く

どちらに該当するかは農林水産省への事前確認が確実です。自社の品目区分と処理工程を整理したうえで問い合わせると、手続きがスムーズに進みます。

Step 3:インド側輸入者の登録状況を確認する

日本側の手続きが整っていても、インド側の輸入者に以下の2つの登録がなければ輸出は前に進みません。

  • IECコード(輸出入業者コード):インド商工省商務局・外国貿易部にオンライン申請。承認まで2営業日以内
  • FSSAIライセンス:事業規模と州・地域によって管轄が異なる。申請受領から60日以内にライセンス発行が原則

インド側のパートナーがこれらを持っているかどうかを、商談の初期段階で確認しておくことが重要です。

Step 4:輸出書類7点を準備する

インド向け水産物輸出には以下の7点が必要です。すべて揃って初めて通関申請が可能になります。

  • 船荷証券(Bill of Lading):IECコードの記載が必須
  • 商業インボイス・パッキングリスト
  • 衛生証明書原本(農林水産省発行)
  • 原産地証明書
  • ラボレポート(OIE基準+インド微生物検査、取得に7〜12日かかる)
  • インド輸入者のFSSAIライセンスコピー
  • 宣誓書(インド側輸入者が作成)

このうちラボレポートの取得に7〜12日かかる点は、スケジュール計画に大きく影響します。リードタイムを十分に確保した出荷計画が必要です。

Step 5:通関は指定8港のみ・到着後の検査内容

インドでは水産物の輸入通関ができる港が8箇所に限定されています。

  • デリー・ムンバイ・コルカタ・チェンナイ
  • バンガロール・ハイデラバード・ヴィシャカパトナム・コチ

到着後は目視検査(2,000ルピー)とサンプリング検査(1,000ルピー/サンプル)が実施されます。

最終的な販売先が内陸都市(デリーなど)の場合、入港後さらにコールドチェーン輸送が必要になります。ムンバイ・チェンナイ・コルカタは港と大消費市場が同一都市にあるため、初めての輸出先としてコスト効率が高い選択肢です。

Step 6:関税とGSTの計算

インドへの水産物輸出にかかる税率は以下の通りです。

  • 輸入関税:30%(ジェトロ調べ・2024年時点)
  • GST(物品・サービス税):0%(水産物は基本的に課税対象外)

日印包括的経済連携協定(CEPA・2011年発効)は存在しますが、水産物への関税優遇が十分に機能しているかは品目ごとに確認が必要です。

30%の関税は価格競争力に直接影響します。現地の安価な水産物との価格勝負を避け、「日本産・品質保証」で差別化できる品目を選ぶことが、インド輸出戦略の核心です。

インド輸出で詰まる4つの落とし穴

落とし穴1:鮮魚は実質輸出不可。冷凍・加工品が現実的な入口

ラボレポートの取得に7〜12日かかるため、生鮮状態での輸出は品質維持が非常に困難です。冷凍品または乾燥・加工品(冷凍カキ・冷凍ブリ・乾燥ナマコ・水産加工品など)を選ぶことが、インド市場参入の現実的な入口です。

さらに消費期限残存60%ルールがあります。インド入港時点で賞味期限の60%以上が残っていない商品は通関拒否の可能性があります。製造から出荷・入港・流通までのリードタイムを逆算したスケジュール管理が必須です。

落とし穴2:ラベルは英語・ヒンディー語で容器に直接表示

インドの表示規制では、ラベルを「容器に直接印刷するか、剥がせないシールで貼付」することが義務です。日本語のみのラベルでは通関できません。

記載必須事項は食品名・原材料・栄養成分・ベジ/ノンベジ表示・FSSAI登録番号・製造日・消費期限・アレルギー表示(魚を含む)などです。新たにインド向けのラベルデザインを準備する必要があります。

落とし穴3:ふかひれ(生鮮・冷凍)はインドへの輸入が禁止

インドではサメのひれ(生鮮・冷凍)の輸入が法律で禁止されています。ふかひれを含む商品ラインアップで輸出を検討している場合は、品目ごとに規制確認が必要です。

落とし穴4:農薬・重金属の残留基準(ポジティブリスト制)

インドはポジティブリスト制を採用しており、農薬・重金属の残留基準値が日本と異なる場合があります。養殖品(カキ・エビなど)では抗生物質の残留検査も厳しく、出荷前の自社検査と現地基準との照合が不可欠です。

インドで売れる日本の水産物はどれか

冷凍・加工品に絞ることが最初の現実解

ジェトロの実態調査(2024年3月)でも、通関・検疫の複雑さと30%関税を踏まえると、初期段階では冷凍品や乾燥・加工品からのアプローチが現実的とされています。

具体的な検討候補としては、冷凍カキ・冷凍ブリ・乾燥ナマコ・スモークサーモンなどがあります。重要なのは「輸送コスト+30%関税を加算しても日本産ブランドで成立できる価格帯の商品」を選ぶことです。

入港できる8港と都市の消費市場をセットで考える

インド国内の日本食需要は都市によって異なります。デリーは日本食レストランの集積度が最も高い最大消費市場です。ムンバイ・チェンナイ・コルカタは港と消費市場が近く、物流コストを抑えやすい利点があります。

バンガロールはIT産業の集積地で外資系企業が多く、高付加価値食品の需要があります。プネ・ハイデラバードもTier2都市として日本食需要が拡大中です。

最初の輸出先としては、入港コストと消費市場の近さを考えるとムンバイまたはチェンナイを起点に、現地輸入者と連携して進めるアプローチが現実的です。

まとめ:インド向け水産物輸出は「FSSAI登録から逆算」して動く

  • インドへの水産物輸出は2024年9月からFSSAI施設登録が完全義務化。固有登録番号(URN)のない施設からの輸出は通関できない
  • 登録は農林水産省経由で申請。個人・企業が直接申請できるポータルではない
  • ラボ検査7〜12日・関税30%・消費期限60%残存ルールを踏まえると、冷凍・加工品からの参入が現実的

インドへの日本産水産物の流通量は現時点で「限定的」(ジェトロ2024年)です。裏を返せば、今動き始めた事業者が先行者優位を確立できる市場です。

弊社では水産物輸出の書類代行から施設認定サポートまで対応しています。まずはお気軽にご相談ください。

出典・参考資料

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