水産・和牛 仕入れ代行

A5和牛がカナダで1㎏300ドル超。北米市場35%の実態と輸出参入の3ステップ

バンクーバーやトロントの高級レストランで、A5和牛が1kgあたり180〜300カナダドルで静かに売れている。北米の和牛市場は世界全体の35%超を占めるまでに成長しており、カナダはその一角として着実に存在感を高めています。

  • カナダの和牛認知と市場規模の最新データ
  • 日本からカナダへ和牛を輸出するための認定施設・書類の流れ
  • CPTPPが牛肉輸出にもたらすメリットと注意点

カナダの和牛市場:今どこまで来ているか

日本の牛肉輸出は2024年に648億円(前年比12%増)・10,826トン(前年比22%増)を記録し、2年連続で過去最高を更新しました(出典:日本畜産物輸出促進協会 2024年輸出実績)。

仕向地別に見ると、米国・カナダ向けは金額ベースで全体の23%を占めており、アジア向けに次ぐ重要な輸出先地域となっています。輸出先トップは米国で、カナダはその隣接国として近年注目が高まっています。

  • 北米の和牛市場規模:2025年に約95.6億ドル、世界シェアの35.52%(出典:Fortune Business Insights)
  • 世界の和牛市場は2026〜2034年にかけて年率約6.95%で成長が続くと予測されている
  • カナダ国内でのA5和牛小売価格:1kgあたり180〜300カナダドル(出典:Famu Online・2025年6月時点)

カナダで和牛を取り扱う事業者の代表格がオンタリオ州のFamu inc.で、「A5神戸牛・宮崎和牛を扱うオンタリオ州唯一の認定ディストリビューター・小売業者」を名乗っています。専門業者がまだ限られているということは、裏を返せば参入余地が大きいということでもあります。

バンクーバーとトロントで和牛認知が広がる背景

バンクーバー(ブリティッシュコロンビア州)は日系・韓国系・中国系のアジア系人口が多く、和食文化への親しみが強い都市です。2026年にオープン予定のTime Out Market Vancouverでは、和牛ブロスを使ったうどんを提供する飲食店の出店が確認されており、和牛を素材として使う店が増え始めています。

トロント(オンタリオ州)では、和牛すき焼き専門レストラン「Wagyu Suki」が営業するなど、和牛専門の業態が育ちはじめています。移民人口の多様化と高級食材への需要増加が、和牛認知の拡大を後押しする構造的な要因です。

※市場規模予測は調査機関による推計値です。最新情報はジェトロ(jetro.go.jp)でご確認ください。

出典:Fortune Business Insights・日本畜産物輸出促進協会(2024年)をもとに作成

九州に仕入れ先を持つ食品商社、従業員6名のAさんは、米国向けの和牛輸出を2年前にスタートし、書類の流れもつかんできた。ある日、バンクーバーのバイヤーからSNSで連絡が来た。「カナダ向けも対応できますか?」という一言です。

Aさんは迷いました。「米国と手続きは同じなのか、それとも別の認定が必要なのか」がわからないまま、「検討します」と返信するしかない。カナダ向け和牛輸出には、具体的に何から手をつければよいのでしょうか。

カナダへの和牛輸出:3つのステップで流れを押さえる

Step 1:カナダ市場とバイヤーの特性を把握する(輸出前の市場調査)

カナダは州ごとに食品流通の構造が異なります。和牛を輸出する場合、バンクーバーとトロントを中心とした2大都市圏が主要市場となります。まず「誰に売るか」を明確にしておくことが、その後の手続き設計に直結します。

カナダの和牛流通は、大きく3つのチャネルに分かれています。

  • 高級レストラン・ステーキハウス:シェフ主導の直接仕入れ。A5クラスの希少部位を少量・高単価で扱うことが多い。価格交渉より品質証明が重要
  • 専門食肉ディストリビューター:Famu inc.のような認定業者を通じた卸流通。継続的なロット購入が見込める一方、ブランド認証や産地証明書の提示が求められる
  • 日系高級スーパー・食料品店:日本食ニーズの高いエリアに集中。正確な産地・品種・等級の表示が購買決定に直結する

バイヤー候補が絞れたら、価格帯・最低発注ロット・梱包規格・輸送頻度の希望を事前にヒアリングしておきます。初回はお試し輸送(試送)から始める事例が多く、少量でも手続きは通常輸出と同じです。商談前に「日本産A5和牛であること」を証明するための格付け書・産地証明書を準備しておくと、交渉がスムーズに進みます。

Step 2:農水省の認定施設を確認する(出荷元の確認)

日本からカナダへ牛肉を輸出するためには、農林水産省が定めるカナダ向けの輸出認定施設(屠畜場・食肉処理施設)から出荷する必要があります。これは米国向けや韓国向けと同様に、輸出先国ごとに定められたルールです。

なぜこれが必要なのかというと、カナダ食品検査庁(CFIA)は輸入牛肉について、事前に承認された施設から出荷されたものしか受け入れないからです。認定を受けていない施設から出荷した牛肉は、カナダの入国時に通関拒否・返送・廃棄となります。

「どの施設を使えばいいか」で迷うケースが多いですが、この確認をせずに書類作成・フォワーダー手配を先行させるのが最も多い初歩ミスです。施設確認を最初の一歩にしてください。

Step 3:輸出書類を揃えてCFIA/NISC承認を取る(書類準備)

カナダへの牛肉輸入は、カナダ食品検査庁(CFIA:Canadian Food Inspection Agency)傘下の国立輸入サービスセンター(NISC)の承認が必要です。NISCへの申請はカナダ側の輸入者(インポーター)が行いますが、日本側が準備する書類の形式・記載内容が承認可否に直結します。

日本側で用意する主な書類は次の2通です。

  • 食肉衛生証明書(厚生労働省発行):屠畜・処理施設の衛生管理状況を証明する英文書類。輸出ごとに発行が必要
  • 輸出検疫証明書(農林水産省・動物検疫所発行):動物由来製品の検疫証明。英文で発行される

これら2通に加え、商業インボイス・パッキングリスト(梱包明細書)・船積書類(海上輸送の場合は船荷証券B/L、航空輸送の場合はエアウェイビルAWB)を揃えてカナダ側輸入者に渡します。

なお、カナダ側の輸入ライセンス費用は2023〜2024年度で287.22カナダドル(2年間分)とされています(出典:ジェトロ)。この費用はカナダ側インポーターが負担するものですが、バイヤーが輸入ライセンスを保有しているかを商談前に確認しておくと、手続きの段取りが明確になります。

CPTPPによる関税面の変化を把握しておく

日本とカナダは2018年12月にCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)を発効させており、牛肉を含む農産物の関税は段階的に引き下げられています。CPTPPの恩恵を受けるためには、原産地規則(日本で生産・加工された製品であることを証明する)を満たす必要があります。

具体的な現在の関税率や削減スケジュールについては、財務省関税局(customs.go.jp)またはジェトロのCPTPPページでご確認ください。輸出フォワーダーや通関業者に確認するのが実務上の近道です。

カナダ向け和牛輸出でよくある3つの落とし穴

① 認定施設を確認せずに輸出準備を進める

書類作成・梱包手配・フォワーダー選定を先行させても、出荷元の屠畜・処理施設がカナダ向け認定を受けていなければ輸出できません。認定施設の確認は、すべての準備の起点です。後から施設を変更しようとすると、リードタイムが大幅にのびます。

② 「和牛」とオーストラリアンワギュの違いを現地に伝えられない

カナダ市場ではオーストラリア産の「ワギュ(Wagyu)」も流通しており、同じ「Wagyu」表記で並んでいるケースがあります。日本産A5和牛の価格優位性を訴えるには、血統証明・格付け書(A5等級)・産地証明書などをセットで準備し、バイヤーへの説明資料に含めることが重要です。価格差の根拠を文書で示せることが、商談を前に進める鍵になります。

③ 冷凍・冷蔵の温度管理をフォワーダー任せにする

和牛を冷蔵(チルド)で輸出する場合は0〜4℃、冷凍の場合は-18℃以下を維持するコールドチェーンが必要です。バンクーバー国際空港またはトロント・ピアソン国際空港への着地後、現地倉庫・最終納品先までの陸送ルートも含めた温度管理体制を、フォワーダーと事前に書面で確認してください。

今週から動ける3つのアクション

  • 農林水産省「日本から輸出される食肉等の受入れ状況一覧」で、取引先の処理施設がカナダ向け認定を受けているか確認する
  • ジェトロのカナダ向け牛肉輸出ガイド(jetro.go.jp)でCFIA・NISC承認の最新要件と必要書類を確認する
  • カナダ現地のバイヤー候補(日系高級スーパー・和牛専門ディストリビューター・高級レストラン)のリストを作成し始める

まとめ

カナダの和牛市場は、バンクーバーとトロントを中心に着実に認知を広げています。北米全体では世界の和牛市場の35%超を占めており、日本の牛肉輸出2024年実績でも米国・カナダ向けは金額ベースで23%に達しています。

カナダ向け輸出で押さえるべき3つのポイントは次のとおりです。

  • 農水省の認定施設を使うことが絶対条件。認定外施設からの出荷は通関拒否につながる
  • 食肉衛生証明書(厚労省)と輸出検疫証明書(農水省)の2通が輸出書類の核心。カナダ側輸入者がCFIA/NISC承認を取るために必要
  • 産地・品種・等級を文書で示すブランドコミュニケーションが、オーストラリアンワギュとの差別化になる

競合がまだ少ないうちに、カナダ向け輸出の最初の一手を踏み出す価値があります。

和牛のカナダ向け輸出について、認定施設の確認・書類準備・バイヤー探しから伴走します。まずはお気軽にご相談ください。

出典・参考資料

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