資料が示す重要な前提は、和牛肉の生産量185千トンのうち、国内仕向けが173千トン、輸出(正肉)が12千トンであることです。比率では国内93%、輸出7%となります。
この記事では、この構成を「輸出が少ない」と単純に評価せず、海外提案の数量・部位・納期をどう考えるかという実務へつなげます。
和牛肉は国内向けが中心。輸出提案は供給全体から考える
2025年の和牛肉生産量は185千トンで、国内仕向けは173千トン、輸出(正肉)は12千トンでした。
輸出分は生産量の7%ですが、これは和牛輸出の価値が7%しかないという意味ではありません。
輸出者が見るべきなのは、海外向けに確保できる商品が、生産量全体の中でどの位置にあるかです。
国内流通が大きい以上、海外向け商品を追加する際は、仕入れ先の出荷計画や部位構成と合わせて確認する必要があります。
特定の部位だけを毎月同じ数量で提案する場合、国内需要や季節要因によって確保状況が変わる可能性があります。商談では、希望数量だけでなく、代替部位、出荷頻度、冷蔵・冷凍の選択肢も整理しておきます。

令和8年度の生産量は18万トン程度の見通し
農林水産省資料では、和牛の出生頭数、と畜頭数、枝肉生産量などから推計すると、令和8年度の和牛肉生産量は18万トン程度となる見通しです。
これは輸出者が将来の供給を断定できる数字ではありません。資料上の推計であり、実際の調達では仕入れ先、品種、格付け、部位、加工状態を個別に確認します。
一方で、商談計画を作るときの大きな方向性は示します。年単位の市場説明では生産量の見通しを使い、月単位の出荷確認では仕入れ先の在庫、加工能力、出荷可能日を使うというように、数字の用途を分けます。
輸出量12,628トンの内訳から商品提案を考える
2025年の牛肉輸出量は12,628トンで、前年比117%でした。
輸出先は台湾、米国、香港がそれぞれ約2割を占め、輸出量全体では冷蔵牛肉が約46%、ロイン系が約43%です。
この数字から、海外商談で「和牛なら何でも売れる」と考えるのは適切ではありません。仕向地、温度帯、部位、価格帯を組み合わせて、どの商品を提案するかを決める必要があります。
冷蔵を希望する取引先には、賞味期限、輸送日数、通関後の保管、販売計画を確認します。冷凍を希望する場合は、凍結方法、包装、保管温度、解凍後の用途を確認します。
ロイン系以外の部位を提案する場合は、現地のメニュー、調理方法、歩留まり、規格を聞き取ります。部位の名称を伝えるだけでなく、1ケースの構成、重量、カット状態まで商品情報へ落とし込むことが大切です。
価格を見るときは、和子牛・枝肉・輸出商品の段階を分ける
資料では、和子牛価格と和牛枝肉価格には一定の連動性が見られると説明されています。
また、和牛枝肉価格は年末年始需要に向けて11〜12月頃に引き合いが強まる傾向があります。
輸出者がこの情報を使う場合、和子牛価格をそのまま海外販売価格へ置き換えてはいけません。枝肉から部分肉になる工程、加工・包装、冷蔵保管、国内輸送、国際輸送、通関関連費用など、価格を構成する段階が異なります。
年末商戦向けの商談では、出荷時期だけでなく、仕入れ時期、加工枠、船便・航空便、現地販売開始日を逆算します。価格表には有効期限を付け、相場の変動が見込まれる場合は再確認日を記録します。
海外提案前に作る確認表
和牛輸出の提案前には、次の項目を一つの表にまとめます。
- 仕向国・地域と取引先の販売形態
- 品種、格付け、部位、カット形態
- 冷蔵・冷凍、包装、賞味期限
- 希望数量、出荷頻度、納期
- 認定施設、衛生証明書、輸出条件
- 見積りの有効期限と相場再確認日
この表は、海外の取引先へ見せる資料と、社内で調達可否を判断する資料に分けて管理します。
特に「毎月○ケース」「冷蔵で固定」といった条件は、仕入れ先が継続供給できるか確認してから提案します。
提案数量を決めるときは、最大供給量ではなく、通常月に安定して準備できる数量を基準にします。
初回は小さなロットで仕様を確認し、販売実績と再注文の時期を見て、次回以降の数量を見直す方法もあります。
農林水産省の需給資料は、市場全体を読むための基礎資料です。個別案件では、国別の受入条件、認定施設、証明書、通関、物流を別途確認してください。
国内93%という数字を商談でどう使うか
国内仕向けが93%ということは、海外向けに回せる商品を単純に生産量へ掛け算すればよいという意味ではありません。
輸出用に確保できる数量は、仕入れ先の販売計画、部位ごとの発生量、加工歩留まり、施設の処理枠によって変わります。
海外の取引先へ提案するときは、「市場全体ではこの規模」と説明する資料と、「今回の案件でこの数量を用意できる」と確認した資料を分けて作成します。
特に継続契約を想定する場合は、単月の在庫ではなく、通常月の供給実績と繁忙期の対応方法を確認します。
部位別の確認では、ロイン系だけでなく、現地のメニューに合う非ロイン系の提案余地も見ます。
非ロイン系を扱う場合は、現地調理での使用量、カットの手間、歩留まり、販売単位を取引先へ確認します。
「高級部位を少量」か「複数部位を定期供給」かで、必要な物流設計と見積りの作り方は変わります。
提案書には、商品名だけでなく、重量、包装単位、温度帯、出荷頻度、納期の前提を明記します。
冷蔵・冷凍の違いを価格以外でも確認する
冷蔵と冷凍は価格だけの違いではありません。輸送日数、保管設備、販売方法、賞味期限の管理が変わります。
冷蔵商品なら、出荷から現地販売までの時間を確認し、航空便や通関後の配送を含めて販売計画を作ります。
冷凍商品なら、凍結・保管・解凍後の品質を想定し、現地の厨房や小売が扱える仕様かを確認します。
温度帯を商談の途中で変更する場合は、包装、ラベル、輸送費、証明書記載の確認が必要になることがあります。
また、相場資料の数値は過去の実績や推計を示すものであり、将来の販売価格や調達価格を確定するものではありません。
見積りを提出するときは、価格の基準日、為替や物流費の扱い、再見積りの条件を記載し、取引先との認識をそろえます。
資料の公表日と案件の確認日も記録しておくと、後日、どの時点の情報で判断したかを振り返れます。
取引先への提案資料には、統計の対象年と公表日を添え、個別商品の確認結果と混ざらないようにします。
市場全体の傾向を説明する数字と、今回出荷できる商品情報を分けることで、提案内容を更新しやすくなります。
提案書と社内確認表を分けて作ると、取引先へ示す情報と、仕入れ先・施設へ確認する情報を整理しやすくなります。
市場の数字をそのまま約束へ変えず、供給確認を経て商品条件を確定することが、継続取引の前提になります。
初回は小さなロットで仕様を確認し、販売実績と再注文の時期を見て、次回以降の数量を見直します。
取引先から提示された希望数量は、月間・週間・1回あたりの数量へ分けて確認します。
部位の代替案を用意するときは、価格だけでなく、調理用途、歩留まり、包装単位、現地の保管条件も比較します。
証明書や施設条件が関係する仕向国では、需給の確認と同時に、最新の公式条件を確認します。
こうした確認履歴を残すと、次回の商談で同じ質問を最初からやり直す必要がなくなります。
担当者、確認日、根拠資料のページを記録しておくと、社内での承認や取引先からの追加質問にも対応しやすくなります。
需給資料は定期的に更新されるため、古い数字を再利用する場合は、公表日と対象年を必ず見直します。