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茨城・涸沼でシジミ不漁 3年前の10分の1以下と報じられた資源減少の背景は

味噌汁や吸い物など、日本の食卓で親しまれているシジミ。その代表的な産地の一つ、茨城県の涸沼(ひぬま)で、シジミ資源の大幅な減少が報じられています。

2026年9月8日のテレビ朝日報道によると、県の水産試験場などによる調査で、2025年のシジミの推定個体数は3年前と比べて10分の1以下まで減少したとされています。

一方で注目されているのが、シジミを食べる「キビレ」という魚です。

漁協が捕獲したキビレの胃からシジミが確認されており、不漁との関係が疑われています。ただし、現在確認できる情報から、キビレだけを今回の資源減少の原因と断定することはできません。

涸沼では何が起きているのでしょうか。今回のニュースと公表資料から、シジミ産地の現状を見ていきます。

涸沼でシジミの推定個体数が3年前の10分の1以下に

テレビ朝日の報道で大きく取り上げられたのが、シジミの「現存量」の変化です。

県の水産試験場などの調査として紹介された内容によれば、2025年のシジミの推定個体数は、3年前と比較して10分の1以下に減少しました。

さらに大涸沼漁業協同組合の市村彰組合長は、2026年の漁について「例年と比べると3分の1くらい」と説明しています。

シジミ不漁は今回突然表面化したわけでもありません。

2026年7月の報道では、大涸沼漁業協同組合の情報として、涸沼と涸沼川のシジミ漁獲量が2025年には前年から5割以上減ったと伝えられていました。

つまり、異変は漁獲量だけでなく、資源そのものの状態にも及んでいる可能性があります。

涸沼はなぜシジミの名産地なのか

涸沼は茨城県中央部に位置する「汽水湖」です。

汽水とは、川から流れ込む淡水と海から入る海水が混じり合う水域のこと。こうした環境に適応しているのがヤマトシジミです。

茨城町も涸沼について、良質なヤマトシジミが採れる全国的に知られた産地と紹介しています。町の特産品紹介では、涸沼産のシジミを「大粒で肉厚、濃厚な味わい」としています。

涸沼にはシジミ以外にもワカサギやハゼなどさまざまな魚介類が生息しており、地域にとって重要な漁場です。

シジミは単なる水産物ではなく、地域の食文化にも組み込まれています。茨城町では涸沼産ヤマトシジミを使った「しじみラーメン」が町の特産品ブランド認証品にもなっています。

そのため、資源量の減少が続けば、漁業だけではなく地域の食にも影響が広がる可能性があります。

注目されるのがシジミを食べる「キビレ」

今回のニュースで注目を集めたのが「キビレ」です。

キビレはクロダイの仲間で、黄色いひれが特徴です。

テレビ朝日の報道によると、キビレはもともと西日本などに生息する魚で、涸沼では5年ほど前から定着したと考えられているとされています。

大涸沼漁協が捕獲したキビレを調べたところ、その胃の中からシジミが確認されました。

さらに2026年7月の報道でも、漁協が同年5月から魚類の捕獲調査を行い、キビレやアカエイなどを確認。キビレの体内から大量のシジミの稚貝が見つかったと伝えられています。

シジミ資源の減少を考えるうえで、非常に気になる事実です。

ただし、ここで注意したいのは、

「キビレがシジミを食べている」ことと、「今回の不漁の原因がキビレである」ことは同じではない

という点です。

漁協の調査によって捕食が確認されている一方、現在確認できる公表情報だけで資源減少のすべてをキビレによる食害と断定することはできません。

稚貝は大きく減っていないという重要なポイント

今回の報道でもう一つ興味深いのが、シジミの稚貝についてです。

テレビ朝日によると、県の水産試験場などの調査では、シジミの推定個体数が大幅に減少している一方、「稚貝の量は大きく減っていない」とされています。

これは資源の状態を考えるうえで重要です。

稚貝が一定程度存在しているにもかかわらず、その後のシジミが減っているのであれば、成長して漁獲対象になるまでのどこかの段階で生き残れない個体が増えている可能性が考えられます。

報道では、その要因の一つとしてキビレによる捕食が注目されています。

ただし、どの程度の割合が捕食によるものなのか、ほかの環境要因がどの程度関係しているのかについて、今回確認できた公開情報だけでは判断できません。

原因を一つに決めつけず、今後の調査結果を見る必要があります。

シジミ資源の減少は以前から課題だった

今回のニュースを理解するうえでは、涸沼のシジミ資源が以前から調査・管理の対象になってきたことも重要です。

茨城県の「涸沼水質保全の対応方針」では、ヤマトシジミを涸沼の主要な水産資源と位置付ける一方、長期的に見ると漁獲量は減少傾向にあるとしています。

県は「ヤマトシジミを始めとする水産資源の維持増大」を環境目標の一つとして掲げています。

また、茨城県の事業報告書を見ると、涸沼・涸沼川ではヤマトシジミの現存資源量調査が行われてきました。資源を把握しながら漁業を続けるための調査が以前から実施されていることが分かります。

資源を増やすための取り組みもあります。

県の事業報告書によれば、大涸沼漁協によるヤマトシジミの種苗生産に対して技術指導が行われ、2021年度には約3,097万個と推定される稚貝が生産され、涸沼へ放流されました。

こうした過去の取り組みを見ると、涸沼のシジミは「自然に採れるもの」というだけではなく、調査や増殖の取り組みを重ねながら守られてきた地域資源であることが分かります。

不漁は地域の飲食店にも影響

漁獲量が減れば、その影響は漁業者だけでは終わりません。

テレビ朝日の取材では、東京の飲食店から「以前は涸沼産が入ってきたが、最近は入ってこない」という声が紹介されています。

涸沼周辺でシジミラーメンを提供する飲食店でも、冬場には入荷が制限されることがあり、シジミがなくなった場合のメニューを心配する声が伝えられました。

水産物の不漁は、産地だけの問題に見えがちです。

しかし実際には、漁獲量が減少すれば流通量にも影響し、その先にある鮮魚店や飲食店、そして消費者へと影響が広がることがあります。

特に涸沼産シジミは地域の名産品として認識され、料理にも利用されているため、資源の変化は地域の食文化とも無関係ではありません。

シジミを育てる「汽水湖」の変化にも注目

涸沼の特徴は、海と川の影響を同時に受ける汽水環境にあります。

こうした環境はヤマトシジミをはじめ、多様な生物の生息場所となっています。

一方、汽水湖の生態系はさまざまな環境条件の影響を受けます。

茨城町では涸沼の水質変化を監視するため、水質調査を継続してきました。町の資料でも涸沼はヤマトシジミ、ワカサギ、ハゼなどが生息する重要な漁場であるとされています。

今回の報道では、キビレが涸沼に定着した背景として温暖化の影響による北上が伝えられています。

ただし、水温変化とシジミ資源の減少について、今回確認した資料だけから直接的な因果関係を断定することはできません。

「水温が上がったからシジミが10分の1になった」と単純化せず、生息する魚種の変化や捕食、シジミの成長段階などを含めて今後の調査を見る必要があります。

今後注目したいのは「稚貝がその後どうなるか」

今回のニュースで最も注目したいポイントは、単に「シジミが減った」という数字だけではありません。

成長前の稚貝は大きく減っていないとされる一方、全体の推定個体数は3年前から大幅に減少しているという点です。

その間に何が起きているのか。

キビレなどによる捕食がどの程度影響しているのか。

ほかの環境条件が関係しているのか。

そして現在確認されている稚貝が、今後どの程度成長できるのか。

これらを継続して調べることが、涸沼のシジミ資源の状態を理解するために重要になりそうです。

日本の食卓では身近な存在であるシジミですが、その一粒一粒の背景には、汽水湖という独特の自然環境と、資源を守りながら漁を続ける産地の取り組みがあります。

全国的にも知られる涸沼のヤマトシジミ。

今回報じられた大幅な資源減少が一時的なものなのか、それとも長期的な変化につながっているのか。今後公表される調査結果を慎重に見ていく必要があります。

【参考情報】

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