完全養殖ウナギについて、国立研究開発法人 水産研究・教育機構(以下、水研機構)と水産庁は、技術開発、試験販売、シラスウナギの流通管理に関する情報を公開しています。本記事では、これらの公式資料に直接記載されている内容だけを整理します。
完全養殖の定義
水研機構は、完全養殖を、人工的に採取した卵から育成した成魚を産卵させ、得られた卵をもとに再び成魚を育成し、人工ふ化を行う技術として説明しています。水研機構の資料には、天然から得る卵や幼魚に依存しない養殖形態であることも記載されています。
水産庁は、ニホンウナギ種苗の大量生産と安定供給を目的として、産学官が連携する技術開発を進めていると公表しています。水産庁の掲載情報には、開発した乾燥飼料でウナギ仔魚をシラスウナギまで育成することに成功したことも記載されています。
2026年に公表された完全養殖ウナギ蒲焼の試験販売
水研機構、山田水産株式会社および一般社団法人マリノフォーラム21は、2026年5月20日、完全養殖ウナギ蒲焼の試験販売について公表しました。公表資料によると、委託事業で生産された完全養殖シラスウナギを山田水産が成鰻まで養殖し、蒲焼に加工して試験販売する内容です。
同資料には、山田水産が令和6年以降の2年連続で、年間1万尾以上の完全養殖シラスウナギの生産に成功したことも記載されています。
なお、当該公表は試験販売に関するものです。本記事では、試験販売の後における販売数量、継続販売、販売価格、販売結果については、一次情報で確認できないため記載していません。
人工種苗の生産コストと生産能力
水研機構の資料(2025年7月時点)には、人工種苗の生産コストが1尾当たり1,800円に到達したことが記載されています。資料に示された2016年度の生産コストは1尾当たり4万円、2020年度は3,700円です。
同資料は、人工種苗の生産コストが天然シラスウナギ1尾価格の3〜4倍程度であること、水研機構単独で年間3万尾の生産能力があること、研究開発パートナーを含めると年間4〜5万尾の生産が可能であることを示しています。これらの数値はいずれも同資料の時点の公表値です。
同資料には、人工種苗の生産水槽1基当たりの生産尾数が1,000尾に到達したことも示されています。今後の方向性として、量産水槽、飼料、自動給餌装置、育種などに関する技術開発を継続すると記載されています。
シラスウナギとは
水産庁の資料では、シラスウナギは長さ約6cm、重さ約0.2gと説明されています。同資料には、12月から翌年4月までの期間中、特に新月の夜に、河川や海岸線で網を用いる方法や小型の定置網で採捕されることが記載されています。
水産庁資料には、シラスウナギの採捕に関して、採捕期間、漁法、場所などを制限する知事許可制度が記載されています。資料上、シラスウナギの漁業の許可等が行われている都府県は25です。
シラスウナギの採捕・流通に関する水産庁の公表内容
水産庁の資料によると、令和7年漁期のシラスウナギについて、国内の採捕報告数量は18.2トン、輸入数量は3.4トン、輸出数量は2.7トン、養殖業者の池入報告数量は18.7トンでした。
同資料には、採捕されたシラスウナギが集荷業者に集められ、複数の流通業者を経由して養殖業者に供給される流通形態が記載されています。
同じ資料では、令和7年11月時点で、許可を受けたニホンウナギ養殖業者は31道府県に所在し、全国の池入割当量は21.7トンとされています。これは水産庁資料に記載された許可・割当の数値です。
流通管理制度
水産庁は、シラスウナギについて、改正漁業法に伴う罰則強化と知事許可化を2023年12月に実施したと説明しています。さらに、水産流通適正化法の対象にシラスウナギを指定し、2025年12月から適用を開始したと公表しています。
水産庁資料には、採捕事業者および取扱事業者等の届出、取扱事業者間における漁獲番号等の伝達、取引記録の作成・保存に関する内容が記載されています。
公式情報を確認する際の参照先
水産庁は「ウナギに関する情報」のページで、ウナギをめぐる状況と対策、ニホンウナギ稚魚国内採捕量の推移、ウナギ供給量の推移、池入れ状況に関する資料を公開しています。数値を利用する際は、資料の公表日と対象漁期を確認してください。
本記事で扱わない内容
全国の店頭価格、その変動要因、将来の価格見通し、消費量との関係については、今回確認した公式資料だけでは直接確認できませんでした。そのため、本記事には記載していません。
また、輸出の可否、衛生証明、輸入国・地域の要件は、対象国・地域、製品、加工形態によって異なります。本記事では個別の輸出要件を記載していません。