日本の黒毛和牛を、食文化や宗教上の条件が異なる海外市場へどのように届けるか。
その一つの取り組みとして注目したいのが、ハラル対応の黒毛和牛「天幸牛」です。
天幸牛は、北海道・九州産の黒毛和種を対象とし、A4・A5等級を中心とした商品を取り扱っています。
さらに、ハラル対応、牧場から販売までの履歴管理、冷凍流通、輸出時に必要となる条件の確認など、国内外のバイヤーとの取引を見据えた体制が組み合わされています。
ここで気になるのが、「そもそもハラルとは何なのか」「ハラル和牛では何を確認するのか」という点ではないでしょうか。
今回は天幸牛の特徴を紹介するとともに、ハラル対応の牛肉を取り扱う際に重要となる処理、保管、証明書、輸出条件まで詳しく見ていきます。
ハラル和牛「天幸牛」とは
天幸牛は、ハラル対応を特徴の一つとする黒毛和牛です。
品種は黒毛和種、産地は北海道・九州。等級についてはA4・A5を中心としています。
商品の特徴は、こうした産地・品種・等級に加えて、ハラル対応や履歴管理、冷凍流通など、実際の商談や流通までを考えた情報が整理されていることです。
海外のバイヤーと食肉の商談を進める場合、商品の品質だけではなく、産地、処理方法、保管方法、証明書、輸送方法など、さまざまな確認事項が発生します。
天幸牛では、これらを「産地・肥育」「処理」「保管」「書類」「提案」という流れで確認できるようになっています。
そもそも「ハラル」とは何を意味するのか
ハラルという言葉を聞いたことはあっても、「ハラル和牛になると具体的に何が違うのか」までは分かりにくいかもしれません。
ハラルは、イスラムの考え方において許されているものや行為を示す言葉です。
食品についてもハラルという考え方があり、原材料だけではなく、食肉の場合には処理方法なども重要になります。
そのため、「牛肉だからハラル」ということではありません。
食肉として取り扱うまでの工程について、ハラルの条件に沿っていることを確認する必要があります。
天幸牛では、ハラル認証食肉処理場での処理に対応しています。
また、ムスリムによる手作業の屠畜や祈祷を行う工程について説明できる体制が示されています。
ハラル対応は「処理」だけでは終わらない
ハラル和牛を理解するうえで重要なのは、食肉処理だけを見ればよいわけではないという点です。
天幸牛では、処理後の保管についてもハラル製品を分離して管理する考え方が示されています。
冷蔵・冷凍で保管する際に、ハラル製品を区分して取り扱うことで、処理後についても管理を継続します。
さらに、抗生物質や飼料の使用履歴について記録・保存することも、説明可能な項目として整理されています。
つまり、天幸牛におけるハラル対応を見る際には、食肉処理という一つの工程だけではなく、その後の保管や履歴管理まで含めて確認することがポイントになります。
牧場から販売まで履歴をつなぐ
天幸牛では、牧場から加工、販売までのトレーサビリティに対応しています。
どのような流れで商品が取り扱われるのかを整理すると、「産地・肥育」「処理」「保管」「書類」「提案」という5つの段階になります。
1.産地・肥育
北海道・九州産の黒毛和牛を対象として選定します。
2.処理
ハラル対応の処理工程を確認します。
3.保管
冷蔵・冷凍保管において分離管理を行います。
4.書類
証明書や輸出書類について、仕向け国ごとに確認します。
5.提案
数量、規格、輸送条件などを整理して、具体的な商談へ進みます。
こうして見ると、ハラル対応の和牛を取り扱う際には、肉そのものだけではなく、牧場から販売までの流れを確認できることも重要な要素になっていることが分かります。
ハラル対応なら、そのまま海外へ輸出できる?
ここは、ハラル和牛を理解するうえで重要なポイントです。
ハラル対応と、実際に海外へ輸出するための条件は、分けて考える必要があります。
天幸牛では、海外向けに正式な提案を行う前に、ハラル対応の有無だけではなく、複数の項目を確認します。
その一つが、英語版ハラル証明書の発行状況です。
さらに、輸出先国でその認証が受け入れられるか、認証が適用される処理施設であるか、衛生証明書や産地証明など、どのような書類が必要になるかを確認します。
つまり、「ハラル対応している」ということと、「希望する国へ輸出するための条件が整っている」ということは、必ずしも同じではありません。
実際の商談では、まず販売先となる国・地域を確認し、その仕向け先に応じた条件を整理する必要があります。
なぜ仕向け国を最初に確認するのか
海外向けの和牛商談で重要になるのが、「どの国・地域へ届けるのか」という情報です。
天幸牛についても、証明書や受け入れ条件は仕向け国・地域ごとに確認することを前提としています。
そのため、「ハラル和牛を購入したい」という希望だけでは、具体的な取引条件は決まりません。
販売先の国・地域を確認し、必要書類や認証条件などを整理したうえで、実際の提案へ進むことになります。
ハラル対応を商品側の条件として確認しながら、同時に輸入側の条件も確認する。
この二つを分けずに確認していくことが、海外向け商談では重要になります。
天幸牛の流通は冷凍が基本
実際の取引を考えるうえでは、商品の保存形態や取引単位も気になるところです。
天幸牛の保存形態は冷凍を基本としています。
個包装単位については、20kgから30kg程度のケースを想定。
取扱いについては1頭単位またはセット販売で、最低発注数量は個別相談となっています。
価格についても一律ではなく、数量、部位、等級、輸送方法、仕向地、必要書類、為替、インコタームズなどによって変動するため、条件を確認したうえで正式見積りへ進みます。
海外向けの取引では、希望する商品だけでなく、「どこへ」「どのくらい」「どの条件で届けるのか」まで整理することが必要になります。
海外輸入卸・ホテル・高級飲食など幅広い用途を想定
天幸牛は、海外だけではなく国内を含めた複数の取引先を想定しています。
海外輸入卸には、日本産黒毛和牛とハラル対応を組み合わせた商品として提案。
ホテル・高級飲食では、ムスリム対応やインバウンド対応、高付加価値メニューなどの用途が想定されています。
国内の卸売業者については、A4・A5等級の和牛とハラル対応を組み合わせた商材としての提案が考えられています。
同じ天幸牛でも、販売先や用途によって必要となる数量、部位、規格、輸送条件などは変わります。
そのため、用途を確認したうえで個別の条件を整理する形が基本となっています。
天幸牛の商談では何を確認するのか
天幸牛に関心を持ったバイヤーが具体的な商談へ進む場合、どのような情報が必要になるのでしょうか。
確認項目として挙げられているのは、販売先の国・地域、希望数量、希望部位、等級、必要書類、ハラル認証要件、継続取引の見込みなどです。
さらに、用途が卸売、小売、飲食店、ホテル、加工などのどれに該当するのかも確認します。
納期、輸送方法、温度帯、希望価格帯、決済条件なども具体的な取引を組み立てるための重要な情報です。
海外取引では「商品があります」「購入したい」というだけでは、条件を確定することはできません。
商品条件と買い手側の希望を一つずつ確認し、双方の条件を整理したうえで正式な提案へ進みます。
「ハラル」を知ることが和牛輸出を知る第一歩に
天幸牛を通じてハラル対応を見ていくと、ハラル和牛が単に「特別な方法で処理された牛肉」というだけではないことが分かります。
産地・肥育から処理、保管、履歴管理、証明書、輸出先国の受け入れ条件、そして実際の輸送まで、確認すべき項目は複数あります。
そして重要なのは、それぞれを別々に見るのではなく、牧場から販売までの一連の流れとして管理することです。
天幸牛は、北海道・九州産の黒毛和種、A4・A5等級を中心とした商品に、こうしたハラル対応や流通・商談の仕組みを組み合わせています。
日本産和牛を海外へ届けるとき、どのような準備と確認が必要になるのか。
天幸牛の取り組みは、ハラル和牛と海外輸出の仕組みを知るうえでも注目したい事例です。