長崎市が「レンコダイ」の魅力発信 水揚げ量日本一と底びき網漁を知る
長崎の魚と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか。
アジ、サバ、ブリ、タイなど、長崎はさまざまな魚が水揚げされる地域として知られています。そのなかに、鮮やかな赤と黄色をまとった「レンコダイ」という魚があります。
レンコダイは「キダイ」とも呼ばれるタイの仲間です。長崎市はレンコダイの水揚量日本一をうたっており、長崎魚市もキダイを「レンコ」「レンコダイ」と呼び、水揚高が日本一だと紹介しています。
そんなレンコダイをもっと知ってもらおうと、2026年9月、長崎市で漁業者、飲食店、小売店、市が連携した取り組みが報じられました。
普段、スーパーの鮮魚売り場などで目にしても、マダイとの違いや、どのような漁業で水揚げされているのかまでは知らないという人もいるでしょう。
今回は、長崎のレンコダイに注目し、その特徴や漁法、食べ方、そして今回の取り組みが伝えようとしているものを見ていきます。 #以西底びき網漁業
長崎市でレンコダイの魅力を伝える取り組み
NCC長崎文化放送が2026年9月16日に報じたのは、以西底びき網漁業で水揚げされるレンコダイをPRする取り組みです。
長崎市役所を訪れたのは、以西底びき網漁業を専業とする山田水産をはじめ、飲食店、小売店などの関係者でした。
今回の取り組みでは、山田水産、イオンチトセピア店、日本料理・更紗、長崎市役所の食堂が連携。レンコダイを使ったメニューの提供、レシピの配布、試食販売などを行うと報じられています。
長崎市役所の食堂では9月18日、限定200食のサービスランチとして「レンコダイとナスの中華黒酢ソース」が提供される予定と報じられました。
単に「長崎ではレンコダイが獲れます」と知らせるだけではなく、実際に食べてもらい、料理としてのおいしさや使いやすさを知ってもらう取り組みになっている点が特徴です。
そもそもレンコダイとはどんな魚?
レンコダイは「キダイ」とも呼ばれます。
長崎魚市によると、南日本や東シナ海の水深80メートル以上の砂泥底に生息し、体色は黄赤色で、背部に黄色の斑点があります。体長は40センチ前後まで成長するとされています。
「タイ」という名前が付いているためマダイと混同しそうですが、レンコダイはキダイという別の魚です。
長崎県漁業協同組合連合会は、レンコダイの別称をキダイとし、底引き網や延縄で漁獲される魚として紹介しています。
料理についても用途は幅広く、同連合会では塩焼き、唐揚げ、吸い物、酢じめなどを挙げています。
長崎市が公開しているレシピには「レンコダイそうめん」もあります。三枚におろした際の骨を焼いてだしに利用し、身は焼いてそうめんと合わせる料理です。
一尾をさまざまな形で利用できる魚だということが分かります。
長崎市はレンコダイの水揚量日本一
今回のニュースを理解するうえで重要なのが、長崎とレンコダイの深いつながりです。
長崎市は公式サイトで「長崎市が水揚量日本一のレンコダイ」と紹介しています。
長崎魚市も、長崎魚市ではキダイをレンコまたはレンコダイと呼び、「水揚高は日本一」としています。
実際にレンコダイが長崎魚市場へ入っていることは、日々の販売予定からもうかがえます。
例えば2026年8月20日の販売予定明細では、底びきの国内物としてレンコ618箱、8月24日の予定ではレンコ577箱が掲載されていました。
これは特定日の販売予定であり、年間水揚量を示す数字ではありません。しかし、レンコダイが現在も長崎魚市場でまとまって取り扱われている魚の一つであることを具体的に示す情報です。
年間約1,200トンを占めるレンコダイ
今回の報道では、さらに具体的な数字も紹介されています。
以西底びき網漁業を専業とする山田水産の年間水揚げ量は約3,000トン。その約4割に当たる約1,200トンをレンコダイが占めるとNCC長崎文化放送は報じています。
つまり、同社にとってレンコダイは数ある漁獲物の一つというだけではなく、水揚げの大きな割合を占める魚です。
長崎魚市の販売予定を見ると、底びきではレンコダイだけでなく、タイ、アジ、ホウボウなど複数の魚種が並びます。
海底付近に暮らすさまざまな魚を漁獲する底びき網漁業のなかで、レンコダイが重要な魚種の一つになっていることが今回の数字から分かります。
レンコダイを支える「以西底びき網漁業」とは
レンコダイの話をするとき、もう一つ知っておきたいのが「以西底びき網漁業」です。
あまり聞き慣れない名前かもしれません。
長崎市によると、以西底びき網漁業は100トン程度の大型船で船団を組み、東シナ海の大陸棚で海底に網をひき、海底や底近くに生息する魚を漁獲する漁業です。
長崎市は漁獲される魚の例として、レンコダイ、マダイ、イカ、アカメ、エソなどを挙げています。
NCC長崎文化放送は今回の報道で、東シナ海や黄海を主な漁場とする以西底びき網漁業について、現在では全国で長崎市にのみ残る伝統的な漁業だと伝えています。
山田水産も自社を「日本で唯一の『以西底びき網漁業』専業漁業会社」と説明しています。
つまりレンコダイを知ることは、一つの魚の味や料理方法だけでなく、長崎に残る漁業そのものを知ることにもつながります。
「底びきの魚=焼き物や煮付け」だけではない
今回の取り組みでもう一つ興味深いのが、レンコダイの食べ方です。
レンコダイは塩焼きや煮付けなど加熱料理のイメージを持たれやすい魚ですが、今回の報道では刺し身も紹介されました。
NCC長崎文化放送によると、かつて底びき網で獲れた魚は焼き物や煮付けに使われるのが一般的でしたが、現在は航海の短縮によって高い鮮度で水揚げすることが可能となり、刺し身でも食べられるようになっているといいます。
報告会でもレンコダイの刺し身が用意されました。
もちろん、生食できるかどうかは個々の魚の鮮度や処理、販売時の表示などによって判断する必要があります。家庭で食べる場合には、購入した鮮魚店などの案内に従うことが大切です。
一方で、レンコダイには塩焼き、煮付け、唐揚げ、吸い物、酢じめなど、もともと多彩な調理方法があります。
「どう料理すればいいか分からない魚」ではなく、家庭料理にも取り入れられる選択肢の多い魚だといえそうです。
鮮やかな色と祝いの席とのつながり
レンコダイの特徴として外せないのが、その色合いです。
長崎魚市はレンコダイについて、黄赤色の体色と背部の黄色い斑点を特徴として紹介しています。
山田水産の山田倫敬取締役も今回の報道で、黄金色のようなきれいな色をしており、昔から祝い事や正月などに使われてきた縁起の良い魚だと説明しています。
長崎県漁連も、祝膳の姿焼きにキダイが使われることを紹介しています。
見た目の華やかさを生かして一尾をそのまま焼く料理から、唐揚げ、吸い物、酢じめ、さらに現在では刺し身まで、伝統的な使われ方と新しい楽しみ方の両方がある魚です。
レンコダイの「旬」はどう考えればいい?
魚を紹介するときに気になるのが旬です。
ただし、レンコダイについては情報源によって紹介される時期に幅があります。
長崎県漁連の天然魚紹介では、レンコダイの旬を「春から夏」としています。
一方、長崎市公式観光サイトでは、秋に楽しめる長崎の代表的な魚の一つとしてレンコダイを紹介しています。
そのため「レンコダイの旬はこの月だけ」と狭く決めてしまうより、漁場や流通、地域での食べ方なども含めて捉えたほうがよいでしょう。
今回の魅力発信が9月に行われていることからも、秋の長崎でレンコダイを知り、味わう機会が設けられていることが分かります。
名前は知っていても食べ方を知らない魚に光を当てる
魚の消費を考えるとき、有名な魚だけではなく、地域ではまとまった水揚げがあるものの、消費者には特徴や食べ方が十分知られていない魚をどう伝えるかも重要です。
今回の長崎市での取り組みは、レンコダイを単にPRするのではなく、飲食店、小売店、市役所の食堂など、それぞれ消費者との接点を持つ場所が参加しています。
料理として提供する。
レシピを配る。
試食してもらう。
こうした方法なら、名前だけを伝えるよりも「どんな味なのか」「家庭ではどう食べられるのか」を具体的に想像しやすくなります。
レンコダイには、長崎市が水揚量日本一をうたう産地としての背景があり、その漁獲を支える以西底びき網漁業があります。
魚の魅力を伝えることと、地域の漁業を知ってもらうことが一つにつながっている点は、今回のニュースの大きなポイントです。
一尾のレンコダイから長崎の漁業を知る
普段の買い物では、魚を「何を作るか」という視点だけで選ぶことも多いでしょう。
しかし、その魚がどこで獲れ、どんな漁法で水揚げされ、地域でどのように食べられてきたのかを知ると、鮮魚売り場の見え方も少し変わります。
レンコダイはキダイとも呼ばれ、長崎では底びき網や延縄などによって漁獲されています。
塩焼き、煮付け、唐揚げ、吸い物、酢じめなど多彩な料理に使われ、祝いの席にも登場してきました。そして現在は、鮮度を生かした刺し身という楽しみ方も紹介されています。
2026年9月に行われた魅力発信の取り組みは、そんなレンコダイを改めて身近な魚として知ってもらう機会です。
一尾の魚を入口にして、その土地の漁業や市場、食文化まで知る。
レンコダイは、長崎の豊かな魚文化を知るうえでも興味深い魚の一つです。