日本側の水産庁一覧では、カナダ向けの動物衛生証明書について、内臓を除去した魚類、頭部を除去したえび類、むき身・ハーフシェルにした二枚貝を対象外として示しています。ただし、この対象外はカナダの食品要件や個別貨物の書類要件まで免除する意味ではありません。
この記事では、貨物の形態を先に確定し、CFIAの感受性種リストとAIRSを照合してから、日本側の証明書手配へ進む確認順を整理します。個別の許可可否は、カナダ側の事業者がAIRSで貨物ごとに確認する前提です。

動物衛生証明書は何を確認する書類か
CFIAの国立水産動物衛生プログラムは、カナダへ入る水産動物の病気の持込みを防ぐため、魚類、軟体動物、甲殻類を対象に管理しています。対象には生きた個体だけでなく、死んだ水産動物の製品、配偶子、胚なども含まれます。
CFIAは、感受性種であるかを基準に、輸入許可、輸出国の公的機関が裏書きする動物衛生証明書、その他の書類を求める場合があると案内しています。制度の焦点は食品表示ではなく、水産動物の疾病リスクです。
感受性種かどうかは学名で照合する
感受性種リストには、英語の通称だけでなく学名と、対象となる疾病が掲載されています。例えば、マダイは Pagrus major、ヒラメは Paralichthys olivaceus としてリストに載り、それぞれ疾病が示されています。
商品規格書には、日本語の商品名だけでなく、学名、魚種、原料の由来、養殖・天然の別を置きます。通称が似ている魚種や、加工後に形状が変わる貨物では、販売名だけで感受性の有無を決めないことが重要です。
証明書と食品の要件は別に確認する
動物衛生証明書の要否と、食品としてカナダへ販売するための要件は同じではありません。CFIAの魚介類食品ページも、特定の水産動物は感受性種に該当し、動物衛生の輸入許可が必要になる場合があると案内しています。
二枚貝では、この切分けが特に重要です。CFIAは、生又は未加熱の二枚貝等を、認可された採捕国で採れ、認可された荷送人又は施設で取り扱われたものに限るとしています。確認日現在の認可採捕国一覧に日本は載っていないため、殻付き又は生の二枚貝を扱う案件は、動物衛生証明書の対象外だけを根拠に出荷条件を判断しません。
| 確認する制度 | 主な判断軸 | 案件でそろえる情報 |
|---|---|---|
| 動物衛生 | 感受性種、原産地、貨物形態、カナダ側の用途 | 学名、魚種、養殖・天然、加工内容、用途 |
| 食品の条件 | 食品安全、品目別の販売・取扱条件 | 製品仕様、加工状態、荷姿、施設情報 |
| 商業・物流書類 | 貨物の同一性と書類間の一致 | 品名、数量、重量、ロット、荷受人、出荷予定 |
魚類・えび・二枚貝は貨物形態から分ける
水産庁の「我が国からの水産物・水産加工品の輸出に必要な手続き(国・地域別一覧表)」は、カナダ向けに動物衛生証明書が必要であることを示し、内臓を除去した魚類、頭部を除去したえび類、むき身・ハーフシェルにした二枚貝を除外しています。
これは、対象を判断する時に、商品名に加えてどこまで処理した貨物かを確認する必要があるということです。冷凍か冷蔵かだけでなく、内臓、頭部、殻、可食部の状態を、規格書と写真で同じロットに結び付けます。
魚類は内臓の処理状態を明記する
魚類では、内臓を除去した形態かどうかを確認します。フィレ、切身、内臓を除去した丸物など、商業上の名称が同じ「魚」であっても、処理内容が異なることがあります。
規格書の処理欄、インボイスの品名、パッキングリストの品名を別々に作る前に、内臓除去の有無を一つの貨物情報として確定します。証明書申請用の記載と物流会社へ渡す品名にも、同じ内容を反映します。
えびは頭部の有無を品目情報に入れる
えび類では、頭部を除去した形態が水産庁一覧の除外に挙げられています。殻付きかむき身かだけでなく、頭付きか、頭部を除去済みかを、商品名と写真で確認します。
養殖えびの場合は、養殖・天然の別もCFIAの非感受性種に求める文書情報と関係します。個別の感受性種該当や許可条件は、カナダ側のAIRSで学名と用途を使って確認します。
二枚貝はむき身・ハーフシェルと食品条件を分ける
むき身・ハーフシェルにした二枚貝は、水産庁一覧の動物衛生証明書の除外に挙げられています。一方、CFIAの食品要件は、冷凍を含む生又は未加熱の二枚貝について、認可採捕国、認可種、認可荷送人又は施設を確認する仕組みです。
ホタテ、かき、あさり等を扱う時は、貝の種類、殻の状態、加熱の有無、内臓や生殖巣を含むかを商品仕様に残します。動物衛生の区分と食品の区分のどちらにも該当するかを、同じ案件表で確認します。
| 品目 | 水産庁一覧の除外形態 | 出荷前に照合すること |
|---|---|---|
| 魚類 | 内臓を除去した魚類 | 学名、魚種、内臓除去の有無、用途 |
| えび類 | 頭部を除去したえび類 | 学名、頭部の有無、養殖・天然、用途 |
| 二枚貝 | むき身・ハーフシェルにした二枚貝 | 貝種、殻の状態、加熱の有無、食品条件 |
カナダ側のAIRS確認を先に依頼する
CFIAは、感受性種について、輸入許可の条件を疾病リスク、原産地、貨物形態、カナダ国内での用途等に基づいて定めると説明しています。必要な書類と、カナダへの輸出を認める国の情報はAIRSで確認するよう案内しています。
そのため、日本側で証明書の発行先を探す前に、カナダ側の事業者へAIRSの照会を依頼します。照会結果は画面の説明だけで終えず、品目、学名、原産国、用途、貨物形態、必要書類の条件が分かる形で共有してもらいます。
非感受性種でも書類情報が必要な場合がある
CFIAは、非感受性種には水産動物衛生輸入許可が不要としていますが、輸出者・カナダ側事業者の氏名と住所、学名、ライフステージと数量、原産国、養殖又は天然の別を含む書類を求めています。
この項目は、商品規格書、インボイス、パッキングリストに記載する基礎情報でもあります。担当者ごとに別の表記を使わず、学名のつづり、数量単位、養殖・天然の区分を一つのマスター情報から転記します。
感受性種は許可と証明書の組合せを確認する
感受性種は、カナダ側の水産動物衛生輸入許可が必要です。CFIAは、感受性種について、輸出国の公的機関による動物衛生証明書又は他の文書も必要になる場合があり、要件はAIRSに示すとしています。
CFIAの案内では、許可申請はカナダ側の事業者が行い、申請書CFIA/ACIA 5670を用います。日本側の貨物情報や証明書が先に確定していても、カナダ側の許可条件と一致しなければならないため、許可番号、証明書の記載事項、出荷予定を出荷前に照合します。
- 商品規格書で学名、魚種、養殖・天然、処理内容、温度帯、数量を確定する。
- カナダ側の事業者が、原産国、用途、貨物形態を入力してAIRSを照会する。
- 感受性種なら、輸入許可の条件と日本側の動物衛生証明書の記載事項を照合する。
- 非感受性種なら、CFIAが求める文書情報をインボイス等の貨物書類と照合する。
- 二枚貝は、動物衛生とは別に、生・未加熱品の食品条件を確認する。
日本側の発行先と書類の一致を確認する
水産庁の国・地域別一覧表では、カナダ向け動物衛生証明書の発行機関を都道府県の水産部局と示しています。農林水産省が公表する発行機関リストには、カナダ向け輸出水産動物の証明書を扱う都道府県の機関名、住所、公印が掲載されています。
ただし、発行機関リストの表記だけで、今回の魚種や貨物が発行対象だと結論付けません。申請先の都道府県水産部局へ、AIRS照会結果、学名、貨物形態、用途、出荷予定を提示し、発行の可否と提出資料を確認します。
書類ごとに同じ貨物情報を使う
動物衛生証明書、輸入許可、インボイス、パッキングリストで、魚種、数量、荷姿、原産地、荷受人の表記がずれると、同じ貨物であることを説明しにくくなります。書類を作成する前に、項目ごとの根拠資料と確定者を決めます。
特に商品名の英訳は、販売名だけでなく学名と処理状態へ対応させます。魚類の内臓、えびの頭部、二枚貝の殻と加熱状態は、証明書の対象判定に関わるため、略称や口頭の説明だけで引き継ぎません。
- 商品規格書:学名、魚種、養殖・天然、処理内容、重量、ロット
- AIRS照会結果:原産国、用途、必要な許可・証明書、追加条件
- 日本側の申請資料:カナダ側の条件と、発行機関が求める情報
- 商業書類:品名、数量、重量、荷姿、荷受人、出荷日
- 二枚貝の食品確認:認可採捕国・種・荷送人又は施設、加熱状態
未確認事項を記録する
制度の一般説明と、今回の貨物に適用できる判断は分けて記録します。AIRSの照会日、照会した条件、カナダ側の回答者、日本側の発行機関、確認中の事項を案件表に残すと、仕様変更があった時に見直す書類を追えます。
例えば、えびを頭付きから頭部除去品へ変更した場合、又は二枚貝を殻付きからむき身へ変更した場合は、品目名だけを置き換えず、AIRS照会、証明書要否、食品条件、商業書類をまとめて再確認します。確認が終わっていない項目は、確定情報として扱いません。