まずEU向け水産食品かどうかを分ける
最初の確認は、対象商品がEU向け水産食品として扱われるかどうかです。
農林水産省のFAQでは、EU向け水産食品について、海水産または淡水産の動物とその卵、さらにそれらを含む食品が対象として説明されています。
そのため、鮮魚、冷凍魚、フィレ、ホタテ、エビ、カニ、水産加工品などは、商品名だけでなく加工状態や含有原料まで確認します。
一方で、水産物を含む加工食品でも、混合食品として別の規制を見る必要がある場合があります。
商談前には、魚種、天然か養殖か、冷蔵・冷凍・加工品の別、HS分類の見込み、最終加工施設、最終保管施設を表にしておくと、次の確認に進みやすくなります。

施設認定はフードチェーン全体で見る
EU向け水産食品では、関連する施設があらかじめ施設認定を受けていることが必要とされています。
ここでいう施設は、加工場だけではありません。
農林水産省の説明では、冷凍船、加工船、処理・加工・製造・保管を行う陸上施設、産地市場、消費地市場、養殖場、生産漁船など、フードチェーン上の複数の場所が関係します。
実務では、商品を最後に加工した施設だけを見てしまうと、前段階の市場、保管、養殖場、漁船の確認が抜けることがあります。
EU向けに出す可能性がある商品は、仕入先、加工先、保管先、出荷ロットの流れを先に並べて、どの施設がEU向けの認定対象になるかを確認します。
衛生証明書は輸出の都度確認する
施設認定を確認できても、それだけで輸出書類がそろうわけではありません。
EU向け水産食品を輸出する場合、輸出の都度、衛生証明書発行機関に必要書類を添えて申請し、衛生証明書の発行を受ける必要があります。
農林水産省のFAQでは、衛生証明書の申請先は最終加工施設を認定した機関によって異なると説明されています。
つまり、同じEU向け水産食品でも、農林水産省スキームなのか、厚生労働省スキームなのか、都道府県等の衛生部局が関係するのかで、確認先や準備書類が変わる可能性があります。
商談時点では、輸出予定日、製造日、ロット、加工施設、保管施設、輸入者情報、輸送方法を仮でも整理しておくと、証明書申請の確認が具体的になります。
IUU漁業規則に係る漁獲証明書・加工証明書も見る
EU向け水産物で特に見落としやすいのが、衛生証明書とは別に確認する漁獲証明関係です。
農林水産省のFAQでは、EUのIUU漁業規則に係る証明書について、HS条約の品目表の第3類、1604、1605に分類される水産製品が対象として説明されています。
未加工品か加工品か、航空便か船便かといった輸送方法だけで対象外になるとは限りません。
ただし、養殖水産製品、淡水水産製品など一部の対象外も示されているため、実際には魚種、原料由来、加工内容、HS分類を照合する必要があります。
また、特定のマグロ類やメロでは、別途の漁獲証明書が関係する場合があります。
EU向けの提案では、衛生証明書だけでなく、IUU漁業規則に係る漁獲証明書・加工証明書が必要かを早い段階で確認します。
商談前に輸入者へ確認したいこと
日本側の証明書だけを確認しても、EU側の輸入条件をすべて判断できるわけではありません。
農林水産省のFAQでも、相手国側輸入業者やフォワーダーを通じて、EU内規制への対応、その他必要書類、輸出可能な魚種に該当するかを確認するよう案内されています。
実務では、食品添加物、残留農薬、重金属、包装、ラベル、輸入者側の登録・届出、現地通関で求められる追加書類を確認します。
特に水産加工品は、原料魚種、加熱の有無、調味料、包装形態によって、単純な鮮魚とは確認項目が変わります。
輸入者へは「何を送るか」だけでなく、「どの施設で加工し、どの証明書を添付し、どの規制項目を確認済みか」を共有できる状態にしておくことが重要です。
EU向け水産食品の初動チェックリスト
- 商品がEU向け水産食品に該当するか確認する
- 魚種、加工形態、HS分類の見込みを整理する
- 漁船、養殖場、市場、加工施設、保管施設の流れを確認する
- 関連施設がEU向けの認定対象か確認する
- 衛生証明書の申請先と必要書類を確認する
- IUU漁業規則に係る漁獲証明書・加工証明書の要否を確認する
- マグロ類やメロなど、別の漁獲証明が関係する魚種か確認する
- 輸入者側に、EU内規制と現地必要書類を確認する
まとめ
EU向け水産食品輸出は、商品が売れそうかどうかだけで判断できません。
施設認定、衛生証明書、IUU漁業規則に係る漁獲証明書・加工証明書を分けて確認し、さらに輸入者側のEU内規制確認を重ねる必要があります。
商談前の段階で、魚種、加工形態、施設の流れ、証明書の要否を整理しておくと、輸入者との確認が具体的になります。
EU向けを検討する水産物ほど、早い段階で「商品」「施設」「証明書」「輸入者確認」を分けて見ることが、実務上の手戻りを減らす第一歩です。