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スリランカ水産物輸出、4月開始の証明書制度が生む思わぬ落とし穴

静かに始まった、スリランカ向け水産物輸出の新しい扉

「スリランカ向けに水産物を出したいのですが、対応してもらえますか」。2026年7月、あさひ通商にこんな相談が届きました。

相談してきたのは、九州で冷凍水産物を扱う中小の卸売会社です。海外バイヤーから声がかかったものの、スリランカ向けの輸出実績がある担当者は社内におらず、何から手をつければいいのか分からないまま時間だけが過ぎていました。

実は同じ頃、農林水産省はスリランカ向け輸出水産食品に関する新しい取扱要綱を、すでに公表していました。この動きを知らずに商談を進めていた担当者は、バイヤーから「衛生証明書はいつ発行してもらえるのか」と聞かれ、答えに詰まったといいます。

しかも今回のように、要綱が公表されてから日が浅い場合、社内で相談できる相手もいません。前例のない仕事を、ひとりで手探りしながら進めることになりがちです。

水産物の輸出では、こうした「知らなかった」というすれ違いが繰り返されがちです。制度は着実に整備されているにもかかわらず、情報を追いきれていない事業者が少なくないのが実情です。

実際、こうした「知らない間に制度が変わっていた」という状況は、スリランカに限らず、他の新興国向け輸出でも起こり得ます。

新しい仕向国の話が来たとき、まず情報がどこにあるかを探すところから始まる。これは輸出を担当したことがある人なら、覚えのある感覚ではないでしょうか。

制度が始まったばかりの国ほど、日本語でまとまった情報はほとんどありません。担当者ひとりで抱え込みやすいものです。今回のスリランカも、まさにそうした状況にある仕向国のひとつだと言えます。

出典:農林水産省の公開情報をもとに作成

スリランカ向け水産物輸出、何が変わったのか

なぜ今、新しい証明書制度ができたのか?

2026年3月23日、農林水産省は「スリランカ向け輸出水産食品の取扱要綱」を策定しました。これにより2026年4月1日から、一部の冷凍水産物を対象にした衛生証明書の発行が始まっています(出典:農林水産省)。

要綱とは、輸出手続きの条件や必要書類をまとめた公式文書のことです。今回はこの要綱がスリランカ向けに新設されたことで、これまで整っていなかった正式なルートができた形になります。

衛生証明書とは、食品が輸出国の衛生基準を満たしていることを政府が証明する書類で、多くの国が水産物や食肉の輸入時に提出を求めています。今回はスリランカ向けに、この証明書を発行する手続きが新しく整えられました。

農林水産省が要綱を新設したという事実からも、これまでスリランカ向けには統一的な衛生証明書の仕組みが整っていなかったと考えられます。

たとえるなら、衛生証明書は「品質保証書」のようなものです。相手国の税関や検疫当局は、この書類がなければ安全性を確認できないため、いくら品質の良い商品でも通関自体ができません。

今回の要綱は水産物に限定されたものであり、他の食品分野の輸出手続きには影響しません。

証明書の発行を希望する事業者は、事前に農林水産省の輸出・国際局規制対策グループへ連絡する必要があります。窓口を経由して手続きを進める点は、他の新興国向け制度と共通しています。

情勢変化に注意

この制度は2026年4月に始まったばかりの新しい枠組みです。対象品目や手続きの詳細は今後更新される可能性があるため、輸出前に必ず農林水産省の最新情報を確認してください。

衛生証明書の対象になる品目はどれ?

要綱で対象になっているのは、一部の冷凍水産物です(出典:農林水産省)。具体的な品目は要綱のPDFに記載されており、自社が扱う魚種が対象に含まれるかどうかは、事前の確認が欠かせません。

対象品目は要綱のPDFに一覧化されています。輸出しようとしている水産物が冷凍品であっても、要綱に記載された品目と完全に一致するかどうかまで確認しておく必要があります。

特に、加工度の高い商品や、複数の魚種を混合した商品を扱う場合は、対象の判断がより複雑になりがちです。迷った場合は、農林水産省の窓口に直接問い合わせて確認するのが確実です。

要綱そのものは農林水産省のウェブサイトでPDF形式で公開されています。輸出を検討する際は、まずこのPDFを確認し、自社の品目がリストに含まれているかをチェックすることが最初の一歩になります。

たとえば大分県特産の冷凍関サバのように、鮮度管理を徹底したブランド魚を輸出する場合も、対象品目に該当するかどうかを個別に確認しておく必要があります。品目によって扱いが変わる制度だからこそ、思い込みで進めないことが重要です。

中小事業者は今から参入しても間に合う?

十分に間に合うと考えられます。この制度は2026年4月に始まったばかりで、対応した実績を持つ事業者はまだ多くありません。

大手商社が本格的に動き出す前の段階で仕組みを理解しておけば、小規模な事業者でも先行者になれる余地があります。新しい制度は、規模の大きさよりも早さがものを言う場面が少なくありません。

新しい制度は、情報が整理されるまでの初期段階ほど、相談や確認に時間がかかる傾向があります。逆に言えば、この段階を乗り越えた事業者は、後から参入する競合よりも早く現地バイヤーとの関係を築ける可能性があります。

小規模な事業者にとって不利に感じられるかもしれませんが、大手商社ほど新興国向けの少量案件には慎重になりやすいという事情もあります。取引規模が小さい段階から動ける身軽さは、中小事業者ならではの強みです。

ただし、事前連絡や品目確認といった実務は自社で進める必要があり、窓口とのやり取りに時間がかかることもあります。手続きに不慣れな場合は、要綱の読み込みから代行してもらう方法も選択肢のひとつです。

初めてこの制度に取り組む場合は、いきなり申請を進めるのではなく、まず農林水産省の窓口に問い合わせて、自社のケースに必要な書類や流れを確認するところから始めるのが安全です。

動き出す際の順番としては、①自社の品目が対象かどうかを要綱で確認する、②農林水産省の窓口へ事前連絡する、③必要書類をそろえて申請する、という3つの段階に整理できます。

スリランカに水産物の需要はあるのか?

スリランカ経済は2022年からの経済危機を経て、2024年末にデフォルト終了を宣言し、実質GDP成長率は5.0%と3年ぶりのプラス成長に転じました(出典:在スリランカ日本国大使館)。

日本からスリランカ向けの輸出額全体も、2024年に前年比36.0%増の2億2,700万ドルに達しています(出典:ジェトロ)。これは水産物に限った数字ではありませんが、両国の経済的な結びつきが強まっている証拠のひとつです。

水産物単体の輸入需要を示す統計は確認できていません。ただし経済が上向く中で、日本産食品への関心が今後高まっていく可能性はあると考えられます。

現地では日系レストランやホテルなど、日本食材を扱う飲食店も少しずつ増えていると考えられます。こうした業態が、日本産水産物の受け皿になっていく可能性があります。

ただし、需要の広がり方は今後の実績次第という面もあります。まずは小さな取引から始め、現地の反応を見ながら品目や数量を調整していく進め方が現実的でしょう。

あさひ通商が見てきた新興国輸出の現場、こんな事業者に役立つ情報

あさひ通商では、これまでも制度が立ち上がったばかりの仕向国について、要綱の読み込みから必要書類の洗い出しまでを事業者に代わって進めてきました。

スリランカのように情報がまだ少ない国ほど、公的機関への確認作業に時間がかかりがちです。この部分を巻き取ることで、事業者は商談やバイヤーとのやり取りに集中できるようになります。

現場で実際に手続きを進めてきた経験があるからこそ、公的機関とのやり取りでどこにつまずきやすいかも把握しています。初めての仕向国でも、事業者が迷わず進められるようサポートしています。

要綱の確認から事前連絡、書類の準備まで、一つひとつの工程を事業者と一緒に整理していくことで、初めての仕向国でも迷わず前に進められるようにしています。

要綱を読み込むだけでも、専門用語や制度特有の言い回しにつまずくことは少なくありません。あさひ通商では、この読み込み作業から窓口とのやり取りまでを一括して担い、事業者が本業に専念できる体制を整えています。

大手が本格参入する前に新しい仕向国を開拓したい事業者、冷凍水産物を扱っていて対象品目の確認や証明書の申請を進めたい事業者にとって、今回の動きは見逃せないはずです。特に、これまで中国や香港など特定の国に販路が偏っていた事業者ほど、新しい選択肢として検討する価値があります。

まとめ

スリランカ向け水産物輸出は、2026年4月に始まったばかりの新しい制度のもとで動き出しています。

対象品目の確認、事前連絡、衛生証明書の申請と、やるべきことは決して少なくありません。しかし情報が少ない今だからこそ、早めに動いた事業者ほど有利になる仕向国だとも言えるでしょう。

制度は始まったばかりで、今後変更が入る可能性もあります。だからこそ、最新情報を定期的に確認しながら、小さな一歩から動き出すことが大切です。

スリランカに限らず、新しい仕向国の情報は農林水産省やジェトロの発表を定期的にチェックすることで、早い段階でキャッチできます。特に、これまで大手向けの市場ばかりに目を向けていた事業者にとっては、視点を広げるきっかけになるはずです。

出典・参考資料

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