この記事は「水産物輸出 初心者脱却シリーズ」全12回の第2回です。第1回の全体像を土台に、今回は今後の記事で何度も出る基本用語を、実務の場面ごとに整理します。
用語は暗記より場面で分ける
輸出用語は、ひとつずつ暗記するより、どの場面で使う言葉かを分けると理解しやすくなります。
JETROは、貿易実務では商品、代金、書類と情報の流れが同時並行で動くため、この3つの流れを押さえることが重要だと説明しています。
水産物輸出でも同じです。商品を売る話、貨物を運ぶ話、書類を作る話、証明書を取る話、相手国規制を確認する話を混ぜると、必要な確認先が見えにくくなります。
最初は、商流、物流、書類、証明書、商品分類、価格条件、申請準備の7つに分けて見ます。

商流で出る用語
商流とは、誰が誰に売るのか、代金を誰が払うのか、どの条件で取引するのかという売買の流れです。
水産物輸出では、国内の生産者、加工場、輸出者、海外の輸入者、卸売業者、飲食店、小売店などが関係します。
輸出者は、日本側で商品を海外へ売る立場です。輸入者は、相手国側で貨物を受け取り、輸入手続や販売を進める立場です。
売買契約では、価格、数量、品質、支払方法、輸送方法、梱包条件、検査条件、引渡時期などを確認します。
JETROは、貿易の流れの中で、契約交渉では商品価格、決済通貨、決済方法、品質・数量、輸送方法、梱包条件などを取り決めると説明しています。
物流で出る用語
物流とは、商品がどこからどこへ動くのか、どの温度帯で運ぶのか、港や空港、倉庫、通関をどう通るのかという貨物の流れです。
フォワーダーは、国際物流の手配に関わる事業者です。船便、航空便、倉庫、通関、船積書類などの実務で登場します。
乙仲は、港湾や通関周辺の実務で使われることが多い呼び方です。現在の実務では、海貨業者や通関業者、フォワーダーの役割と重なって説明される場面があります。
通関業者は、税関への輸出申告や輸入申告など、通関手続を専門に扱う事業者です。
水産物では、冷凍、冷蔵、活魚、チルド、ドライ品などで物流設計が変わります。用語だけでなく、温度帯と梱包単位も合わせて確認します。
見積条件で出るFOBとCIF
FOBとCIFは、輸出見積りでよく出る価格条件です。
JETROのインコタームズ2020解説では、FOBはFree on Boardの本船渡し、CIFはCost Insurance and Freightの運賃保険料込みとして整理されています。
初心者は、FOBとCIFを単なる価格の名前として見がちです。しかし実務では、どこまでの費用を売主が持つのか、どこから買主側で負担するのかを分けるための言葉です。
冷凍水産物では、商品代だけでなく、国内集荷、冷凍倉庫、梱包、通関、国際運賃、保険、現地費用が関係します。
第10回では、FOB・CIFを中心に、見積条件と責任範囲を詳しく扱います。
商品分類で出るHSコード
HSコードは、国際貿易で商品を分類するための番号です。
税関は、あらゆる物品を関税率表や統計品目表の該当箇所に当てはめる作業を品目分類または関税分類と説明しています。
税関によると、6桁まではHS品目表に基づく番号であることから、HSコードまたはHS番号と呼ばれることがあります。
水産物では、魚種、丸物かフィレか、冷凍か冷蔵か、加熱や調味の有無などで確認する分類が変わる場合があります。
HSコードは、輸出統計、相手国側の関税、原産地規則、規制確認の入口になります。ただし、HSコードだけで相手国側の食品規制や証明書要件まで判断できるわけではありません。
基本書類で出るインボイス・パッキングリスト・B/L
インボイスは、品名、数量、価格、荷送人、荷受人などを示す基本書類です。
JETROは、輸出通関を依頼する通関業者には仕入書、包装明細書、船積依頼書、委任状などを提出すると説明しています。
JETROの説明では、仕入書は通常インボイスと呼ばれ、貨物の品名、種類、数量、価格、代金支払方法、荷送人および荷受人の情報などが記載される書類です。
パッキングリストは、輸出貨物の個数、包装後の重量、容積などを整理する書類です。
B/LはBill of Ladingの略で、船荷証券を指します。JETROは、B/Lを運送人が発行する貨物引換証であり、貨物の請求権を化体した有価証券と説明しています。
第4回では、この3つの書類を、水産物輸出の実務でどう読み、誰がどの情報を用意するかに絞って説明します。
証明書で出る衛生証明書と原産地証明書
衛生証明書は、相手国・地域の規制に基づき、食品や水産物の輸出で求められることがある証明書です。
農林水産省は、各種証明書のページで、水産物も施設の登録、衛生証明書の添付等を規定した輸出条件を定めている場合があると説明しています。
原産地証明書は、商品の原産国を示す証明書です。
日本商工会議所は、貿易関係証明の種類として、原産地証明書を商業送り状等の内容から日本国産・外国産などの原産国を証明するものと説明しています。
EPAを使う場合は、一般の原産地証明書とは別に、協定ごとの原産地規則や特定原産地証明書の確認が必要になる場合があります。
第5回から第8回では、衛生証明書、原産地証明書、取得方法、gBizIDを順番に扱います。
申請準備で出るgBizID
gBizIDは、行政サービスへのログインで使う共通認証の仕組みです。
GビズID公式サイトでは、プライムアカウントはすべての行政サービスに対応した標準アカウント、エントリーアカウントは限定的な行政サービス向けの簡易アカウントとして説明されています。
農林水産省は、農林水産物および食品の輸出証明書の発行等に関する手続規程に基づく輸出証明書について、一元的な輸出証明書発給システムによるオンライン申請が可能だと説明しています。
同じ農林水産省ページでは、衛生証明書、原産地証明書、漁獲証明書、自由販売証明書、施設認定などが対応証明書一覧に含まれています。
初心者は、商品や証明書の種類を確認する前に、どのアカウントや登録が必要になるかを早めに整理しておくと、申請段階の手戻りを減らしやすくなります。
用語を覚える順番
最初に覚える順番は、実際の仕事の流れに合わせると整理しやすくなります。
- 商談前:輸出者、輸入者、商品、相手国、取引条件
- 見積前:FOB、CIF、運賃、保険、温度帯、梱包単位
- 書類準備:インボイス、パッキングリスト、B/L、船積依頼書
- 規制確認:HSコード、相手国規制、施設認定、HACCP
- 証明書確認:衛生証明書、原産地証明書、輸出証明書
- 申請準備:gBizID、商工会議所登録、オンライン申請
この順番で見ると、用語の意味だけでなく、誰に何を確認するための言葉なのかが分かりやすくなります。
まとめ
水産物輸出の基本用語は、ひとつずつ暗記するより、実務の場面に分けて覚えることが大切です。
FOB・CIFは見積条件、HSコードは商品分類、インボイス・パッキングリスト・B/Lは基本書類、衛生証明書・原産地証明書は証明書、gBizIDは申請準備の用語として整理できます。
用語の場所が分かると、海外バイヤー、フォワーダー、通関業者、行政窓口、商工会議所に確認する内容も分けやすくなります。
次回は「輸出者・輸入者・フォワーダー・通関業者の役割」として、誰が何を担当するのかをさらに整理します。