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夏のタチウオが動き出した。UAEバイヤーが今年求める鮮度条件と輸出の窓口

7月、大分の豊後水道でタチウオ漁が本格化する。国内では「夏魚」として知られる銀色の刀のような魚が、いまUAEの日系食品インポーターから静かに注目を集め始めている。

  • UAEの日本産水産物市場と競合国の実態がわかる
  • タチウオを鮮魚で空輸するための鮮度条件がわかる
  • 輸出を始めるための書類とバイヤー窓口の探し方がわかる

UAEで日本産水産物の需要が急成長している

農林水産省・ジェトロが2026年3月に更新したカントリーレポートによると、2023年のUAEへの日本産農林水産物・食品輸出は約88億円に達した。これは5年前と比較して2倍以上の成長だ。

その背景には、UAEを中心とした日本食レストランの急増がある。ドバイでは2024年8月、農水省が中東初となる「日本食品輸出支援プラットフォーム」を設置した。UAEは中東の食品物流ハブであり、ここで認知されれば周辺国への展開にもつながる。

競合国の実態:日本が戦う相手は「インド・タイ・ノルウェー」

UAEの水産物輸入市場では、インド(16.4%)・タイ(15.7%)・ノルウェー(12.2%)が上位3カ国を占める(カナダ農業省、2024年)。主な輸入品目は冷凍エビが22.1%で首位だ。

日本産水産物が競合と差別化できるのは「価格」ではない。「鮮度」「希少性」「安全性」の3点だ。UAEの五つ星ホテルシェフは産地に足を運んで食材を選ぶことも多く、この購買行動に中小事業者が参入できる窓口がある。

※最新の輸入シェアはカナダ農業省・ジェトロの公式資料でご確認ください。

「冷凍しか送れない」は昔の話

UAE向けの日本産水産物は長らく「冷凍品のみ」が前提だった。しかし現在、UAE国内で日本食品輸入の約70%を担う大手インポーター「Summit Trading」が定期的な鮮魚空輸便を確立している。

同社が手がける日本産食品の取扱額は、過去10年で4億円から26億円超へと急拡大した(Khaleej Times・Summit Trading社情報、2025年8月)。鮮魚での輸出は今や現実的な選択肢になっている。

なぜ今「夏のタチウオ」なのか

輸出商材として選ぶ3つの理由

タチウオは7月から10月にかけて旬を迎える夏魚だ。大分・豊後水道産は旨味が強く、身がしっかりしているとして国内市場でも評価が高い。

輸出商材として注目できる理由は3つある。第一にニッチ魚種であること。中東市場では競合するインド・タイ産と品種が被りにくい。第二に希少性がある。世界のタチウオ漁獲量は中国が最大(2023年・約91万トン)だが、日本産は漁獲量が限られており、水揚げ方法の違いから品質が別格とされる。第三に鮮魚で空輸できること。適切な活〆(いけじめ・水揚げ直後に締めて鮮度を保つ処理)と氷温処理を行えば、大分からUAEまでの空輸時間に耐える鮮度が維持できる。

大分の中小商社はこう考えた

大分で水産業を手がけるAさん(中小商社・従業員12名)を例に考えてみよう。Aさんの会社は豊後水道で水揚げされる鮮魚を国内ブローカー経由で卸してきた。

「UAEへ直接送れないか」と考えたAさんは、まず誰に連絡すればいいかを調べることから始めた。Aさんにとって最初のハードルは「バイヤーの特定」と「必要書類の把握」だ。

UAE向けタチウオ輸出に必要な5つのステップ

Step 1:バイヤー(インポーター)を特定する(準備期間:1〜2週間)

UAE向けの日本産水産物は多くの場合、日系インポーター経由で流通する。最初からエンドユーザー(レストラン・ホテル)に直接アクセスしようとすると、食品登録などの手続きが複雑になる。まずは日系インポーターとの取引を検討するのが現実的だ。

農水省がドバイに設置した「UAE輸出支援プラットフォーム」(ジェトロ運営)はバイヤーとのマッチングを支援している。同プラットフォームの担当者へのオンライン問い合わせが最初の一歩になる。

Step 2:タチウオの輸出適性を確認する(処理基準を整備する)

タチウオは鮮度が落ちやすい魚として知られる。釣り上げた後に適切な処理をしないと、数時間で身が崩れ始める。輸出に耐えるためには以下の条件が必須だ。

  • 活〆処理(いけじめ):水揚げ直後に魚を締めて鮮度劣化を防ぐ。体内のエネルギー消費を止め、身の崩れを抑える
  • 血抜き:えらと尾を切り、海水中で血を完全に抜く
  • 氷温(0〜2℃)保管:真水の氷は禁物。海水氷か氷温水で保存する
  • 個別真空パック:空気に触れさせないことで酸化を防ぐ

出典:ジェトロ・農林水産省資料をもとに作成

これらの処理が漁港で完結できるかどうかが、輸出成否の鍵になる。大分県の水産業者にとっては、既存の鮮魚処理ラインをそのまま活用できる場合も多い。

Step 3:空輸ルートとパッキング条件を確認する(フォワーダーと相談)

大分からUAE(ドバイ)への主なルートは「福岡空港または成田空港経由」だ。直行便はないため、乗り継ぎを含めた所要時間は通常15〜18時間程度となる(目安。実際のルートはフォワーダーへ確認が必要)。

梱包は発泡スチロール箱と保冷剤の組み合わせが基本だ。ドライアイスは航空危険物として扱われることが多いため、通常は使用できない。重量制限と温度維持のバランスについては、食品空輸の実績があるフォワーダーに相談することが確実だ。

Step 4:必要書類を揃える(申請から取得まで1〜2週間)

UAEに水産物を輸出する際の主な書類は以下の通りだ。

  • 衛生証明書:国内保健所または農林水産省指定機関から取得。ドバイ向けには所定の様式がある
  • インボイス(商業送り状):品名・数量・金額・当事者情報を記載した基本書類
  • パッキングリスト(梱包明細書):梱包ごとの内容物を明記したリスト
  • 航空運送状(エアウェイビル):航空貨物の輸送契約書。フォワーダーが作成する
  • 食品登録(MOCCAE登録):UAE国内で販売するすべての食品はMOCCAE(農業食料省)への事前登録が必要。多くの場合、インポーター側が対応する

ハラール証明書については、水産物は対象外となるため通常は不要だ(ジェトロ資料)。ただし、インポーターから個別に求められる場合は確認が必要だ。

Step 5:小ロットのサンプル便で試す(初回は10〜20kg)

初回は10〜20kg程度の小ロットから始めることを強くすすめる。鮮度評価・通関の流れ・バイヤーとのコミュニケーションを1便目で体験することが、2便目以降の効率を大きく上げる。

初回サンプル便は「商品を売る」よりも「関係を作る」機会として捉えたい。品質に自信があれば、2便目からはインポーターが継続取引を求めてくることも多い。

見落としやすい3つのリスク

リスク①:活〆・血抜き処理の基準が不明確なまま送る

タチウオはアニサキスが潜みやすい魚だ。適切に処理しないと、死後に寄生虫が身に移動するリスクがある。鮮魚での輸出は「生食用」として使われることを前提に考え、処理基準を書面で整備しておくことが重要だ。

リスク②:食品登録の未対応で通関トラブル

UAE向けの食品はMOCCAEへの登録が必須だ。インポーター任せにしていて実は未登録だったという事態になると、到着時に通関で足止めされる。初回取引前に登録状況を必ず確認しておきたい。

リスク③:漁獲量の変動による供給不安定

豊後水道のタチウオ漁獲量は年によって変動が大きく、2015年以降に一時的な減少が続いた記録がある(水産庁・2024年度資源評価)。バイヤーとの定期供給契約を結ぶ前に、自社の調達安定性を確認しておく必要がある。

まとめ:鮮度と希少性が、日本産タチウオの武器になる

UAEの日本産水産物・食品市場は2023年に約88億円を記録し、5年前比2倍以上に成長している。競合のインド・タイ・ノルウェー産が持っていないのが「鮮魚としての品質感」だ。日本産タチウオの旬は今まさに始まっている。

大分・豊後水道産のタチウオは、活〆・血抜き・氷温処理を適切に行えば空輸に耐える鮮度を保てる。必要書類は衛生証明書・インボイス・パッキングリスト・エアウェイビルの4点が基本で、ハラール証明は不要だ。最初の窓口はジェトロのUAE輸出支援プラットフォームへの問い合わせが確実だ。

今週中に動ける3つのアクション

  • ジェトロのUAE輸出支援プラットフォームに問い合わせて、バイヤーマッチングの相談をする
  • 地元の漁港・漁協に「夏のタチウオ・活〆処理の対応可否」を確認する
  • 航空フォワーダーに「福岡または成田発ドバイ行きのチルド便の実績と費用感」を問い合わせる

夏の限られた漁期が勝負の時間だ。バイヤーへの最初の問い合わせは今週中に動き出しておきたい。

出典・参考資料

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