ここを間違えると、FSISへの事前通知、APHISの許可確認、日本側の食肉衛生証明書、動物検疫、輸入検査申請のどれを準備するかが変わります。
この記事では、問い合わせ対応で迷わないように、米国レストランへ和牛サンプルを送る時の確認順と必要書類を一から整理します。
先に押さえる用語注記
FSISは、米国農務省の食品安全検査局です。牛肉などの食肉が米国へ入る時に、輸入検査、ラベル、食品安全の確認を担当する機関です。
FSIS通知は、研究・検査・評価試験・展示会展示用のサンプルとして肉製品を入れる時に、米国側の輸入者や通関業者がFSISへ事前に知らせる手続きです。通常はFSIS Form 9540-5を使います。
APHISは、米国農務省の動植物検査局です。動物由来製品が家畜の病気を米国へ持ち込まないかを確認する機関です。和牛サンプルでは、輸入許可が必要かどうかを米国側で確認します。
CBPは、米国税関・国境警備局です。米国へ入る貨物の通関を担当します。FSISやAPHISの確認とは別に、インボイス、パッキングリスト、輸入申告などの通関書類を見ます。
食肉衛生証明書は、日本側で食肉の衛生条件を確認して発行される証明書です。商用貨物として米国向け牛肉を出す場合、動物検疫所の輸出検査へ進む前提書類になります。
動物検疫所は、日本側で輸出畜産物の検査を行う機関です。輸出検査申請書や添付書類を確認し、条件を満たす場合に輸出検疫証明書などを交付します。
最初に用途を分ける:レストラン内部評価か、顧客向け提供か
米国FSISは、肉、家きん肉、卵製品のサンプルについて、研究、検査、評価試験、展示会展示を目的とする場合の扱いを案内しています。
この用途に該当するサンプルは、FSISの輸入再検査の対象外になる場合があります。ただし、輸入前にFSISへ通知が必要で、APHISの動物疾病上の制限も受けます。
重要なのは、米国到着後の使い道です。FSISの案内では、これらのサンプルは研究、検査、評価試験、展示会展示だけに使うものとされ、販売、流通、一般消費はできません。
レストランのシェフや仕入担当者が内部評価として確認するだけなのか、顧客向けの試食、販売促進、テストマーケティング、メニュー提供につながるのかを、米国側輸入者に確認します。
顧客向けの試食や販売促進に使う場合は、商用貨物として扱われ、FSISの輸入規則に従う必要があります。

サンプル扱いで進める場合の米国側手続き
研究、検査、評価試験、展示会展示用のサンプルとして進める場合、輸入者、通関業者、または申請者が、輸入前にFSIS Form 9540-5を使ってFSISへ通知します。
通知先はFSISのRMTAD Import Operationsで、FSISの案内では importinspection@usda.gov への提出が示されています。
FSIS Directive 9500.8では、研究、検査、評価試験、展示会展示用サンプルについて、公式の外国検査証明書は不要と説明されています。
同Directiveでは、肉のサンプルは1種あたり50ポンド、つまり約22.7kgを超えないことも確認項目として示されています。超える場合は、事前承認の書面依頼が必要になります。
また、外装箱と個包装には、製品名、原産国、該当する場合の施設番号、製造施設名と住所、研究・検査・評価試験・展示会展示用サンプルである旨の表示が求められます。
APHIS許可が必要かを輸入者側で確認する
FSISのサンプル案内では、サンプルがFSIS輸入再検査の対象外になる場合でも、APHISの動物疾病上の制限を受けるとされています。
APHISは、米国へ動物由来製品を輸入する場合、輸入許可や要件の確認が必要になると案内しています。最新の許可要否は、APHISのVeterinary Services Permitting Assistantで確認する流れです。
APHISの案内では、動物由来製品や動物由来原料に触れた製品について、一般にVS許可が必要になると説明されています。
ただし、実際の許可要否は、原産国、製品、加熱・冷凍などの処理、用途、疾病ステータスで変わるため、米国側輸入者または通関業者がAPHISへ確認します。
日本側では米国向け牛肉として使える商品か確認する
ここからは、日本側の確認です。和牛サンプルであっても、商品が米国向け牛肉として扱えるものかを確認します。
農林水産省の北米向け申請ページでは、アメリカ合衆国向け食肉(牛肉)について、輸出食肉の取扱要綱、別紙様式、施設リストが掲載されています。
同ページでは、アメリカ合衆国向け輸出食肉の取扱要綱が令和8年6月9日更新、施設リストが令和8年3月25日更新として掲載されています。
サンプルとして少量を送る場合でも、商品が米国向け認定施設で処理されたものか、部位、ロット、加工施設、包装形態が追えるかを先に確認します。
レストランで試食・販促に使う場合は商用貨物として確認する
サンプルが一般消費、顧客向け試食、販売促進、テストマーケティング、販売につながる場合は、商用貨物として見る必要があります。
この場合は、米国向け牛肉として、認定施設、食肉衛生証明書、動物検疫所の輸出検査、米国側の輸入検査申請を順番に確認します。
農林水産省の北米向け申請ページでは、米国向け食肉(牛肉)について、食肉衛生証明書の発行を受けた上で、動物検疫所の輸出検査を受ける必要があると案内されています。
動物検疫所の輸出畜産物の検査手続では、輸出検査申請書を提出するか、NACCSを使用して申請する流れが案内されています。
牛、豚などの肉類では、国内法に基づく適正な処理を証明できる書類の添付も案内されています。輸入国の要求事項により調査や確認に時間がかかる場合があるため、早めの相談が必要です。
米国側で商用輸入になる場合の確認
JETROの米国向け牛肉ページでは、日本から米国への牛肉輸入について、FSISが認定する日本国内施設で生産された製品のみ輸出が認められていると説明されています。
商用輸入では、米国側でFSIS Form 9540-1の輸入検査申請、CBPの通関書類、商業インボイス、パッキングリスト、必要に応じた証明書類が関係します。
また、米国に入国した製品は、FSISが状態、ラベル、添付書類を確認し、必要に応じて再検査やサンプリングを行う流れです。
つまり、サンプルという名前であっても、用途が商用なら、通常の牛肉輸入に近い確認が必要になります。
一から順番に見る実務フロー
1. 米国での使い道を確認する
まず、相手に「誰が、どこで、何のために使うのか」を確認します。レストラン内部のシェフ評価なのか、顧客向け試食、販促、販売、メニュー提案なのかで分けます。
2. サンプル扱いでよいか輸入者側に確認する
サンプル扱いで進める場合は、米国側輸入者または通関業者がFSIS Form 9540-5の提出、APHIS許可要否、CBP通関、到着後の保管・使用範囲を確認します。
3. 商品情報を一枚にまとめる
日本側では、品名、部位、冷凍・冷蔵、数量、重量、包装単位、ロット、製造施設、処理施設、賞味期限、温度帯、用途を一覧にします。
4. 米国向け認定施設か確認する
少量でも、米国向け牛肉として扱える施設かを確認します。処理施設と加工施設が分かれる場合は、途中の加工も確認対象にします。
5. サンプル扱いか商用扱いかで必要書類を分ける
FSISのサンプル扱いなら、FSIS Form 9540-5、APHIS確認、梱包表示、輸送書類を中心に見ます。商用扱いなら、食肉衛生証明書、動物検疫所の輸出検査、FSIS輸入検査申請まで確認します。
6. 温度帯と輸送条件を決める
和牛サンプルは品質だけでなく、冷凍・冷蔵の維持が重要です。航空便、保冷箱、保冷材、温度ロガー、到着後の受け取り時間を先に決めます。
7. 出荷前に輸入者へ最終確認する
出荷前に、用途、必要フォーム、APHIS許可要否、米国側通関業者、到着空港、受取人、保管場所、到着後に顧客へ提供する予定があるかを確認します。
審査機関別に見る申請先と添付書類
米国側1:FSISへサンプル輸入の事前通知をする
レストラン内部評価用のサンプルとして進める場合、米国側の輸入者、通関業者、または申請者がFSISへ事前通知します。使う書類はFSIS Form 9540-5です。
申請時には、輸入者情報、申請者情報、製品名、原産国、数量、重量、用途、到着予定、保管場所、使用場所などを整理します。レストラン名、住所、担当者、サンプルを誰が評価するのかも確認しておくと、米国側で説明しやすくなります。
添付・準備情報として、商品規格書、インボイス、パッキングリスト、製造施設情報、ロット情報、温度帯、箱表示案、サンプル用途説明をそろえます。FSISが追加確認を求めた場合に、米国側がすぐ説明できる状態にします。
米国側2:APHISで動物由来製品の許可要否を確認する
FSIS通知とは別に、APHISで動物疾病上の制限を確認します。確認する主体は、原則として米国側輸入者または通関業者です。
APHISでは、製品が牛肉であること、原産国が日本であること、冷凍・冷蔵・加熱などの状態、用途、到着地、米国内での保管・使用場所をもとに、輸入許可が必要かを確認します。
APHIS許可が必要な場合は、米国側の受取人がAPHIS eFileなどを通じて申請します。添付情報として、製品説明、原産国、製造施設、処理方法、用途、数量、輸送経路、保管場所の説明が必要になる可能性があります。
米国側3:CBP通関と輸送書類を準備する
CBPは米国の通関を担当します。サンプル扱いであっても、貨物として米国へ入る以上、通関書類は必要です。
基本書類は、インボイス、パッキングリスト、航空運送状、必要に応じた輸入者情報、通関業者情報、到着空港、保管先、用途説明です。無償サンプルの場合でも、通関用の価格、品名、原産国、数量、重量を明確にします。
冷凍・冷蔵の和牛では、保冷箱、保冷材、温度ロガー、到着後の受取時間、保管温度も実務上の確認対象です。書類だけでなく、到着時にレストラン側が受け取れる体制まで確認します。
日本側1:米国向け認定施設と商品ロットを確認する
日本側では、最初に米国向け牛肉として扱える商品かを確認します。農林水産省の北米向けページで、米国向け食肉(牛肉)の取扱要綱、様式、施設リストを確認します。
添付・確認情報として、施設名、施設番号、処理施設、加工施設、部位、ロット番号、製造日、賞味期限、冷凍・冷蔵の別、包装形態、数量、重量をそろえます。途中で別施設の加工が入る場合は、その施設も確認します。
日本側2:商用貨物なら食肉衛生証明書を確認する
レストランで顧客向け試食、販売促進、メニュー提供、販売につながる場合は、商用貨物として食肉衛生証明書の流れを確認します。申請先は、認定と畜場などを管轄する食肉衛生検査所などになります。
JETROの米国向け牛肉ページでは、食肉衛生証明書の取得にあたり、と畜年月日、と体番号、性別、品種、月齢、出生年月日、特徴、産地、個体識別番号、生産者情報、販売先、と畜場・食肉処理施設、仕向け地、積み荷番号などが申請事項として整理されています。
サンプル案件でも、商用貨物として見る場合は、これらの情報を仕入れ前に確認します。商品を確保してから情報が足りないと、証明書の申請準備に時間がかかります。
日本側3:動物検疫所へ輸出検査を申請する
商用貨物として進める場合、食肉衛生証明書の発行を受けた上で、動物検疫所の輸出検査を受ける流れになります。
申請先は動物検疫所です。輸出検査申請書を提出するか、NACCSを使って申請します。肉類では、国内法に基づく適正な処理を証明できる書類の添付も案内されています。
添付・準備情報として、食肉衛生証明書、インボイス、パッキングリスト、商品情報、数量、重量、輸送便、仕向地、輸入者情報、保管温度、出荷予定日をそろえます。輸入国側の要求事項がある場合は、事前に動物検疫所へ相談します。
問い合わせを受けた時の確認メモ
問い合わせを受けた時は、最初に「レストラン向けサンプル」の意味を確認します。業者によっては、シェフ評価用、レストラン試作用、顧客試食用、販売前テストをすべてサンプルと呼ぶことがあります。
米国側の制度では、その使い道によって必要手続きが変わります。特に一般消費、販売促進、テストマーケティングに使う場合は、商用貨物として確認する前提で見た方が安全です。
次に、輸入者または通関業者がFSISとAPHISの確認を取れるかを見ます。日本側だけで「送れる」と断定せず、米国側の受入方法を先に固めます。
最後に、米国向け牛肉として使える施設、食肉衛生証明書、動物検疫、温度帯、出荷希望日を並べます。この順番で見ると、何が未確認なのかが分かりやすくなります。